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賢者巡礼  作者: ナハァト
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夢くらい見させて欲しい、希望くらい持たせて欲しい

 地下四階を進むと、A、Bランクでなければ通用しないということがよくわかった。

 魔物の強さもそうだが、これまで洞窟、草原、森とどちらかといえば地上型――地面の上を移動する魔物の方が比較的多かったが、ここは違う。

 基本的に現れる魔物は、空中型だ。

 鳥、羽虫型が多く、時にワイバーンも出るらしい。

 また、地上型も居ない訳ではなく、ここが鉱山山岳地帯ということもあってか、大抵は体表が岩のように硬い、あるいは岩そのものといったモノがほとんどである。

 空中からの攻撃の対処の他に、頑強なモノを砕く力、あるいはそういった手段が必要なようだ。

 その上で、進むだけでも苦労するくらい足場も悪い。

 一応、これまで攻略されてきた証である、急拵えのような足場がなければ、進行はもっと遅くなっているだろう。

 並大抵では通用しないのだ。

 ――普通は。


「……アルムが居ると、ここの難易度が恐ろしいくらいに下がるな」


「そうね。足場にだけ気を付けておけばいいだけだし、ここまで楽ができるなんて」


「アルムくん。ウチのパーティに正式加入しない? この依頼が終わっても一緒に行動しましょうよ」


「まあ、ジーナには夫が居て、私たちも全員彼氏持ちだから、恋愛には発展しないと思うけどね」


 夢も希望もないパーティ加入はお断りだ。

 ……悔しくなんてない。

「煌々明媚」は全員見目麗しいし、その彼氏とやらが羨ましいなんて、欠片も思っていない。

 ……いや、欠片くらいは……寧ろ、それ以上……いや! そんなことなんてない!

 ………………くそ。世の中理不尽だ。

「煌々明媚」がそんなことを言って俺の心を乱したのは、魔法のおかげである。

 なんてことはない。

 危険だと判断すれば、光属性は不安なので火属性による防御魔法を発動しているだけ。

 ただ、その威力が防御に留まらないというだけのこと。

 ……まあ、凄腕魔法使いを名乗っている訳だし、少しくらいはそれらしいところを見せようと、いつもより少しだけ張り切って魔力量増し増しで魔法を使っている。

 それでこれまで通り、火が光線のようになって、なんでも焼き切っているのだ。

 空からの超速体当たりだろうが、岩そのものによる回転体当たりだろうが。

「煌々明媚」の言葉は、それを見てのことである。


「せっかく新調したが、こりゃ使う機会がないかもね! あっはっはっ!」


 豪快に笑うジーナさんは、前回のは折れていたので新しい大剣を背負っていた。

 でも、俺が今できるのはそれくらいなのだ。

 道案内は完全に任せることになっているし、採掘だってそうなるかもしれない。


「……そんなに連発して、魔力量は大丈夫なの?」


 魔法使いのアンさんから、そう心配される。


「問題ない」


「へえ。中々の魔力量なんだね。それとも、消費魔力の方が少ないのかな?」


 魔法使いのアンさんが考察を始める。

 答えは、中々どころではない魔力量で、ガンガン消費している、だ。

 ただ、それでも本当に問題ない。

 元々火のヒストさんの魔力量が膨大だったのもあるが、今はそこに光のレイさんの魔力量も加わっている。

 単純に倍になったようなモノなので、フォーマンス王国で同じようにバカスカやってもまだ平気なので、「煌々明媚」も安心して守ることができるのだ。

 まあ、全員お相手が居るが。

 という訳で、他のところよりは安全に進むことができる――訳でもなかった。

 問題は魔物や環境だけではなく、本来は仲間であるはずの冒険者も、今ここでは敵なのだ。

 しかも、強いのゴロゴロで油断もできない。

 正直言って、魔物や環境よりも厄介だ。

 今は上手く避けて進んでいるそうだが、向こうから追われると難しい。

 できるだけこちらの存在を悟らせないように進んでいく必要がある。

 ただ、気を付けて進んでいたとしても、見つかる時は見つかるモノだ。


「……ちっ。今、見られたね」


 ジーナさんの苛立つ呟きに、他の人たちも頷く。

 ……え?


「そうなのか?」


「ああ、あそこからな。多分、休憩でも取っていて、周囲を警戒させていたんだろうよ」


 ジーナさんが指し示したのは、かなり距離の離れた先にある山の頂上付近。

 正直言って、俺からすれば山! という大きな存在感しかわからず、人が居たとしてもそれを人だと認識できるかと言われれば無理。

 ……まあ、所詮俺は魔法だけが取り柄……いや、待てよ。

 身体強化の要領で魔力を目に集めれば……やめておこう。

 結果上手くいったとしても、そのあとでどうなるかわからないのが怖い。

 それを素でやっている辺り、さすがはA、Bランクなのだな、と思った。


「可能な限り撒いてみるが、ここに居る以上、向こうもやり手だ。最悪……いや、いつ戦闘に入ってもおかしくないと思っておいて欲しい」


 つまり、いつでも魔法を使える準備をしておけってことだな。

 わかったと頷きを返す。

 そうして慎重に進んでいき……ふと、変な感触が体に走った。

 多分、気のせいでなければ、本当に僅かだけど魔力が吸われた。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 魔法の使い方等の知識や経験、その他の記憶も受け継いでいる割のに魔法の応用をしないのはどうしてですか?何か意図があるんですか?それとも師匠のスケルトン達も攻撃以外は不得意だったのかな? …
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