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賢者巡礼  作者: ナハァト
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危険だとわかっていてもいかないといけない時がある

 前回のように、竜杖の「帰還」でラビンさんのダンジョン最下層に戻る。

 それほど日は経っていない内に戻ってくることになったが……まあ、いいか。

 こういうこともある。

 一直線に戻ったのでそれほど時間はかからずに、ラビンさんの隠れ家に辿り着き、中に入って魔法陣の上に乗り……乗って………………何故だろう。

 言い知れぬ不安が去来している。


 ――今直ぐここから去れ。


 と本能が訴えている気がした。

 訳もわからず、体が小刻みに震え始める。

 本当に理由がわからない。

 ただ、引き返す訳にもいかないのだ。

 それに、今ダンジョン最下層には母さんとリノファが居る。

 危険だとわかっていても、そこに向かって突き進まなければならない時があるのだ。

 いざ、ダンジョン最下層へ。


     ―――


 ……特に変な雰囲気のようなモノはない。

 これまでと変わらないダンジョン最下層だ。

 そのまま進んでいくと、ボス部屋の中にみんな――というか無のグラノさん、火のヒストさん、風のウィンヴィさん、闇のアンクさん、ラビンさん、カーくん……つまり、ここの男性陣だけが勢揃いしていた。

 しかも、何故か大きなテーブルが置かれ、無のグラノさんたち――男性陣メンズ・スケルトンがそれぞれ椅子に座って待機していて、ラビンさんとカーくんはその横で執事のような雰囲気で立っている。

 ……うっ。記憶が。

 日を改めよう――と逃げ――ではなく、そう。急用を思い出したので、一旦外へ――。


「いい時に来たね、アルムくん」


 振り返ると、ニッコリとした笑みを浮かべるラビンさんが居た。

 いや、さっきまでボス部屋に居たのに、どうやって……。


「ここはボクのダンジョンだよ。これぐらいのことは簡単にできるさ」


 まさか、心まで――。


「いや、心までは読めないよ。なんとなくアルムくんが思っていそうなことに答えただけ。さっ、行くよ。ほんと、いい時に来たね、アルムくんは」


「まったくそんな気はしないのだが」


 ラビンさんに掴まれ、引き摺られるようにしてボス部屋に入る。

 男性陣メンズ・スケルトンが俺の登場に優しく微笑んでいる……ようには骸骨なので見えないが、そんな雰囲気を感じた。

 ラビンさんが指をパチンと鳴らすと、新たな椅子が現れてそこに座らされる。

 瞬間――椅子から両手足と腰を拘束するように、鉄製の筒が飛び出して封じられた。

 ……ん! ぐっ!

 どうにか抜け出そうと身じろぎするが、身動きが取れないというか、ビクともしない。


「……ラビンさん」


「なんだい?」


「これは? なんで身動きを封じられるんだ?」


「それはね、これから試食会さ。メイドとして大変素晴らしいアルムくんのお母さまによって、料理の腕が上がったから、今度こそスケルトンでも味を感じられるモノが作れる、とリタ、アンスス、レイが妙な自信を得ていてね」


「はあ……まあ、確かに母さんはメイドとして一流ですが――うっ」


 なんか記憶が蘇りそう……で蘇らない。

 喉に小骨が刺さっているような――んん……あー! と叫びたくなる。

 本能が思い出すなと邪魔しているような感じで、何故そんなことになっているのかわからない。

 それに、再び体が震え始める。

 今度はここに入る時よりも確実に大きく震えていた。

 ここまでくると生命の危機のように感じる。

 とまってなるものか、と心臓が強く脈打ち始めている気がしないでもない。


「少し体調が優れないようだ。これ、外してもらうことはでき――」


「ないね。それは無理なんだよ、アルムくん。でないと、ボクが座らされることになる」


 それは、俺を代わりの生贄にしているってことだよな?

 それと、ラビンさんが俺を生贄にしてまで拒否しようとすることが、これから起こるってことでもある。

 ……本能も逃げろと言っているし、そうはさせない――と身体強化魔法を発動して、拘束具を………………外せない!


「無駄だよ、アルムくん。それはオリハルコンとアダマンタイトとミスリルの三種合成金属。今のアルムくんじゃあ、どうすることもできないから……大人しく待っていようね。もう直ぐ来るから」


 何が? と言いたいが、口にしたら現実になりそうで怖い。

 しかし、諦める訳にはいかないと、さらに魔力を流して身じろぎを………………無理!

 先に体が限界を訴える痛みがきた……が、なんぼのもんじゃい!

 こちらとら既に魔力を流し過ぎたために激しい筋肉痛が予約されている状態だ。

 今更だ! とより激しく身じろぎが……無理だった。

 まったくもってビクともしない。


「……時に、場に流されることも肝心じゃぞ、アルムよ」


 無のグラノさんが、何やら悟りでも開いたかのようなことを言う。

 いや、無のグラノさんだけではなく、他の男性陣メンズ・スケルトンもどこか悟り……というよりは諦めの境地のように見える。


「と言いつつ?」


「仲間ができて嬉しい。皆で分かち合おうではないか……苦を」


 く? ……苦か。

 苦しみしかないのか。

 そんなことを思っていると、女性陣スケルトン・レディース、母さん、リノファが順に入ってきた。


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