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賢者巡礼  作者: ナハァト
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サイド 対黒ローブ 8

 ファイと「人類最強」が協力して、黒い剣を持つ者と黒い杖を持つ者と戦い、ニーグとドレアが協力して、黒い靴を履いた者と黒い盾を持つ者と戦っている。

 協力戦は思いのほか上手く回っていた。

 正直なところ、この場に居るのは双方問わず、個としての力が非常に強い。

 そのため、下手に協力するよりは個で戦った方が強いことが多いだろう。

 それでもファイたちの方は上手く回っている。

「人類最強」も含め、今や実力が近しくなっているからこそ、協力者の動きを察することができ、曲がりなりにも連携となる行動を取ることができていた。

 まあ、ファイと「人類最強」の場合はやり合ったことがあるし、ニーグとドレアは共に鍛錬していたから、というのも関係しているが。

 対して、黒いローブの者たちの連携は――一切ない。

 協力はまったくしていなかった。

 個人で勝手に動いている。

 寧ろ、内心では誰でもが自分だけで大丈夫と思っていた。

 何しろ、黒いローブの者たちは邪神が生み出したということもあって、同じく――不死、不滅の存在なのだ。

 非常に厄介である。

 そして、状況は互角――といったところだが、それはファイたちであればこそ、なのだ。

 並の者であれば、不死、不滅の黒いローブの者たちによってあっという間に蹂躙となっていたのは間違いない。

 何しろ、不死、不滅というだけではなく、邪神の力に染まった「神器(じんぎ)」、それとそれを使う個人の力が優れているのだから。

 ファイたちであるからこそ、ここまで長く戦うことができたのである。

 そうして互角の状況が続く中――遂にその時が来た。


 邪神から「神性」がなくなる。

 それは黒いローブの者たちにも影響を与えるのであった。


     ―――


 最初に気付いたのは、ニーグ。

 ニーグが相手取っているのは、電光石火のような速度を活かした攻撃を繰り出す黒い靴を履いた者。

 これまで戦ってきたことと、その特性故にニーグは直ぐに異変に気付いた。


(……速度が、目に見えて落ちている?)


 それは黒い靴を履いた者もそう。

 黒い靴を履いた者は攻めるのをやめて足をとめる。


「……はあ……はあ……な、何が起こって……え? はあ……何故? 邪神さまが居る限り、疲労なんて……」


 自分が息切れしていることにも驚き、戸惑う黒い靴を履いた者。

 何故なら、口にした通り、本来であれば邪神と繋がっている黒いローブの者たちは、邪神との繋がりによって常に万全の状態が維持されているのだ。

 いや、もう既に、維持されていた、繋がりがあった、だろうか。

 状況は変わった。

「神性」をなくしたことで消滅の可能性を抱くことになった邪神。

 その邪神は今、全力を出そうとしていた。

 全力である以上、他に回す余計な力はない。

 また、元よりそうだが、邪神が黒いローブの者たちを気にかけることはないため、黒いローブの者たちの繋がりを切ることも、邪神に躊躇いはないのである。

 それはつまり、黒いローブの者たちは、もう一切回復しないことを意味していた。

 何かが起こっている? と黒い靴を履いた者は邪神を見る。

 見てしまう。

 それは、悪手。

 何しろ、ニーグは黒い靴を履いた者が体力切れを起こしているのだと気付いているのだから。

 というのも、それは自分にも経験があったから。

 過剰と言えなくもない超常の動きに体がついていかず、瞬く間に消耗する。

 雷属性の特別な身体強化を使い始めた頃は、特にそうでよく倒れていた。

 黒い靴を履いた者は今その状態に近いのだと察する。


「……どうやら、動く時が来たようだぞ」


 そう口にしてニーグが動く。

 声に出したのは、共に戦っていたドレアに伝えるためだ。

 黒い靴を履いた者が邪神に視線を向けている間に、ニーグは雷属性による特別な身体強化を施して黒い靴を履いた者との距離を一瞬で詰める。


「どうやら、もう回復しなくなったようだな」


「くっ!」


 図星を指摘されて、黒い靴を履いた者はニーグから離れるように動き出すが、ニーグは直ぐにそのあとを追う。

 空中に、逃げる黒い靴を履いた者と、追うニーグの軌跡が描かれる。

 疲労から黒い靴を履いた者は満足に速度を出せないため、ニーグは直ぐに追い付いて横に並ぶ。


「どうやらここまでか。安心しろ。俺の速度なら直ぐ終わりだ」


「その前にお前を終わらせてやるよ!」


 黒い靴を履いた者が速度を上げてニーグに襲いかかる。

 しかし、黒い靴を履いた者は疲労しているだけではなく動揺もしているため、ニーグに対抗できない。

 ニーグもさらに速度を上げて黒い靴を履いた者を迎え撃ち、直ぐに速度で上回ったあとは、殴り、蹴り、さらにこれまでで一番の速度を加えて、超速乱舞を繰り出す。

 黒い靴を履いた者も数撃は対応してみせたが、一度崩れるともう取り返しはできなかった。

 超速乱舞を食らい続ける。

 また、この場が空ということもあってニーグの動きは縦横無尽。

 一種の芸術のような超速乱舞の軌跡が描かれた時間は僅か。

 だが、その僅かの中身は非常に濃密である。

 動き出してからそう時間はかからずに、黒い靴を履いた者はニーグの超速乱舞を食らって倒れ、落ちていく。

 元に戻ることはなかった。

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