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賢者巡礼  作者: ナハァト
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だから、いきなりはやめろって

 ちょっと気になって見ていたのだが、アレだな……「人類最強」、慣れるの早くない?

 確か、ドレアたちでも空中を自由に動けるようになったのは、もう少し時間がかかっていたと思う。


 ――俺の方が早かったわ!


 なんかどこかからファイの怒鳴り声が聞こえてきた気がした。

 そうだったか? そうだったかもしれない。

 準備で忙しくて、その辺りは曖昧だな。

 まあ、そういうことにしておこう。

 というか、「人類最強」が空まで自由に動けるようになると、いざという時本当に逃げ場がないな。

 あの時よりも強くなっている自覚はあるが……「人類最強」と一対一で勝てるだろうか?

 ………………。

 ………………。

 ま、まあ、「人類最強」は正気に戻った訳だし、そんな機会はない。

 つまり、考える必要はないのだ。

 ただ、この戦いが終わったあと、ファイは一対一をご所望しそうだが。

 ファイと張り合っているドレアもあり得そうだ。

 ……まっ、好きにすればいい。俺は関与しない。

 というか、あれ? なんかファイと「人類最強」が協力し合っていないか?

 合わせて、ドレアとニーグも協力を始めた。

 ドレアとニーグは問題ないと思うが、ファイと「人類最強」の方はさすがに………………いや、意外と息が合っているな。

 上手く戦っているというか、互いに相手がどう動くのかわかっているかのように戦っている。

 これはアレか? 互いに近しい力を有しているからこそ、言葉を交わさずともどう動くのかわかる、みたいなヤツか?

 とりあえず、疲労で危ないかも? と思ったが、これなら引き続き黒ローブたちの相手を任せて大丈夫そうだ。

 ドレアたちが協力し合うことで時間的余裕はできたと思うが、やはり問題なのはこちらの方か。

 いや、俺の魔力はまだまだ余裕なんだけどね。

 アブさんも余力を残しているようなんだけどね。

 カーくんも傷を負うようになったが回復もしているし、まだまだ動けるんだけどね。

 それでも、邪神がカーくんくらいの大きさになって強さを増してから、三対一で戦っているにも関わらず、消耗はこちらの方が大きくなっているのは間違いない。

 このまま邪神と消耗戦を続けたとして……様々な状況を考えても、こちらが先に消耗し切ってしまうと思う。

 その根拠として、こちらの攻撃によって邪神は消耗していっているが、同時に周囲からの魔力の吸収で回復もしているのだ。

 だからこそ、余力のある今の内に――動ける内に動いておかないといけない。


「『【詠唱破棄】光斬剣(ライト・ブレード)火炎纏い(フレイム・ロール)』」


 火炎を螺旋上に纏う光り輝く剣を作り出す。

 一本では足りないだろうから、五本。

 それと、合成魔法だろうと下手に魔力を抑えたというか通常の威力では防がれるだろうから、がんがん魔力を注いで超強化。


「行けっ!」


 五本の火炎を螺旋上に纏う光り輝く剣を放つ。

 もちろん、ただ真っ直ぐ進むだけではなく、俺の意思一つで軌道を変えることができ……五つは多過ぎたかな? いや、できる。大丈夫。やらねばならない。限界を超えろ。

 五本の火炎を螺旋上に纏う光り輝く剣を自由自在に動かし、邪神の防ぐ腕を斬り裂き、首を斬り、手足、胴体を切り刻む。


『……むっ!』


 邪神から声が漏れるが、気にしていられない。

 これで終わりではないのだ。


「アブさん!」


「うむ!」


 アブさんは既に動いていた。

 大爆発を起こす赤黒い球の魔法を連発して、俺が切り刻んだ邪神の体を爆散させていく。


「カーくん!」


「わかっておるわ!」


 そこに、カーくんが竜の息吹(ドラゴンブレス)を放ってさらに消し炭としていく――が。


「……本当に面倒な存在だな」


『……無駄だ、無駄だ、無駄だ』


 完全に消滅させるよりも早く、邪神は元に戻って余裕の笑みを浮かべる。

 なら、さらに続けるだけ。

 ドレアたちが協力したように、こっちも協力する。


「アブさん! 合わせろ!」


 それだけで理解してくれるだけの関係は築いている。

 アブさんが大爆発を起こす赤黒い球を作り出す。

 そこに手を当て、光属性の魔力を大量に流して――赤黒い球は輝きを放ち、人の数倍はある大きさへと変わる。


「「はっ!」」


 アブさんとタイミングを合わせて放つ。

 邪神が払い除けようとする動きを見せるが、残念。遠隔可能だ。

 巨大な赤黒い球をカクカクと動かして払い除けようとする動きをかわし――着弾。

 視界を焼き尽くす眩しい光と共に大爆発を起こす。

 直前に目を閉じていて良かった。

 なんとなくそうなると思っていたから。

 アブさんは目がないので大丈夫。少し離れた位置に居るドレアたちにも上手い具合に影響はなさそうだ。

 ただ――。


「う、うう! 目、目が!」


 カーくんが眩しい光にやられていた。

 両目を押さえて軽く呻いている。

 ……ごめんよ。

 邪神は――頭部と胴体は消え去り、両手足だけが残っているような状態だったが……そこからでも元に戻った。

 邪神から感じられる余裕は消えていない。


『……なるほど……前回のよりは、強いようだが……何をしようと、無駄だ』


 前回? 封印された時のことだろうから、無のグラノさんとその仲間たちのことか。


『……神器(じんぎ)のない貴様たちでは、たとえ、竜であろうとも、我をどうこう、できない』


 そんなことは、初めからわかっている。

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