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賢者巡礼  作者: ナハァト
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サイド 各国 反撃 5

 三柱の国・ラピスラ。

 邪神による魔物大発生(スタンピード)の魔物たちと王都近郊で繰り広げられた戦い。

 それは一進一退の攻防ではなく、押しているのは三柱の国・ラピスラの方であった。

 冒険者ギルド総本部があるため、冒険者の質が高い。

 商業ギルド総本部があるため、物資の質、数が揃っている。

 両ギルド総本部に対抗するため、国力が高い。

 少し前までは冒険者ギルド総本部と商業ギルド総本部の間で諍いが起こり、国が間に立とうとしたが力及ばず――といった感じであったが今は違う。

 冒険者パーティ「王雷」が戻ってきて叱られたことで今では手を取り合い、三柱の名の下に協力し合っている。

 そのため国としての力が非常に高まり、邪神による魔物大発生(スタンピード)を相手取っても、優勢な状態を保つことができていた。

 何よりその状態に貢献しているのは、二人の男女。


「右方! 冒険者の部隊が前に出過ぎています! あのままでは孤立してしまいますので、下げてください!」


「「「かしこまりました! ビライブさま!」」」


「王雷」のエルフ(超絶美顔)・ビライブの指示で、女性冒険者と女性騎士が指示を伝えるために駆けていく。

 今やこの場の女性の多くはビライブの虜となっていた。


「左方の騎士たちが守勢に回り始めているみたい……誰か助けに」


「「「お任せを!」」」


「王雷」のドワーフ(ロリ顔美少女)・クララが指摘すると、男性冒険者と男性騎士が助けに向かう。

 クララを見守ると決めた男性たちは非常に協力的である。

 これで、ビライブとクララが無能であれば非常に問題な上に誰も従おうとしないだろうが、石化が解けてからニーグと共にラビンのダンジョンの攻略を行えるほどに元からの実力も高く、さらに攻略していく内に鍛えられているため、二人はこの場における最強格であり、有能なのだ。

 けれど、それだけなら反抗――とまではいかなくても、受け入れない者も居るだろう。

 しかし――。


「「従えない者は死ねばいい」」


 ビライブとクララの活躍に対していい笑顔を浮かべる、冒険者ギルド総本部マスターでクララの兄であるラフトと、商業ギルド総本部マスターでビライブの妹であるビネスの圧力(権力)によって、そのような者は居ないのが現状である。

 それで邪神による魔物大発生(スタンピード)を乗り切っているのだから問題ないのだ。

 ただ、予想外な出来事はいつだって起こる。

 いや、予想はしていたが、耐え切れるというか、抑え込めると判断されていた。

 抑え込んでいたのは、天塔(ヘブンタワー)

 三度も放たれた邪神の黒い波動に刺激を受けて、魔物を溢れさせたのである。

 もちろん、天塔(ヘブンタワー)にも念のために人員は配置しておいたのだが、さすがに最上位の魔物を抑え込むことはできなかったのだ。

 邪神による魔物大発生(スタンピード)の魔物だけではなく、天塔(ヘブンタワー)から溢れ出てくる魔物まで増えたことによって、最上位の魔物が現れるようになっただけでも厄介だというのに、その総数が爆発的に増えた。

 まるで大波のように埋め尽くされた魔物たちが襲いかかってくる。


「「――これはまずい!」」


 このままぶつかると勢いに負けて全滅しかねない、とビライブとクララは判断して――一度王都まで撤退したのち、不安はあるが王都の外壁で魔物の大波を防ぎつつ、ある程度数を減らしたところで打って出る――とそこまで瞬時に考えて指示を出そうと口を開いた瞬間――。


「お待たせしました!」


 二人に向けて空から声が届く。

 視線を向ければ、清流のような美しい青い髪に、切れ長の目が特徴的な顔立ちと、ローブを着てもわかるすらっとした体付きの女性――水のリタがビライブとクララの近くに下りてくる姿があった。


「「リタ!」」


 笑みを浮かべるビライブとクララ。

 それは助かったとか心強い存在が現れたことに対するモノではなく、実際は骸骨状態(スケルトン)で、その姿は「装着式戦闘用外殻(バトルスーツ)」でしかないとわかっていても、見知った姿を改めて見られることは――やはり嬉しいモノなのである。

 水のリタは状況を瞬時に理解して、動く。


「まずは魔物を押し返します! 【詠唱破棄】大海嘯(タイダルウェイブ)


 地に降り立つと同時に水のリタが魔法を発動。

 水のリタの足下から水が溢れ出し、それが瞬時に王都の外壁よりも高い大高波となって魔物たちへと押し寄せる。

 魔物たちは飲み込まれて、王都から強制的に遠ざけられていく。


「まだ終わりではありませんよ! 【詠唱破棄】穿つ螺旋の水弾ピアース・スパイラル・ウォーターバレット


 さらに水のリタが魔法を発動。

 水のリタの周囲に螺旋する槍状の水が出現。

 その数は百をゆうに超え、一斉発射される。

 埋め尽くすような数の魔物たちの一部の先頭から奥まで一気に貫いていく。

 その中には最上位の魔物の姿もあった。

 ビライブとクララは少し呆れ顔を浮かべた。


「……リタ、張り切り過ぎでは?」


「体を手にして嬉しいのはわかるけど、ここには私たち以外も居るんだよ」


「別にそういうことではありません。ただ、私からすれば久し振りに一緒に戦うので――少し張り切ってしまっただけです」


 少しだけ恥ずかしそう言う水のリタ。

 ビライブとクララは顔を見合わせ、笑みを浮かべる。


「……そうですね。リタからすれば、確かにそういう感覚になりますね」


「ニーグはこの場に居ないけど……『王雷』ここに在り、だね」


 水のリタ、ビライブ、クララがこの場における三柱となって、魔物たちの数が多かろうとも、この場の支えとなった。

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