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賢者巡礼  作者: ナハァト
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大事なのはそうする気持ちってこと

 魔法陣でダンジョン最下層に辿り着いてから気付く。

 そういえば、無のグラノさんたちのことを説明していない。

 いきなり骸骨スケルトンに会わせて大丈夫だろうか?

 あと、ラビンさんは見た目人間だけど、カーくんはカーくんだ……いや、巨大な竜だ。

 ただ、言っても信じてくれるかどうかがわからない。

 見せた方が早いと思うのも確か。


「………………ここで少し待って」


 相談した方がいいかもしれないので、リノファと母さんを魔法陣の上で待たせて、まずは俺だけで向かう。

 やはり居るのはボス部屋だろうか? と大きな扉をそっと開けて中を確認。


「はいはい。急いで。アルムくんのことだから、直ぐ戻ってきてもおかしくないよ!」


 ラビンさん指揮の下、歓迎会のような催しが起こされようとしていた。

 何故歓迎会だとわかるのかと言えば、ボス部屋の上の方から「ようこそ! ダンジョン最下層へ!」と書かれた垂れ幕が下げられていて、無のグラノさんたちがテーブルと椅子、食器類のセッティングを行っているからだ。

 ……あれ? 俺の時となんか違くない?

 いや、俺の時も歓迎されはしたけど、もっとささやかというか、慎ましやかというか……。

 来るのが女性だとわかっているからだろうか?

 ただ、歓迎会というのは悪くない。

 俺も手伝った方がいいだろうか……いや、時間かかりそうだし、足止めか? と悩んでいると、ラビンさんが覗いている俺に気付く。


「あっ、アルムくん……が、居るということは?」


 その声で、ボス部屋に居る全員が俺に気付き、視線が向けられる。

 ……もう来ていると、頷きを返す。


「いや、ちょっと待ってよ。まだ終わってないんだけど」


 困惑するラビンさん。

 それは他のみんなも同じであり、俺もだ。

 中に入り、ラビンさんに話しかける。


「いや、そう言われても、俺としては歓迎会を開くなんて思っていなかったから」


「確かにそうだけど、戻ってくるのが早くない? もう少し時間がかかると思っていたから、間に合うと思っていたんだけど……時間稼ぎできない?」


「いや、もうそこに居るから無理。既に待たせている状態だ。というか、歓迎会するにしても用意に時間かけ過ぎじゃないか? 俺が出て行って直ぐ戻ってきたという訳ではないし」


 それなりに時間があったはずだ。

 だから、準備が終わる前にきたとしても俺のせいではない。

 すると、水のリタさん、土のアンススさん、光のレイさん――女性陣の視線が男性陣に向けられる。


「せっかくの催しなのに、あなたたちが躊躇するから」


「そこまでしなくても、と言っていたけど、結局は恥ずかしかっただけでしょ」


「……歓迎されれば喜ぶモノ。誰だって知っている」


 男性陣がちょっと恐縮している。

 なるほど。準備を始めた時が遅かったのか。

 ただ、男性陣が躊躇った理由もなんとなくわかる。

 歓迎会を開いて喜んでくれるかどうか、不安だったのだろう。

 でも、今そこを議論している暇はない。


「とりあえず、そこら辺は先に準備を終えてから――」


「なるほど。どこか慌てていたように見えたのは、こういうことだったのですね」


 うしろから、そんな声が聞こえてきた。

 無のグラノさんたちは、全員俺のうしろを見て固まっている。

 そーっとうしろを確認すれば……リノファと母さんが居た。


「……えーっと、待っててと言ったはずだが」


「そうですね。この様子を見る限り、待っていた方がよかったかもしれませんが、別に隠すようなことではありませんよ。行っていただく気持ちが大事ですから」


「こういうことをするのであれば、事前に言っていただかないと。見た感じ、まだ終わっていないようですし、私に言えば瞬間で終わらせておきましたよ」


 リノファは困ったような笑みだがどこか嬉しそうで、母さんは私ならもっと上手くやれたといった雰囲気だ。


「……えーっと、驚かないのか?」


 骸骨スケルトン多数、見た目人が一人、巨大な竜なんだが。

 そう問いかけるが、リノファと母さんに気にした様子はない。


「多少驚きはしましたが、ご様子からこの方たちにこれから教えられるのだとわかりましたし、失礼があってはいけません。それに女性の方も居るようですし、驚きよりも何やら安心しました」


「息子の恩人なのですから、どのような方であろうとも、そこには感謝しかありません」


 言葉通り、無のグラノさんたちを見るリノファと母さんに、忌避感のようなモノ一切ない。

 なんというか、ホッと一安心だ。

 見れば、無のグラノさんたちも同じ気持ちだったのか、受け入れてもらえたようでホッと安堵している。


「それに、こんなに凛々しい骸骨や可愛らしい骸骨を見るのは初めてなので、嬉しいです」


 ……ん? 今、聞き間違えた?

 しかし、リノファは満面の笑みを浮かべている。


「……骸骨スケルトン、好きなのか?」


「はい!」


 それはとてもいい返事だった。

 ……無のグラノさんたち。

 嬉しいのはわかるが、揃って魅せるようなポーズを取らないように。


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