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賢者巡礼  作者: ナハァト
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サイド 魔物大発生への対処準備・完了

 魔物大発生(スタンピード)の方も対処している、というのはアルムの妄言でも虚言でもない。

 それについては、アブとカーくんも知っているので事実である。

 ただ、その対処が行われていないのは、単に準備中だからだ。

 進行形――いや、もう進行形だった。

 アルムたちが邪神を倒すために出たあと、対処の準備を進めていたのはラビン。

 それが終わったのは、邪神が「神性」を失い、魔物大発生(スタンピード)を強化してアルムたちに選択を迫る――少し前。


     ―――


 ラビンのダンジョン。最下層。ボス部屋。


「ふい~……終わったあ~……」


 口にするのと同時に、ラビンはその場で大の字に寝転がる。

 心地良い疲労感とやり切った充足感を抱いていた。

 そんなラビンに直ぐ側から声がかけられる。


「……もういいのか。ふむ………………なんと言えばいいか……そうだな。どれだけの年月が経とうとも、いいモノであるな」


 声の主は、無のグラノ。

 ラビンが無のグラノ、それとその奥に居る者たちに視線を向ける。


「慣らしは……まあ、本当は必要だけど時間がなさそうだし、どれも満足できる出来だから大丈夫でしょ。少なくとも、この一戦くらいは持つだろうし」


 そう口にして、ラビンは聞いて――いや、聞こえているのだろうか? と思う。

 無のグラノを含め、誰もが思い思いに具合を確かめていて、それに集中、あるいは熱中しているように見えたからである。

 ラビンに苦笑が浮かぶ。

 まあ、そうなるよね、と思ったからである。


「はいはい。確認はあとでもできるでしょ。ともかく、違和感がなければ大丈夫だから早く行かないと……あっ、でも、内臓魔力がなくなったら動かなくなるから、その前に戻ってくるように注意してね。アルムくんに協力してもらって魔力回復というか交換用のも用意しているけれど、数に限りがあるから調子に乗って考えなしに使いまくらないように」


 注意を出してみるが、これも聞こえているのか怪しい。

 一応、事前に説明をしているから大丈夫――とラビンは思うことにした。


「それじゃあ、各々場所はわかるよね? ……うん。わかっているならいいよ。というか、反応があるってことは聞こえていたってことだよね。安堵したよ。それじゃあ、いってらっしゃい! 楽しんできてね~!」


 見送ったあと、ラビンは一息吐く。


「ふう……大丈夫だと思うけど、ボクも少し休んだら様子を見ておこうかな」


 どこか危ないところあったかな? と寝転がったまま、ラビンは考え始める。


     ―――


 邪神が放った黒い波動は三回。


 一回目は魔物大発生(スタンピード)の発生。

 各地で巨大な黒い球が出現し、そこから次々と魔物が出てきて近場の町へと襲いかかる。

 規模としては魔物が出続けているので相当ではあるが、魔物自体の強さはそこまでではなく、ハッキリ言ってしまえば所謂雑魚ばかりであるため、魔物に囲まれないように注意して戦えば、脅威度としてはそこまでではない。

 だから、各地はどこもまだ余裕を持って対処することができた。


 二回目は発生した魔物大発生(スタンピード)の強化。

 巨大な黒い球から出てくる魔物の数は変わっていないが、その強さは上がる。

 魔物の種類で例に挙げるとするのなら、一回目の時はゴブリンしか出て来なかったが、二回目からは魔法を使うゴブリンメイジや、しっかりとした金属製の武具を身に付けたゴブリンナイト、そこに武具だけではなく体躯も筋骨隆々で大きいゴブリンジェネラルなどが出てくるようになった。

 また、例にゴブリンを上げたが、それは何もゴブリンだけではない。

 巨大な黒い球から出てくる魔物すべてがその対象であり、所謂上位の存在が出てくるようになったのだ。

 ただ、各地の余裕はなくなったが、まだ対処することができた。

 事前に準備していたのが功を奏したのである。

 少なくとも、二回目までであれば、邪神を倒すまで持ち堪えることができた。


 三回目は魔物大発生(スタンピード)の最大強化。

 巨大な黒い球から出てくる数は変わらない。

 変わったのは、魔物の質。

 ゴブリンを例に挙げるなら、ゴブリンキングといった、その種類の最上位に位置するような魔物が現れるようになったのである。

 つまり、数だけではなく質も備わったのだ。

 事前の準備だけでどうこうできる状態を超えた、と言ってもいいだろう。

 最早、国が存続できるかどうかではなく、世界崩壊の危機の災厄となった。

 絶望する者が各地で続出する。


     ―――


 それは――人ではない。

 見た目は人そのものだが、人ではないのだ。

 中身は骨で、人の形をした外殻を見に付けている――いや、装着している。

 人の形をした外殻の元となったモノは、リミタリー帝国が開発した戦闘用魔道具。

 ――自立戦闘用魔導人形。通称。バトルドール。

 それにラビンが改良を施した上で、装着できるようにしたのである。

 名称を付けるなら、「装着式戦闘用外殻(バトルスーツ)」だろうか。

 それぞれ生前の姿を模したバトルスーツを身に付けた七人が、対魔物大発生(スタンピード)に向けて出撃する。

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