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賢者巡礼  作者: ナハァト
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それはとても綺麗な回転でした

 翌日。昨日のファイとの模擬戦の中で、リミタリー帝国はアフロディモン聖教国の代表者と共に来たそうで、それがルーベリー教皇であることを教えられた。

 ただ、アブさんの気配を感じ取れるとあって接触を避けていたために、顔見知り程度で関係性が終わっているのである。

 なので、特に会う気はない。

 ふ~ん――という感じで終わった。

 さて、今日はどうしようかな、と考えながら宿屋の食堂で朝食――焼き立てパンにバター、サラダ、カリカリに焼けたベーコン、目玉焼きを乗せたモノを食べていると、メイドさん(美人)がメイド長さん(目力が強い)と共に現れ――。


「お知らせがございます。先ほどフォーマンス王国より代表者――テレイル・フォーマンス王が到着されました」


 と教えてくれたあと――。


「もう一つ。代表者さまたちはほぼ揃いましたので、早ければ明日には会談が行われます。そのため、メイド長の命により、私は本日会談のための準備を行わないといけません」


「は、はあ。頑張ってください」


「ありがとうございます。ですので、本日の案内は行えません。テレイル・フォーマンス王は王城の方に居られますので、話は既に通しております。いつでもご自由にお越しください」


「わかった」


 頷きを返すと、メイドさん(美人)はメイド長さん(目力が強い)と共に宿屋を出ていった。

 それは別に構わないのだが、メイドさん(美人)の手首を縛り、腰に回した紐でメイド長さん(目力が強い)が無理矢理連行していく姿は……どうなのだろうか。

 なんてことを思っていると、丁度食堂の窓から見えた。

 突然メイドさん(美人)が前に飛び出すように駆け出し、メイド長さん(目力が強い)が逃がさないと腰紐を引っ張る――が、それは予測された動きです、と言わんばかりにメイドさん(美人)は自ら後方へと飛びながら、体を回転させて腰紐を一気に巻き取った。

 メイド長さん(目力が強い)の手から腰紐が抜けると、メイドさん(美人)は着地と同時に駆け出し、宿屋の入口から顔を出して俺を見る。


「約束を! や、約束をお忘れな」


 メイドさん(美人)は最後まで言えなかった。

 後方から首に腕を回されて絞められ、そのまま意識を刈り取られたのである。

 どこか慣れた動作でそれをやったのはメイド長さん(目力が強い)。

 メイド長さん(目力が強い)は意識を失ったメイドさん(美人)を肩に担いで王城へと戻っていった。


「……あのメイド、やはりできますね」


 いつの間にか現れた母さんが、そう呟いた。

 何ができるのか、俺にはわからない。


     ―――


 母さんとリノファの朝食が終わると、早速王城へと向かう。

 出迎えてくれたのは、メイドさん(美人)からお願いされたという、メイドさん(胸が大きい……本当に大きい)と執事さん(好青年)。

 メイドさん(美人)が歯を食いしばりながらお願いしたのだろうか……いや、結婚相談所の件があるから、仲直り……は違うか。とりあえず、わだかまりのようなモノはなかったはずだ。そう思っておくことにした。

 案内される中で、メイドさん(巨……爆……)と執事さん(好青年)から今度結婚式を行うと、嬉しそうに教えてくれた。

 お幸せに――と祝福しておく。

 ……母さん。生きている内に孫の顔が見たい、と言われても、そもそも俺には相手が居ないから。それに、その前に邪神をどうこうしないと、ね。ほら……。

 妙な圧力を母さんから感じつつ、着いたのはこれまでと同じく豪華で大きな部屋だった。

 そこでフォーマンス王国の王である黒髪の男性――テレイルが笑顔で出迎えてくれる。


「久し振りだね、リノファ。一目見てわかるくらい内から溢れ出る強さというモノを感じることができるよ」


「ありがとうございます。テレイル兄さまも、心身共に逞しさのようなモノが感じられます。国政ばかりではなく、かなり鍛えられたようですね」


「ゼブライエン辺境伯とシュライク男爵がね。体を鍛えておいて損はないと」


「それは、確かに必要ですね」


 想像できるのか、楽しそうにリノファが答える。

 いや、嬉しそうなのはテレイルもか。

 考えてみれば、テレイルが言ったように久し振りに会うのだ。

 互いに無事な姿を見れて、嬉しさが隠し切れない――いや、隠す必要はどこにもないな。


「アルムも、久し振りだね。それとも、義弟と呼ぶべきかな?」


「いや、それ確か双子ってことで話がついただろ! そっちがその気なら、どっちが兄かハッキリと決まるまでやるか? 俺は負ける気はないぞ」


「それは、こちらの台詞だよ」


 そう言いながら、テレイルと握手を交わす。

 リノファが口にしたように、逞しさを感じることができる。

 ちなみに、義兄弟については母さんも知っている話なので、それに反応するかと思っていたのだが、母さんはテレイルと共に来ている執事やメイドたちを厳しい目で品定めしていた。

 その姿はメイドとしてではなく、まるで息子に相応しい者たちであるかどうかを確認する母親のように――。


「……ふうむ。最低限のメイド(りょく)、執事(りょく)はあるようですね。一先ず合格としましょう」


 いや、やっぱりメイドとして、かもしれない。

 とにかく、久し振りということもあって、母さん、リノファ、テレイルと共に、このままのんびりと過ごした。

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