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賢者巡礼  作者: ナハァト
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ないなら別の手を考える

 そう。戦う前からわかっている。

 邪神がどうして邪神なのかは興味がないので聞いていなかったが、倒せるかどうかは興味があるというか一番重要な事柄なので、しっかりと聞いて話し合っていた。

 邪神は、邪神であろうとも神は神。

 神は殺せない。

 普通なら。

 神を殺せるのは神だけ――らしい。

 俺は神ではないのでその辺りのことはよくわからないし、そもそも確かめようもないので、そういうモノだと納得しておいた。

 まあ、ラビンさんから聞き、カーくんもそうだと頷いていたので間違いないと思う。

 ともかく、現状で邪神を倒すのは無理、不可能だ、ということ。

 だが、何事もそうであるように、これにも例外が存在している。

 例外があると断言できるのは、過去――無のグラノさんの記憶の中で、無のグラノさんとその仲間たちは邪神と普通に戦えていたからだ。

 その理由は、「神器(じんぎ)」を手にしていたから。

 神器(じんぎ)は神の力を宿しているので、邪神に癒えない傷――今のように元に戻すということができない傷を与えることができるのである。

 神器(じんぎ)であれば、神殺しもできるだろう。

 まあ、邪神の本来の強さもあるので、なんにしても倒すのは簡単なことではない。

 だから、無のグラノさんとその仲間たちは倒すことができず、封印するしかなかったのだ。

 という訳で、邪神を倒そうと思うのなら神器(じんぎ)が必要だが、今手元には――こちら側にはない。

 見た感じ、黒ローブたちが使っている黒い武器がそうだろう。

 なんで黒くなった?

 邪神がそうしたのかな?

 黒くなった神器(じんぎ)を取り返したとして、こっちが使えるとは思えない。

 いや、そもそも黒くなった状態だと邪神に通用しなさそうだ。

 ……まあ、邪神を倒すのに、俺たちは神器(じんぎ)必要ないんだけどね。

 そのための策を用意したのだ。

 ただ、その策を使うために邪神を消耗させないといけないのだが……それが現在進行中で大変なのである。


『……なるほど。動揺が、見られない……我を殺せない、と知っていた、訳か……』


 俺たちの態度を見て、邪神がそう判断した。

 あれ? 俺たちが知っていたことってバレて良かったのだろうか?

 知っていて戦っているのだから、何かしらの対策があるのでは? と警戒して、それでこちらの策が失敗してもおかしくない。

 今更ながら、何かしらの反応をしておけば良かった。

 今から大声で「な、なんだってー!」とか言ってみるか?


『……なら、お前たち、が、できることは、阿鼻叫喚を上げる、ことだけだ……お前たちの、阿鼻叫喚を……創造神まで、届けさせろ』


 警戒した様子はない。大丈夫なようだ。ホッと安堵。

 神器(じんぎ)を黒くしたことで、もう自分が死ぬことはない――という絶対の自信を持っていそうだから、気にしないのかもしれない。

 そういうのを――油断と言う。とか言ってみたい。

 言う前に、邪神が動き出した。

 四本腕がすべてカーくんに向けて殴りかかる。

 カーくんはそのすべての攻撃をかわし、防ぐが――状況は良くない。

 やはり腕が四本あるからか、邪神が押している。

 カーくんの防御を突破するかもしれない。

 そうはさせない、と魔法をはな――。


『……あとで、相手をしてやる……今は、邪魔だ』


 邪神の周囲に巨大な魔法陣が五つ展開して、そこからそれぞれ闇属性と無属性以外の属性魔法――球形であったり、剣の形であったり、槍状であったりと、様々な形を取って放たれる。

 俺だけではなく、アブさんにも。

 どうやら、アブさんも攻撃魔法を放とうとしていたようである。

 しかも、邪神の巨大な魔法陣からの魔法攻撃は単発ではなく連続で放たれ続けているため、俺とアブさんはその対応に追われる。

 その間に、邪神はカーくんに意識を向けた。


『……まずは、お前……竜から、だ』


「ふんっ! この場における最強が我だと察したようだな! ならば、できるものならやってみるがいい!」


 カーくんが意気揚々と邪神と殴り合いを始めた。

 殴られても気にせず殴り返している。

 防御しなくなったのは、攻撃しないと消耗させられないと判断したからだろう。

 俺とアブさんは邪神からの魔法攻撃で手一杯だし。

 ただ、押しているのは邪神の方だった。

 四本腕という手数もそうだが、やはり厄介なのは元に戻るということ。

 手数を減らそうと、カーくんが邪神の腕を殴り飛ばしても直ぐに戻り、そのまま攻撃を続けてくる。


『……無駄、無駄だ……さあ、阿鼻叫喚を、上げろ!』


「誰が上げるか!」


 声を荒げるカーくん。

 邪神は無傷のままだが、カーくんは少しずつダメージを負っていっている。

 カーくんと同程度の大きさになってから、邪神はそれだけ攻撃力を増したということか。

 このままでいけないのは間違いない。

 というのも、こちらが用意している策には俺だけではなくアブさんとカーくんも必要なのだ。

 誰も欠けてはいけない。

 それに、アブさんとカーくんはできるだけ万全の状態であって欲しいので――俺が無理をする。


「カーくん! 少し休め! 俺が代わる!」


 そう言いながら全方位に魔法を放ち、邪神の周囲にある五つの魔法陣から出ている攻撃魔法を一度一掃してから、カーくんの下へと向かう。

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