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賢者巡礼  作者: ナハァト
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知らなければ聞けばいいだけ

 リノファが授けられたというスキルについて教えられる前に、テレイルに念押しされる。


「これから教えることに関しては、秘密にしておいて欲しい。少なくとも、現時点で知っている者は限られているし、容易に外に漏れていい話ではない」


「そんなにか?」


「そんなに、だよ」


 かなり重要な話のようだ。

 思わず姿勢をただしてしまう。

 話はテレイルだけではなく、リノファも交えてだった。

 リノファ自身のことだし、テレイルだけがそう思っていることではないという証明も兼ねているのだろう。

 その話の内容だが、リノファが授けられたスキルの構成について、だった。

 スキルを授かる時、大多数の人は一つだけだが、稀に二つ以上授かる人も居る。

 リノファは稀の部類で、授かったのは三つのスキル。

 ――「聖属性」。「慈愛」。「神託」。の三つ。


「聖属性」は、魔法属性の一つ。

 以前、無のグラノさんが言っていた。

 基本となるのは七系統だが、細かく細分化すれば属性は他にもある、と。

 そんな属性の一つで、七系統と同じくらい有名な属性だろう。

 その効果は傷や状態異常回復に強い効果を発揮――特化していて、死人アンデッド死霊ゴーストにも効果的な系統。


「慈愛」は、回復魔法をかけた時にその効果を高めるとされていて、その人の心の性質を表しているとされている。


 ……「聖属性」と「慈愛」は、無のグラノさんたち――スケルトンからすると天敵ではないだろうか? と思った。


「神託」は、神からのお告げを授かる時がある――つまり、神の声を聞くことができるとされているが……本当かどうかは定かではない。

 実際、リノファは一度も聞いたことがないそうだ。


 ここで重要なのは、秘密に関わっているのは三つのスキルのどれかではなく、この三つが揃っているということである。

 俺は知らなかったが、テレイルとリノファによると、過去……それもかなり大昔に、まったく同じスキル構成で、今も伝えられているほどに有名な人が居た。

 それは――「聖女」。

 今も続く、この世界でもっとも歴史のある国――ウォード聖教国の建国に関わっていることが伝えられていて、今も崇拝されている存在だそうで、もしリノファのスキル構成を知れば、「聖女」の再来と認定してくる可能性が高い。

 それが危険なのだそうだ。


「なるほど……わからん」


 素直にそう言うと教えてくれる。

 わからなければ聞けばいいのだ。


 危険は既に起こっていた。

 呪い、である。

 リノファがウォード聖教国から「聖女」の再来だと認定された場合、リノファのバックにはウォード聖教国が付くということで、「スキル至上主義」に反対している立場から、ウォード聖教国もその立場を取り、場合によっては介入してくるかもしれない。

 フォーマンス王国よりもウォード聖教国の方が国力が上であるため、介入されると対処ができないのだ。

 そうなることを危惧して知られる前に――というのが呪われた理由である。

 その経験から、リノファは「聖女」の再来として祭り上げられるにしても自分を通せるだけの強い意思を、呪いに限らずに悪意というモノを払い除けられるだけの力を、強く欲し始めた。


「つまり、相談と言うのは、肉体的にも精神的に成長したい。鍛えて欲しいってことか?」


「まあ、わかりやすく言えばそうだね。あとは」


「『聖属性』の力を使いこなせるようになれば、それだけ多くの人を助けることもできると思うのです」


 テレイルが肯定し、リノファが補足してきた。

 正直言って、それを俺に求められても困る。

「聖属性」なんてわからないし、それこそ件のウォード聖教国の方がわかっていそうだから、そっちで学ぶ……では意味がないのだろう。

 それこそ、付け入る隙を与えるようなモノか。

 しかし、俺自身もまだまだで、鍛えている最中なのだが……。

 でも、二人から――特にリノファから強い意思のようなモノを感じ取ることはできる。

 それこそ、力になってやりたいと思うが………………仕方ない。


「少し時間をくれないか?」


「というと?」


「正直に言えば、俺の魔法に関する知識は基本的なモノと、火属性に特化している」


 今は、だけど。


「だから、『聖属性』に関しては、ほぼ何もわからないと言っていい。けれど、もしかしたら、といった程度だが、知っていそうな人に心当たりがある」


 正確には誰も人ではないが。

 無のグラノさんたちなら、あるいは――。

 もしくは、ラビンさんかな。

 カーくんは……いや、ないとは言い切れないか。


「協力してくれるかは聞いてみないとわからないが、何かしらの情報は得られると思う。あっ、ウォード聖教国とは関係ない……かどうかはわからないけど、リノファのことを教えても秘密にして欲しいと言えば大丈夫だが、聞いてみても構わないか?」


「アルムが信用しているのなら、是非にでも」


 テレイルが答え、リノファが同意するように頷く。

 よし。それじゃ、一回戻りますか。

 フォーマンス王国の件が無事に片付いたことも報告したいしな。


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