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賢者巡礼  作者: ナハァト
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向こうにそういう意図がなくても、こっちが勝手にそう判断することだってある

 シャッツさん、ジーナさん、リユウさんとの食事を終え、「ミスリル鉱石(極大)」を入手する依頼を受けた。

 食事会の翌日は、その準備にあてる。

 といっても、俺が採掘する訳ではない。

 実際に行うのは共に向かう「煌々明媚」で、俺はその護衛のようなモノだ。

 採掘を任せるのは申し訳ないが、正直なところ鍛えているとはいえ、まだまだ俺の体は貧弱そのもので、俺がやるより効率がいいのは間違いない。

 ……もっと頑張ろう。

 ただ、持っていても損はないため、採掘道具を手にしておくのもいいかもしれない。

 よって、シャッツさんのお店へ。


「そうだろうと思い、準備しておきました」


 既に頑丈そうなツルハシやシャベルなどが用意されていた。

 さすがは商人、ということだろうか。

 しかも、無料で提供されたのだが……それだけ期待されている、ということかもしれない。

 だが、あの依頼がいつから張り出されていたのかは知らないが、これまで見つかっていないことを踏まえると……少しプレッシャーだ。

 上手く見つかるといいのだが……。

 そうして、翌日。

「煌々明媚」とダンジョン前で合流。


「これからよろしくな!」


「ええ、こちらこそ」


 ジーナさんと握手を交わし、他の面々とも同じような挨拶を交わしていく。

 こうして合流して気付いた。

 前回――フォーマンス王国で共に行動した「新緑の大樹」は男女混合パーティだったが、今回――「煌々明媚」は女性のみのパーティである。

 ……色々と気を遣いそうだ。

 でも、下手なことをすれば、社会的死亡になってもおかしくない。

 ……頑張ろう。

 挨拶に時間をかけても仕方ないので、早速発掘場所となる地下四階に向かう。

 地下一階……地下二階……と順調に進む。

「煌々明媚」はリーダーであるジーナさんが「A」ランクで、他の人たちは「B」ランクと、高ランク混合パーティである。

 最短距離で駆け抜けていくのだが、それはそれで道順が覚えられなかったが……まあ、いいか。

 また、「煌々明媚」によると地下三階は常に真夜中の森なのだそうだ。

 だが、問題はない。

 そのための俺の新たな力――「光属性」が属性の力と同じように光り輝く――ことはなかった。

「煌々明媚」は実力派パーティである。

 そこら辺は抜かりなく、パーティメンバーだけではなく、俺の分までランタンを用意していた。

 しかも、俺の分のランタンはそのままくれるそうだ。


「いいのか?」


「ああ。別に高いモノでもないし、持ってなさそうだったからな。助けてもらったお礼の一つだとでも思ってくれ」


 持っていなかったので、素直に嬉しい。

 ありがとう。

 それに、それだけが理由ではない。

 強過ぎる光は逆に魔物を招くことになって危険だからだ。

 ……否定できない。

 そもそも、これまで通りなら、火属性ならまだしも、光属性は得たばかり。

 火属性の時のように失敗することを想定しておかないといけない。

 未だに火属性も失敗する時があるし、光属性は尚更だろう。

 また、何度も行き来しているそうで、真夜中の森の中でも迷うことなく地下四階へ行けるようだ。

 他にも、魔物の方も地下一階、地下二階だけではなく地下三階でも問題なかった。

 前回の救出した時は怪我とか疲労とか色々と負の部分が重なっていたが、完調である今なら敵ではないようだ。

 こうなってくると……あれだな。

 ここまでまったくの役立たずのように見えるが、俺の本領発揮は地下四階である。

 しっかり守ってみせる、と内心で誓って、「煌々明媚」のあとを付いていく。

 途中、「煌々明媚」を助けたと思われる場所を取り過ぎ、森の中にこれまでと同じく小さな神殿があり、そこから地下四階へ。

 地下四階の神殿を出た先は、聞いていた通り鉱山山岳地帯の風景が広がっていた。

 ただ、下りた先は歪な山の形をしているが、遠くの方はまだ山らしい形をしていると、どこか奇妙である。


「これ、近場が歪なのは、もしかして――」


「ああ、思っている通り、採掘作業が行われたからだ。ただ、これまでの傾向からか、ここの近くだと大した鉱石が採掘できないようで、今では奥の方――地下五階への階段に近付けば近付くほど、貴重、希少な鉱石が出ると言われている。まずは、そちらの方に進んでいくつもりだ」


 ジーナさんがそう説明してくれる。

 しかし――。


「言われている?」


「まあ、これだけの広さだ。確定するのは無理だろう?」


 ジーナさんが肩をすくめ、他の人たちも苦笑を浮かべた。

 まあ、言いたいことはわかる。

 地下四階もこれまでと同じく広大だ。

 大小様々ないくつもの山が連なっている。

 それと、環境も山の上を表しているのか、空を飛んだ時にも感じていた空気の薄さがあった。

 そこに魔物が加わる――だけではなく、今は他にも敵が居る。


「一応、他の冒険者とは出会わないように進むつもりだが、向こうもA、Bランクだ。いつ、どのように姿を現すかわからないし、下手をすれば魔物との戦闘中にだって介入してくるだろう。いつでも結界を張れるようにしておいて欲しい」


 そう言うジーナさんは、既に気を張っている。

 いや、「煌々明媚」全員が、だ。

 頷きを返し、地下四階を進む。


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