輝いています
俺はこれまで無のグラノさんたちから記憶と魔力を受け継いできた。
その際に使用してきた魔法陣。
それをラビンさん、無のグラノさんたちと共に改良を施して、邪神から「神性」と呼ばれる神が神であるために必要なモノを奪い取る――失礼。発動時に触れていた者へと受け継がせる球体魔法陣を作り出した。
神器が手元になく、奪えない、あるいは使えない可能性を考慮して、この手段を用いることにしたのである。
結果。邪神は「神性」を失い、「神性」はアブさんとカーくんが受け継いだ。
これは……本当に上手くいって良かった。
事前に試せない――というか、試す、試せる相手がどこにも居ない以上、こればっかりはぶっつけ本番だったのだ。
……あれ? それを考えると、俺の時もぶっつけ本番だった、のでは………………深くは考えまい。
結果として今がある。それでいい。
精神を、心を守ることにした。
ともかく、これで邪神は邪神ではなくなったのである。
強大な力は有したままだが、それでも神でなくなったことで不滅、不死ではなくなった。
「こうなると……アレだな。邪神に『神性』はなくなったのだし、もう神ではなくなった訳だから、邪『神』というのも……単なる邪なるモノに……まあ、いいか。どうせ、後々言わなくなるし」
そう言ってみるのだが、邪神に反応は見えない。
何をやったかをバラしている途中からこうだった。
多分、自分の状態を確認している、あるいは確認は終わっているが、「神性」がなくなったことに衝撃を受けている、といったところなのかもしれない。
……隙だらけだな。誘いか? それとも、衝撃が強くて本当に思考停止中とか?
ただ、まだ俺は回復し切っていない。
なので、言うことは言ったし、攻撃する? とアブさんとカーくんを見ると……なんというか、こう……力を示すようなポーズを取って見せつけている。
邪神に――ではない。
俺に見せつけていた。
……なんで、俺に?
「アルムよ。今のアルムの心情はよくわかる。『神性』を得たことで至高の輝きを得た某の骨が羨ましいのだろう?」
いや、違う。
「ふっ。アルムよ。これまでの付き合いでわかっているぞ。『神性』を得たことで極上の輝きを得た我の筋肉を得たいのであろう?」
いえ、別に。
アブさんとカーくんがそんなことを言い始めた。
「神性」を得たことで上機嫌……いや、極上機嫌のようで、その高揚を抑え切れない感じだ。
「今の某は最早ただの『絶対的な死』ではない! 進化した! 我は進化したのだ! 今の某は……そう! 『絶対的な死の神の骨』である!」
「今の我は竜を超えた存在である! 『究極聖魔竜』ではなくなった! 今の我を表すのに相応しいのは……『究極聖魔神筋肉竜』である!」
アブさんとカーくんの状態は、寧ろ、今までよく我慢した、といったところである。
ただ、勝手に名称を変えるのもそうだが、どちらもそれでいいのか? と問いたいというか、考え直すべきでは? と思ってしまう。
それだと、重要なのは「神性」の方ではなく、「骨」と「筋肉」の方である。
きっと……アブさんとカーくんの中ではそれで正しいのだろう。
「神性」とは一体……。
いや、それよりも前に聞いておかないといけないことがある。
「というか、アブさんにカーくん、本当に大丈夫なのか? 何も変調はない?」
こればっかりは当事者しかわからないので、聞くしかない。
「神性」を得て、何か変わったことがあるかどうか……願わくば、何も変わっていないといいのだが……。
「「変わったこと? 輝きを放つようになったが?」」
骨と筋肉以外で頼む。
それに関しては……わかった。
俺はそういう風に見えないが、輝いているから。
認める。認めるから。
だから、状態について確認をしたい。
輝いている? 以外に何もなければいいのだが……。
「問題ない。強いて言うのであれば、不死――は元々そうなので、不滅のような感じではない、といったところか」
「うむ。それは我も感じている。おそらく、一つの『神性』を我とアブの二者で受け継いだ影響だろう。まっ、それでも問題はない。重要なのは、邪神から『神性』がなくなり、倒せるようになった、ということだ」
アブさんとカーくんは大丈夫だと言う。
嘘偽りではなさそうなので、とりあえずは安堵してもいいか。
……あとでラビンさんにも確認してもらおう。
そう思っていると――。
『………………ノだ』
邪神から呟きが聞こえてきた。
見れば……妙な雰囲気を醸し出し始めている。
感覚的に……怒りだろうか?
『……それは、我の、モノだ! ……お前たち、のような、下等生物が、手にしていい、モノではない!』
邪神が襲いかかってくる。
『……返せ! 創造神、を殺すために、それ、は、必要なのだ!』
いや、返せと言われても、返す訳がない。
身構える――前に、アブさんとカーくんが飛び出していった。




