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賢者巡礼  作者: ナハァト
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小さ……いや、それでも大きい

 邪神が小さくなっていっている。

 山のような大きさを保てなくなった?

 つまり、大きさを維持することが難しくなっている……それだけ消耗させた、ということだろうか?

 さらに追い打ちをかける絶好の機会か?


「『【詠唱破棄】四重魔力弾クアドルプル・バレット』」


 合成魔法の魔力弾を放つ――が、邪神の振るった腕に弾かれた……弾かれた?

 いや、最初に放った時は邪神の体の一部を抉り取ったんだが。

 すると、その様子を見ていたカーくんが唸る。


「うんん……なるほど。そうなったか。寧ろ、ここからが本番かもしれないな」


 わかるように言って欲しい。

 偶に、こう、自分だけがわかる、わかっているように口にする人が居るが、そういうのは良くないと思う。

 そういう情報は共有しておいた方がいい場合が多いと思うのだが。

 なので、尋ねる。


「どういうことだ?」


「うむ。小さくなっているのは、ただ消耗したからではない。取り込んでいる魔力を圧縮していっているのだ。圧縮していっているということは内部密度も上がっていっている。より力が増し、より頑強になり、あらゆる面が向上するのだ」


「つまり?」


「簡単に言えば、強くなる」


 なるほど。わかりやすい。

 頷きを返す。

 ということは、今まで以上の威力がある攻撃でないと通じない、ということか。

 アブさんも状況はわかった、と頷いている。

 そして、邪神の山のような大きさが、カーくんと同じくらいまで小さくなる……いや、別に小さくはないか。それだとカーくんまで小さいということになる。それはない。大きいことは大きいのだ。元よりも小さくなった………………カーくんと同じくらいの大きさになった。

 うん。これだ。

 それだけではない。

 山のような大きさの時は全体的にぼんやりとしていたが、今はそういう曖昧な部分が消えて、よりハッキリとした形となっている。

 ……いや、そうでもないかな。

 頭というか顔が変わらずのっぺりとしているままなので、印象は特に変わらないかもしれない。

 ただ、目の部分に意思の光が宿ったというか、そこから濃密な殺意のようなモノが感じられるようになった気がする。


『……またしても、我の、邪魔をするか……創造神の尖兵共よ……』


 ………………え?


「し、喋ったあ!」


 思わず言ってしまう。

 いや、元から叫んではいたが、そういう面でも能力向上したってことか?

 まあ、邪神だし、それくらいのことはするか――と思った瞬間、邪神が距離を詰めて足を上げてくる。

 俺なんか勘単に蹴飛ばしそうな大きな足だ――違う。そうではないというか、本当に俺を蹴ろうとしていて、速度もこれまでで一番だ。

 障壁を利用して受け流し――嫌な予感。


「いかん! 避けろ!」


 カーくんが焦るように言うが、それよりも速く、本能に従って回避行動を取る。

 当たりはしなかったが――障壁が砕けた。

 それも呆気なく。簡単に。

 障壁が障壁ではないというか、僅かも妨げになっていなかったのだ。


「そうか………………良し。俺もアブさんを見習って回避に徹しよう」


「その言い方だと某が避けているだけのように聞こえるのだが! 攻撃もしているぞ!」


「確かに! アブさんの言う通りだ! 前言撤回――俺も当たると耐えられないだろうから、今後は避けることにしようと思う」


 これでいいか? と見れば、アブさんが頷く。

 大丈夫なようだ。

 となると、カーくんは?


「ふんっ!」


 気合を込める必要はありそうだが、邪神が俺の次にカーくんを狙って放った拳を受けとめていた。

 凄い――凄いと思うから……だから、俺とアブさんに向けてドヤ顔を浮かべて、筋肉を見せつけるような仕草をしないで欲しい。

 危ないから。

 何しろ、邪神は今四本腕なのだから。

 受けとめられていない三本の腕の拳がカーくんに向けて放たれる。


「うおっ!」


 驚きの声と共にカーくんが避けるが――邪神はそのまま乱打を行う。

 カーくんは受けとめずに回避し続ける。

 ……やはり、気合を込めないと受けとめるのは危険なのかもしれない。


『……今度は、人だけではなく……竜と……骸骨?』


 邪神がアブさんを見て頭を傾げる。

 なんでこんなのが? とか思っていそうだ。

 というか――。


「創造神の、尖兵? なんの話だ?」


 意味がわからない。

 俺はそうだが、カーくんには思い当たる節があるようだ。

 邪神と戦いながら教えてくれる。


「この世界を作った創造神と邪神の因縁の話だ。確か、邪神は元々この世界の神々の一柱であったが、快楽で多くの者を殺めたり、悪戯で世界規模の災害を起こしたらしく、そういったことが原因で創造神によって邪神へと堕とされたそうだ。本来ならそのまま消滅だったのだが運良くその場から逃げ出すことができた。しかし、逃げた先で、創造神が作り出したとされる神器(じんぎ)によって封印されて――今に至る。つまり、邪神にとっては、邪魔してくる者はすべて創造神の尖兵という認識なのだ」


「そうか。なんか妙な誤解があるような……」


 たとえそうだとしても、ここには自分の意思で来ているので、尖兵と言われても困る。

 まっ、別にそういうのはどうでもいいが……。


「カーくん、詳しいな」


「ああ、その辺りのことはラビンから聞いていた。そうは見えないだろうが、ラビンは我よりも長く生きているからな。色々と詳しいのだ。まあ、なんにしても、これを野放しにするということはこの世界の破滅を意味する。だから、倒す。それは変わらない」


 確かに、その通りだ。

 やることは何も変わらない。

 魔力を漲らせ、邪神への攻撃を始める。

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