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賢者巡礼  作者: ナハァト
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エピローグ 2

 大体一か月が経つと、各地にあった巨大な黒い球はその大半がなくなり、邪神による魔物大発生(スタンピード)はかなり落ち着いた。

 あとどれくらいの数の巨大な黒い球が残っているのか正確な数はわからないが、そう遠くない内に完全になくなると思う。

 でも、魔物大発生(スタンピード)が終わった訳ではないので、気を抜くのはまだ早いため、警戒は続けている。

 なので、無のグラノさんたちと竜たちが空を飛んでいる光景は見慣れたモノとなっていた。

 別行動しているので詳細はわからないが、アブさんとカーくんも頑張っている――らしい。

 ラビンさんのダンジョン最下層を拠点としているのは同じなので、偶に会った時に情報交換しているのだ。


「この見た目であるし、透明になるしかないとわかってはいるのだが、どうにか某にも『装着式戦闘用外殻(バトルスーツ)』を……いや、それだとこの輝く骨を見せることができない……待てよ。そもそも透明のままでは誰にも……」


 アブさんが何かに気付きそうになる前に退散した。


「アルムよ。どこかに巨大なままで残っている黒い球はないだろうか? 体が動かなかった期間で衰えた分の筋肉を取り戻したいのだ」


「いや、知らない」


 全部把握している訳ではないので、そう答えておく。

 それはさすがに――と思っていたが、後日カーくんは比較的大きなまま残っていた黒い球を見つけて、存分に戦ったとか……なんとか……。


 あまり有益な情報は交換していない。

 ともかく、そんな感じで過ごしていたある日。

 ラビンさんのダンジョン最下層で休んでいると、魔物大発生(スタンピード)への警戒と復興のためにフォーマンス王国に残っていた母さんとリノファを、無のグラノさんが連れて来た。

 無のグラノさんは内臓魔力の交換のためだが、母さんとリノファは魔物大発生(スタンピード)がだいぶ落ち着いてきたことで各地の状況がわかり、その報告に来たのである。

 俺に? いいえ、ラビンさんに。

 ラビンさんに伝えておけば、ここを拠点にしている俺、無のグラノさんたち、アブさん、カーくんに伝わるからだそうだ。

 うん。その通り。

 なので、二度手間にならないよう、俺も一緒に聞くことにした。

 特に行ったことのある国については念入りに聞いておく。


     ―――


 まず、聞いた限りだと、全体的な被害は予想よりもかなり抑え込まれた。

 しかし、それは人的被害とか、王都、町、村、といった防衛に回っていた場所に限って言えばで、それ以外――防衛していた場所の周囲や戦場となった場所、それと魔物大発生(スタンピード)の魔物たちが通ったあとのところは、かなり土地が荒れているらしい。

 それだけ激しかった、ということだろう。

 今は一日でも早く元の状態に戻るように、復興に力を向けているそうだ。

 ただ、予想よりも大きく被害を受けたところもある。

 といっても、大きく被害を受けたところというのは、自分たちでどうにかすると拒んだりと協力的でなかったり、あるいは手助けしようとした竜たちを利用して何かしらの利益を得ようとして怒りを買ったりとか、そういったところである。

 まあ、自ら招いた結果なので、今後の態度次第で支援するかどうか決まるそうだ。

 全体的な各地の話はそんな感じ。

 あとは、行ったことのある国について聞いた。


     ―――


 最初に聞いたのは、忘れてはいけない故郷。フォーマンス王国。

 テレイルが王さまとしての存在感と優秀性を発揮して、かなりの速度で復興していっているそうだ。

 素直に嬉しい。

 リノファも国内を巡って、聖属性の力で荒れた土地を浄化している。

 母さんはそれに付いていっていて、こういう時でも――いや、こういう時だからこそかもしれないが、時折現れる盗賊とかをリノファに近付けないように排除しているそうだ。

 危ないことは控えて欲しいが……まあ、大丈夫だとは思うが、無理はしないように、危なくなったら逃げるように、と言っておく。

 とりあえず、安全のためにも、警戒で各地を回る際に盗賊を見つけたら念入りに退治しておこうと心に決めた。

 俺の魔力の三分の一……いや、半分くらいは使おう。

 あと、俺宛に伝言があった。

 テレイルからは、また顔が見たいを言うので、今度時間を作って会いに行こうと思う。

 伝言は他にもあって、相手はゼブライエン辺境伯とシュライク男爵。

 今度強いのを紹介してくれ、と。

 ……魔物大発生(スタンピード)では足りなかったのだろうか?

 そんなフォーマンス王国では今、魔物大発生(スタンピード)の際に現れ、魔物たちをあらゆる魔法で断罪した白髪の高齢の男性――無のグラノさんが大人気だそうだ。

 張り切ったのかな? 張り切ったんだろうな。

 無のグラノさんは恥ずかしそうに頬を掻いていた。


     ―――


 次に聞いたのは、冒険者の国・トゥーラ。

 国の名が示すように、この国には冒険者が多い。

 だから、国王であるクラウさんは国内にある冒険者ギルドに国から復興に関する様々な依頼を出し、冒険者たちにもその依頼を率先して受けるように通達した。

 もちろん、ただ依頼を出して受けろと通達した訳ではなく、依頼達成時の報酬金額は通常よりも高くなっていて、行い次第では冒険者ギルドからの評価も高くなるらしい。

 それでも国からの依頼を受けないのは居るそうだが、大半は素直に受けているらしく急速に復興していっているそうだ。

 ただ、人だけを集めても、普通急速に復興はしない。

 それだけの資材がなければならないのだが、そこは王都にダンジョンを持っている国である。

 魔物大発生(スタンピード)時は立ち入り禁止にしていたダンジョンを開けて、ここにも国からの依頼を出して冒険者を大量投入し、資材をガンガン集めたようだ。

 クラウさんがアブさんのダンジョンの管理を任されているからこそ、復興に必要なモノをダンジョン内に用意するとか、上手く使っているのだろう。

 ……アブさんも手伝っていそうな気がする。

 いや、元々アブさんのダンジョンだから、この場合は率先して、か。

 ともかく、人と資材が大量に揃っているからこそ復興するのは早く、既に周辺国にも支援を出しているそうだ。

 クラウさん、やり手である。

 ……もしくは宰相のリヒターさんか、冒険者ギルド・トゥーラ国本部のギルドマスターとなったリユウさん辺りの指示だろうか。

 そんな冒険者の国・トゥーラでは、現在ある男性が大人気らしい。

 国の危機に颯爽と現れ、ありとあらゆる魔物を燃やし尽くした、赤髪の筋骨隆々な男性――火のヒストさんである。

 なんというか、こう、魔法よりも筋肉を誇り、見せつけて、同じ志を持つ仲間を増やしていそうな気がするのは……間違えていないと思う。


 うん。深く考えると負けた気になりそうなので他の国について聞こう。


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