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賢者巡礼  作者: ナハァト
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綺麗に抜けました

 邪神は未だ動いていない。

 いくら攻撃しても通じていないように見える。

 まあ、それでも多少は削れていると――意味はあると信じて攻撃する手はとめない。

 けれど、さすがにわかる。

 このままでは駄目だ、と。

 そういう雰囲気だ。

 どうしたものか……もちろん、邪神を倒すための策はある。

 そのための仕掛けを今の内にしておけば……いや、これも今は駄目だ。

 弱っていないと抵抗されるというのもそうだが、そもそも仕掛けをしたとしても、その範囲外に出られたら駄目なのだ。

 何より、邪神は山のように巨大である。

 一歩動くだけで範囲外に出てしまうのは明白である以上、弱らせて動きを制限するなどした状態でなければ無意味となってしまう。

 あと、こちらの狙いが見破られる可能性も………………あるだろうか?


「アルム」


 いやいや、相手は邪神。仮にも神だ。

 僅かな動きから見通す可能性は充分にある。

 やはりある程度弱らせてから一気に……いや、待てよ。今攻撃するのではなく拘束するような手段を取れば……でも、この巨体を拘束って……どうやって……。


「アルム!」


「え? は? カーくん。どうした?」


「どうしたも何も、気付いていないのか?」


 何が? と思うと、カーくんが邪神を指し示す。

 指し示されたまま俺は邪神を見ると――目が合った。

 思わず、攻撃の手がとまる。

 ……とりあえず、目でいいのだろうか?

 丸まっている邪神の顔と思われる部分が上がっていて、目と思われる二つの光が俺を見ているような気がする。

 なんというか、こう……顔のような部分に目の光が二つだけと、のっぺりとした顔だな、という印象。


「グワアアアアア……」


 口のような部分もできたかと思うと大口が開かれ、咆哮のような声が聞こえてくる。

 思わず耳を塞いでしまった。

 そいて、邪神が動き出す。

 丸まっていた状態から片腕を上げ、叩き付けるように振り下ろす。

 何を叩き付ける? ……俺だ。


「くっ」


 普通に居る状態では駄目だ。

 咄嗟の判断で背筋を伸ばして横に向く。

 上手く隙間に入り込めたようで、目の前を邪神の指が通過していった。

 危なかった。

 いや、邪神に攻撃をしていたのは俺だけではない。


「アブさん! カーくん!」


 声を出して様子を窺う。

 邪神は、煩わしいとでもいうように両腕を振り回し始め、アブさんとカーくんを払い落そうとする。

 アブさんは回避。いや、絶対に回避。一度でも受けてはいけない。

 何しろ、アブさんは全身骨だ。

 一度でも受けたらポキッと折れるのは間違いない。

 危険だからか、即死魔法の骸骨は居なくなっていた。

 いい判断である。

 カーくんは避けてはいるが受けとめてもいた。

 ただし、それで傷を負うようなことや叩き飛ばされる、あるいは叩き落とされるといったことにはなっていない。

 その場にどっしりと構え、受けてもビクともしていなかった。

 さすがは竜……いや、竜だからで纏めると他の竜もできるような感じになってしまう。

 実際に受けとめることができるのはカーくんだけ……いや、竜王であるシーさんなら……ぽーんと飛んでいきそうだな。

 さすがはカーくん、ということにしておこう。

 しかも、カーくんは受けとめたあとに反撃までしている。

 凄いぞ、カーくん。

 ついでに俺とアブさんも合わせて魔法を放っておく。

 そうすると、邪神の振り回す腕は再度俺とアブさんの方にくる。

 受けてはいけないアブさんは避けた。

 しかし、俺は避ける以外の選択肢を取る。

 真竜ノ杖と意思疎通。

 障壁を使用して邪神の腕を受け流し――。


「『【詠唱破棄】光の矢の雨ライト・アロー・レイン』」


 邪神だし、有効なのは光属性かな? と光属性魔法を放つ。

 百に届きそうな光り輝く矢を作り出し、一斉照射。

 邪神の受け流した腕の二の腕付近から肩にかけて光り輝く矢の雨が刺さる。


「………………」


「………………」


 うん。刺さっただけ。

 他にはこれといって特にない。

 邪神のもう一方の手が払えば、光り輝く矢はすべて飛んで消えていった。


「おい! アルム!」


 後方から怒声が届く。

 振り返れば、少し離れたところで黒い剣を持つ黒ローブと戦っているファイが見えた。


「今の、当たりそうになったぞ! 気を付けろ!」


 ……なるほど。

 受け流した邪神の腕がファイに当たりそうになっていたようだ。


「いや、ファイなら、それでもどうにか避けるだろ?」


「まあな!」


 それで意識が逸れたのか、振るわれた黒い剣にファイが斬られそうになった。

 上手く避けたが、今のは危なかったと思う。

 邪魔しないように気を付けよう。

 しかし、周囲の戦闘からそれなりに離れてはいるが、邪神が巨大過ぎるから攻撃範囲が思っている以上に広いようだ。

 ………………。

 ………………。

 まっ、いいか。

 ファイにしろ、ドレアにしろ、ニーグにしろ、「人類最強」にしろ、どうにかするだろ。

 それだけの強さを持っているのは間違いない。

 だからこそ、黒ローブたちの相手を任せたのだし。

 とりあえず、邪神に集中しよう。

 邪神に意識を向けると、邪神が新たな動きを取る。

 丸めていた足を伸ばして、立ち上がった。

 本格的に動き出すようだ。

 つまり、ここからが本番ということか。

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