表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
賢者巡礼  作者: ナハァト
86/614

無意識でついつい動いてしまうこともある

 地中から突如現れた巨大ロックワームが、天井を突き破る。

 そのまま進んでいっているようだが、この空間にはまだその岩のような体表の体が残っているので、どれだけ巨大であるかはわからない。

 それに地震というか、巨大ロックワームの移動による地響きも続いているので、ここが洞窟内の巨大空間であったとしても、いつ崩落が始まってもおかしくないと不安を抱く。

 俺だけではなく、ここに居る全員が。


「なんだってこんなのが!」


 誰かが、思わず言ってしまったという感じだ。

 すると、「煌々明媚」――射手のケイトさんと、剣士のサラさんの会話が聞こえる。


「……巣が近くにあったとしか思えない。あの大きさは確かに異常だけど、それでもロックワームは普段はどちらかといえば大人しいはず……それを乱すような……たとえば、眠っていたところを起こされた、とか?」


「なんだ、それは。アレは地中に居るんだぞ。それこそ、アレが今起こしているこの地響きや地中にも響くだけの爆発、爆音でもない限り……」


 そこで言葉はとまり、二人の目が「爆弓」に向けられる。

 いや、二人だけではない。

 この会話が聞こえていた、俺も含めて敵味方問わず全員の目が向けられた。


「ああ、なるほど。僕の爆発矢によって、と………………てへっ!」


『お前のせいか!』


 この時ばかりは敵味方問わずに全員で「爆弓」に突っ込んだ。

「爆弓」に詰め寄りたいが、巨大ロックワームが戻って来て、今度は天井から出て来て地面の中に引っ込んでいく。

 最初に出て来た時の巨大ロックワームの体も残っているのに、また追加された。

 一体全長はどれだけなんだ。

 それに、何人かが巨大ロックワームの体に攻撃を仕掛けているが、岩のような体表に阻まれてまったく通用していない。

 そのため、冒険者グループの中にはここから逃げ出す者も居た。

 けれど、こんな状況でも戦いをやめないのも居る。


「共倒れはごめんだから、そろそろそれを渡してもらえないかな? お互い、命が大事でしょ?」


「命が大事というのなら、お前が退けばいいだけだ」


「まさか! 寧ろ、僕はこの状況を楽しんでいるよ! 何しろ、Aランクまでくると、早々ないからね。命の危機に瀕するような状況は! ゾクゾクヒリヒリしている!」


「クズが!」


「冒険者だから、冒険しないと、だよ!」


 ここにもう冒険者ではないのが居るのだが。

 商人ですが……まあいい。

 とりあえず、ジーナさんと「爆弓」は戦いをやめない。

 というよりかは、「爆弓」がジーナさんの持つミスリル鉱石(極大)を狙っているだけではなく、この状況を楽しんでいるからのようだ。

 また、「爆弓」が逃げないからか、冒険者グループの中にはまだ戦いをやめない者も居て、先ほどまでと同じように「煌々明媚」に襲いかかっている。

 その上で、巨大ロックワームも去ろうとしない。

 状況が混乱、混沌としてきた。

 ちなみにだが、斬新な髪型の男性五人組は直ぐに逃走を選択して、既にこの場に居ない。

 まあ、あれ以上は髪型をいじれないし、別にいいか。

 しかし、パーティ単位とはいえ、Cランクなのに外に出て――強いのと一緒に居なくて大丈夫なのだろうか?

 あんな髪型の人物たちを失うのは惜しいので、できればしぶとく生き残って欲しいモノだ。

 ただ、これでこちらにとって多少は有利――ではなく、不利だった部分が解消された。

 人数差は少し減り、何よりこれで俺も動ける。

 光属性魔法で一気に状況を決めてしまおうとしたが、その前に何かを察したかのように、ジーナさんと「爆弓」の事態が動いた。

 ミスリル鉱石(極大)を巡って格闘戦のようなこと行っていたのだが、やはりというか抱えたままでは動きが制限され、それによって生まれる隙を「爆弓」が突く。

 下から押し上げるようにした「爆弓」の拳によって、ジーナさんが抱えていたミスリル鉱石(極大)が空中に舞い上がった。

 ジーナさんが即座に掴み抱えようと飛び上がる。

 遅れて、「爆弓」も飛び上がった。

 ――が、ミスリル鉱石(極大)がある位置は、壁から飛び出してきた巨大ロックワームの進行方向上。

 何か考えがある訳ではないが、咄嗟に駆け出す。

 空中のミスリル鉱石(極大)をジーナさんが掴むが、「爆弓」が死角からもう一度弾き飛ばしてさらに高く舞い上がる。

「爆弓」はそのまま空中で体勢を変えてジーナさんに蹴り込むが、ジーナさんはそれに反応して防ぐ。

 ただし、それが「爆弓」の狙いだった。

 そのままジーナさんを足場にして、「爆弓」はさらに高く舞い上がり、ミスリル鉱石(極大)を掴もうと手を伸ばす――と見せかけて、矢筒から鏃が魔石の矢を抜いてジーナさんに向けて構える。


「じゃあね!」


 ジーナさんに向けて魔石の矢が放たれる。

 咄嗟に大剣を前に出して防ごうとするジーナさん。

 魔石の矢は大剣と衝突して、爆発を起こす。

 爆発の規模は小さかったのか、ジーナさんの耐久力が強かったのか、理由はいくつか推測できるが、ジーナさんは無事に乗り切った。

 ただ、ミスリル鉱石(極大)は手元にない――だけではなく、そこに巨大ロックワームの大きく開けた口が迫る。


「くっ!」


「させるかよ!」


 流す魔力を増やして一気に加速。

 飛び上がり――ジーナさんを掴んで位置を入れ替えるように放り投げる。


「なっ! ばっ――」


 驚きで目を見開くジーナさんに一言。


「ご心配なく」


 巨大ロックワームにバクッと喰われた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ