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賢者巡礼  作者: ナハァト
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調節は大事です

 竜の送迎によって、各国の代表者が続々と集まってくる。

 ミドナカル王国の王都は大盛り上がりだ。

 何しろ、各国の代表者は王さまが多い――というのは関係なく……いや、それだと問題があるかもしれない。


「蔑ろにしているような悪印象になりますので、控えた方がよろしいかと」


 確実な結婚相談所に連れて行くと約束を交わしてからすっかり大人しくなった、ミドナカル王国に滞在中限定での専属メイドさん(美人)が、そう指摘してくる。

 だよな。俺もそう思ったので、滅多にお目にかかれない他国の王さまたちが多くて華やかだから、というのも一因として関係している、と訂正しておく。

 ただ、それよりも大騒ぎになっているのは、竜による送迎の部分だ。

 まずあり得ないことに何事かと当初は大騒ぎの方であったが、そこはキンが上手く治めて、竜たちが攻めに来た訳ではない――見ている分には安全だとわかった今は一種の名物として大盛り上がりになっている、という感じとなっていた。

 竜の送迎は今回だけの特別なのだが……まあ、いいか。

 それに、竜たちも王都内が大騒ぎの頃は大人しかったのだが、大盛り上がりの今はミドナカル王国の王都の上空を意味もなく飛んで旋回するとか、自らの力強い肉体を見せつけるような姿勢を取ったり、緑竜と青竜が言葉巧みに人を笑わせたり……いや、これに関しては基本静かなのだが必ずといっていいほど一人爆笑しているのが居て、緑竜と青竜の機嫌は悪くない――と色々と精力的に活動している。

 まあ、下手に攻撃とかされても困るので別に構わないが……。

 カーくんとシーさんは送迎に参加していない。

 竜の代表としてくるからだ。

 なので、送迎をしている竜たちを纏めているのはデーさんとホーさんである。

 竜王以上に誰も逆らわないので安心だ。

 俺が何かを言う必要もない。

 その結果――ミドナカル王国の王都に居ても特にやることはなかった。

 なので、集まった代表者たちの中には顔見知りも居るので会いに行くことにした。


     ―――


 一応調節しているが、代表者たちが揃うまで二、三日かかる。

 色々と調節した結果らしい。

 また、滞在場所もバラバラである。

 一か所に纏めるのは防衛の面ではやりやすくなるかもしれないが、そこが落とされると終わりという一面もあるため、無難にバラバラとしたそうだ。


「いいえ、違います。下手に一緒にしてしまいますと、ガチの喧嘩を始めてしまうくらい仲の悪いところもありますので、その対策です」


 メイドさん(美人)がそう訂正してくる。

 そっちが主な理由のようだ。

 ただ、一応バラバラといっても分けられている部分はあった。

 簡単に言えば、大国は王城内に場所が用意されていて、それ以外は高級宿といった感じである。

 そして、俺が会いに行こうとしているのは大国に数えられているため、王城に向かう。

 王城内の宿泊場所については、この国の宰相のライムさんが取り仕切って、高級宿にも負けない品質のモノを用意したそうだ。

 もちろん、事前に会えるかどうかはメイドさん(美人)にお願いして確認を取ってもらっているので問題ない。

 メイドさん(美人)の案内で着いたのは、兵士が守る大きな扉の前。

 事前に話は通していたので特に問題なく中に入ることができた。

 とりあえず、断られずに会えるということは、相手も俺を覚えていたということだから、それは嬉しい。

 ……まあ、直近でのことを踏まえると、俺のこともついでに思い出した、というのが正しいかもしれないが。

 中に入ると、広い室内の中にある高そうなソファーに腰を下ろしている、赤い髪に精悍な顔立ちの、三十代後半くらいの男性――冒険者の国・トゥーラの王さまである、クラウさんがこちらを見ていた。

 クラウさんが片手を上げる。


「おう! 久し振りだな、アルム! まあ、座ってくれ!」


 そう声をかけてきて、対面にあるソファーを指し示す。

 対面のソファーに座ろうとして、もう一人知り合いが居ることに気付く。

 冒険者の国・トゥーラに居た時に少しだけお世話になった、クールなメイドさんだ。

 どうも、と少し頭を下げておく。

 クールなメイドさんも少しだけ頭を下げる。


「……なるほど。彼女が居たから私になびかなかったのですね」


 メイドさん(美人)がそう呟くのが聞こえた。

 いや、それは違う。

 クラウさんの対面のソファーに座ると、クラウさんは間にあるテーブルの上に置かれている小さな箱に魔力を流す。

 すると、小さな結界のようなモノが作り出され、俺とクラウさんだけがその内部に居る。


「これは?」


「ん? 知らないか? 魔道具だ。これで、この中での会話は外に漏れないようになっている」


「なるほど」


 そんなのがあるのか。

 これまでなかったが……まあ、各国の代表者たちが集まるとなれば漏らせない話もあるだろうし、当然と言えば当然か。


「それにしても、本当に久し振りだな。元気なのは見ればわかるし、話したいことは色々とあるが……その前に一つ聞いていいか?」


「何か?」


「この国からの通達が届く前に『絶対的な死(アブソリュート・デス)』殿が来てダンジョンをいじると言っていたが、今回の件と関係があるのか?」


「あれ? アブさんから何も聞いていない?」


「直ぐダンジョンの方に行ってしまったからな。聞く暇がなかった」


「そうか。まあ、関係ある」


「サラッと断言してきたな……しかし、そうか。関係あるのか……それ、今聞いてもいいことか?」


「……まあ、早いか遅いかの違いでしかないし、別に話してもいいが、時間あるのか?」


「ああ、大丈夫だ。聞けるのなら聞いておきたい」


「わかった」


 クラウさんに説明する。

 聞き終えると、クラウさんは天を仰いだ。

 天井には模様が描かれているので、それを確認することで一旦現実逃避しているのかもしれない。

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