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賢者巡礼  作者: ナハァト
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サイド 対黒ローブ 1

 邪神の封印を解くために必要なのは、決まった日時と道具である。

 日時は皆既日食。

 道具は封印に使用しれた四つの神器(じんぎ)

 場所はどこでもよかった。

 重要ではないのだ。

 とにかく、皆既日食の時に四つの神器を用いて封印を解いた場所に、邪神は現れる。

 だから、邪神の(しもべ)である黒ローブの四人は、各国が存在する大陸から北に進んだ先――少し離れた場所にある大きな無人島をその場とした。

 ここにはしたのには理由がある。

 封印解放を邪魔されないようにというのもあるが、黒ローブの四人――特に黒い杖を持つ者は竜山での出来事で大きく消耗してしまったため、その回復にも邪魔が入らないようにするためであった。

 そうして一切の邪魔が入ることなく――元々邪魔されはしなかったが――邪神は封印から解放され、あとは動き出すまで待つだけとなったが、そう思うように進まないのは世の常だろう。


「……何か飛んでくるね」


 黒い杖を持つ者がそう言い、自分たちの方――邪神近くの空中に向かって飛んでくるモノを見る。

 他の三人も同じように見た。

 それは、青い竜。

 それなりの速度で飛来し、黒ローブの四人と対峙するような位置でとまる。

 そこで黒ローブの四人は青い竜の背に人が乗っていることに気付く。

 青い竜は、乗っている者をここまで運ぶことが役目であった。


「おっ! 俺が一番乗りか! やったぜ! しかし、遠くからでもでっかいと思ったが、近付いてみるとほんとにでっかいな! これが邪神ってヤツか! 少しくらい突き刺したところで意味はなさそうだが……まっ、だったら滅多突き刺しにすればいいだけだな!」


 青い竜の背に乗る者は、邪神を見てそう言う。

 黒ローブの四人は、邪神を軽んじるような発言が気に食わない――不快だと剣呑な雰囲気を放つ。


「……なんだ、貴様は?」


 黒い剣を持つ者が問う。


「は? なんだも何も、この状況でわからないのか? お前らの敵に決まっているだろ」


 青い竜の背に乗る者は、好戦的な笑みを浮かべて答える。

 黒ローブの四人としては、この場に現れるのはアルム、それと竜山の時に現れた強い竜――カーくんだと思っていた。

 しかし、現れたのは見知らぬ者と竜であったため、何者だと尋ねたのである。


「そうか。敵か。確かに状況的に考えればそれしかない。だが、理解に苦しむな。殺されにくるようなモノだろう?」


「はっ! 俺を殺せるってか? できるモノならやってみろよ!」


 青い竜の背に乗る者が、その手に持っていた槍を構える。

 そこで、黒い杖を持つ者が思い出す。

 アフロディモン聖教国・聖都での出来事の際に居た――見かけたな、と。

 ただ、それだけ。

 アルムのように直接やり合った訳ではなく、名も知らない。

 だから、黒い杖を持つ者は何も言わなかった。

 その代わりという訳ではないが、反応したのは黒い剣を持つ者。


「腕に覚えがある、といったところか。まあ、ここまで来た訳だしな。なら、暇潰しの相手くらいにはなるだろう」


 そう言い、黒い剣を持つ者は他の三人を見る。

 その目は、こいつの相手は自分がする、と訴えていた。


「いいと思うよ」


「対応したのはお前だし、仕方ねえな。譲ってやるよ」


「好きにすれば」


 三人から了承が得られると、黒い剣を持つ者は黒い剣の先を向ける。

 相手をしてやろう、と。


「はっ! 一人じゃなくて、全員一斉でも俺は構わないぜ!」


 槍を構える青髪の男性――ファイは楽しそうに言う。

 ファイと黒い剣を持つ者との間に、一瞬即発の空気が満ちていく。

 一度動き出せば、あとはもうどちらかが動けなくなるまでとまらない。

 そんな空気が満ちて……弾け――。


「おーい! 間に合ったかあ?」


 なかった。

 一気に霧散する。

 新たな存在が現れたからだ。

 それは黄色の竜。

 青い竜の背にファイが乗っているように、黄色の竜の背にも同じように人が乗っていた。

 それは銀髪の男性――「王雷」のリーダーであるニーグ。

 黄色の竜は青い竜の横に並び、ファイとニーグの目が合う。


「間に合ったみたいだな。良かった良かった」


「はあ? 良くないだろ。全然良くない。折角俺が一人で全員やっつけようとしていたのに」


「いやいや、なんで一人でやろうとしてんのよ。顔合わせもして、一緒に鍛えて、こいつらを皆で倒そうってことで話は纏まっていただろ?」


 ニーグの話は真実である。

 黒ローブの四人は、邪神と戦うとなった際に居れば邪魔をしてくるのは間違いない。

 なら先に倒しておくべきだが、戦いとなれば勝敗に関わらず消耗してしまう。

 邪神と戦うというのなら万全の状態で戦うに越したことはない。

 そのため、邪魔となる黒ローブの四人の相手をしてもらおうと、対抗できる者を集めて、皆既日食までの間鍛えたのだ。

 その時に、ファイとニーグは出会った。

 ついでに言うなら、鍛えることを一番喜んだのはファイである。

 何しろ、アルムだけではなく、そこにはカーくんも居たから。


「そうだな。確かにそういう話だった。それは間違いない。だが、俺は一番に着いて他は誰も居なかった。なら、俺が纏めて相手していてもおかしくないだろ?」


「なんというか、ファイはアレだな。なんか騎士ってよりは冒険者っぽいな」


「騎士っぽくないのは俺が一番理解している。というか、それはどうでもいいだろ。今はあいつらだ。ニーグが来たから俺一人じゃなくなったが、他のが来る前に倒してしまったら、そのまま俺が次とやってもいいよな?」


「それは……いいんじゃないか。なら、俺もそれでいこう」


 ファイとニーグの間で話が纏まる。


「それじゃあ、見たところ、ファイの相手は剣を持っているヤツか。なら、俺の相手は誰がしてくれるんだ?」


 ニーグが問うと、黒ローブの四人の中から黒い靴を履いた者が消え、ニーグの直ぐ側に現れて蹴りを放つが、ニーグはなんでもないように腕で受けとめて防ぐ。

 黒い靴を履いた者はニーグが反応したことに少しだけ驚いたような雰囲気を出すが、直ぐに霧散して愉快そうな雰囲気を出す。


「私が相手してやるよ」


「そうか。よろしく」


 戦いが始まる。

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