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賢者巡礼  作者: ナハァト
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高々と掲げる

「俺がさらに時間を稼ぐ! その間に邪神を倒せるだけの力を溜めて攻撃してくれ!」


 アブさんとカーくんに向けてそう言い、魔法を放とうとするがアブさんが待ったをかける。


「いや、邪神は巨大だ。それなら某やカーくん殿よりも、アルムの膨大な魔力量に任せた超広範囲、あるいは超威力の魔法で一度に倒した方がいい」


 そう提案してきて、カーくんも同意して頷く。


「魔力量に任せたって――もう少し言い方を、こう……」


「それを気にしている場合か?」


「そうだけど……まあ、はいはい。わかった。なら、俺が邪神を倒すってことでいいんだな?」


 それでいい、とカーくんが笑みを浮かべ、アブさんもどことなくそんな表情を浮かべているように見えた。

 邪神を倒すのなら、中途半端な魔法では駄目だ。

 またすべてを使い切るつもりで、七属性をすべてかけ合わせるくらいのことをしないといけないと思う。

 俺だけなら失敗するのは目に見えている――が、頼れる相棒が俺には付いている。

 真竜ノ杖を見れば、制御は任せろ、と頷いたように見えた。

 まあ、まだ魔力は回復し切っていないんだけど。

 真竜ノ杖が邪神から魔力を抜き取って俺に渡しているが、まだ足りない。

 それでも今の内にやれることを――と回復していく魔力を体中に漲らせていく。

 その間に、アブさんとカーくんは攻めに出た。

 先ほどまでと同じく、アブさんが即死魔法の骸骨の大鎌で邪神の一部を切り裂き、カーくんが竜の息吹(ドラゴンブレス)で切り裂いた一部を消し去っていく。

 邪神はまだ混乱中なのか、ただそれを黙って受けているだけ――いや、違う。

 既に動き出していた。

 邪神の体が少しずつだが再び膨れ上がっていく。


『……魔力が、抜けるというのなら、抜ける以上に、取り込めばいいだけ、のことだ』


 真竜ノ杖が邪神から魔力を抜き、そこにアブさんとカーくんの攻撃も加わっているのにも関わらず、邪神はそれらを意に介していないように見えた。

 それよりも、魔力を取り込むことを優先している感じだ。

 俺も準備を始める。


「『赤熱』――『青流』――『緑吹』――『黄覆』」


 火属性の赤い球、水属性の青い球、風属性の緑の球、土属性の黄の球を作り出して周囲に浮かべる。

 制御は真竜ノ杖に任せているので霧散することはない。

 その代わりという訳ではないが、邪神の体が一気に膨れ上がる。

 どうして――と考えて直ぐ答えに思い当たった。

 真竜ノ杖が魔法の制御に回ったことで、邪神から魔力を抜く量が減ったのだ。

 だから一気に膨れ上がり――それだけではなく、膨れ上がる速度も上がったように見える。

 アブさんとカーくんも攻撃する手は一切とめていないが、それでも膨れ上がるのをとめられない。

 まあ、とめられないのは俺も同じ。


「『白輝』――『黒失』」


 光属性の白い球、闇属性の黒い球を作り出して浮かべ、真竜ノ杖の制御下に回す。

 これで、あとは無属性――と思ったところで、膨れ上がっていてもどうにか見えていた邪神の頭部――顔部分が笑みを浮かべたように見えた。

 猛烈に嫌な予感。


『……ハ、アアアアア……アハハハハハッ!』


 邪神が一気に元の倍近くまで膨れ上がり、高笑いを上げる。


『……もう、これで充分、だ! ……我の方が、早かったな! ……これで、この世界は終わ、りだぁ~!』


 内にある力を抑え切れないと、邪神の膨れ上がった体の至るところから黒い光が漏れ出始めた。

 黒い光の輝きは一気に強く広がり、果たして目を開けているのか閉じているのか、それがわからないくらいに視界を黒く染める。

 くっ。間に合わなかったか。

 あと二手、足りない。

 真竜ノ杖の障壁で耐える――のは難しいだろうな。

 ………………。

 ………………。

 ん? あれ? 特に痛みを感じない。感じる前に死んだ? と思ったのだが――それは違う、と視界が戻る。

 邪神は――自爆していなかった。

 白く光り輝く巨大で頑丈な鎖でぐるぐるに縛り上げられている。

 それで爆発できなかったようだ。

 邪神を縛る鎖は――アブさんとカーくんが両手から出して握っている。


「……は? どういうこと?」


「『神性』の力を使った鎖だ! これで一時的に封じている!」


「だ、だが、そう長くはもたない! アルム! 早く倒せ!」


 へえ~。「神性」ってそんなこともできるのか。


「……それ、『神性』を使いこなしているよな? やっぱり、『神性』の力を使いたくてわざと邪神を倒していなか」


「そ、そんなことはないぞ! いや、それどころではないから!」


「う、うむ! は、早く頼む! あ、ああ! もう手が痺れて!」


 怪しい……怪しいが、今は邪神を倒すことを優先する。


「『透在』」


 無属性の透明の球――見えはしないが確かな存在を感じ、真竜ノ杖の制御下へ。

 これで七つの属性が揃い、それを混ぜ合わせ――俺の頭上に、虹色に煌めく巨大な球を作り出す。

 また全魔力近くを使ったので、今にも途切れそうな意識を気合で繋ぎとめ――放つ。


「これで終わりだ! 邪神! 『全属性魔力弾オール・アトリビュート・バレット』」


『……これで、我が滅びるなど……我だけが……道連れを……馬鹿、なあああああ』


 咆哮のような声を上げる邪神に、虹色に煌めく巨大な球が当たった――瞬間、虹色に煌めく巨大な球はさらに大きくなって邪神をその中に取り込み、視界を染める虹色の輝きを放つ。

 視界は直ぐに戻り――邪神の姿はどこにもなかった。

 上下左右。あらゆる方向を確認。

 アブさんとカーくんも同じように確認して――どこにも邪神の姿がなく、存在も感じられないことを確認してから、俺、アブさん、カーくんは、邪神を倒したと握った拳を高々と掲げる。

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