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賢者巡礼  作者: ナハァト
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出るまでもない

 ミドナカル王国の王都が見えてきたので地上に下りる。

 俺だけなら問題ないが、さすがにデーさんとホーさんを竜の姿のままで向かわせると、要らぬ騒動が起きるのはわかりきっているからだ。

 なので、途中から徒歩。

 人の姿となったデーさんとホーさんを歩かせることになるが、これで要らぬ騒動を避けられるなら、と了承してくれた。

 そう思っていたのに……何が悪かったのだろうか。

 竜は大きいので、ミドナカル王国の王都から少しばかり離れた位置に下りたのが駄目だったのかもしれない。

 いや、これは見方によってはいいことではあるのだが……なんか騒がしいな、と思って様子を見に行った結果が――。


「ああ? おいおい、また獲物が現れたぜ!」


「暢気に現れて……て、極上の女を二人も連れているじゃねえか! 置いていけば、命だけは助けてやってもいいぜ!」


「いいや、殺してしまった方が早い! まあ、女の方は楽しませてもらうから、生かしてやるけどな!」


 盗賊たちと出会った。

 ちなみに、馬車を襲っている最中で、馬車の護衛だろう冒険者たちが戦っているが……盗賊たちの人数が多く、少し押されているような感じだろうか。

 俺は大きく息を吐いた。

 背後から戦意の高まりを感じたからだ。二人分。

 嫌いなんだろうな。ああいうのが。

 デーさんとホーさんが俺より前に出るというか、そのまま盗賊たちに向かって歩いていく。


「……お気を付けて~」


 必要ないだろうけど、一応言っておいた。

 そのあと行われたことは、まあなんてことはない蹂躙だ。

 いくらデーさんとホーさんが人の姿になっているとはいえ、盗賊たちではどうしようもない。

 盗賊たちの悲鳴が周囲に響いた。


「あ、はぁ~ん!」


 盗賊たちの中で一人、変な悲鳴? を上げていたが気にしたら負けた気分になりそうだったので考えないことにしたのだが、その盗賊を叩いたホーさんは非常に嫌そうな表情浮かべていたのが印象的だった。

 ちなみに、俺の出番はなかったが……まあ、いいか。


     ―――


 盗賊たちから助けた形となった馬車の持ち主は「ジネス商店」だった。

 どこかで聞いた名だな、と思っていたら思い出す。

 アレだ。エチーゴ商店に嵌められて、キンが助けた商店だ。

 店主のジネスさんも居る……多分。

 顔がうろ覚えだが、そう名乗っているので間違いないだろう。

 ただ、エチーゴ商会との件については俺が一方的に知っているというか関わっただけで、ジネス商店側は俺について知らないだろうし、ましてやキンと関わりがあることも知らないだろう。

 なので、ここで迂闊なことは口にしない。

 王都に戻っているところで盗賊たちに襲われたようで、こちらも王都に向かうところだったことを話すと、助けたお礼として馬車に乗せてもらえることになった。

 これで楽ができる。

 蹂躙された盗賊たちに関しては一応生きている……ボロボロなのは間違いないが。

 デーさんとホーさんが手加減した結果だが、実際はわざわざ殺すつもりで攻撃する価値すらない、である。

 面倒なので、盗賊たちの扱いはジネス商店の方に任せた。

 そうして、王都まで直ぐに辿り着く。


「セントールにようこそ!」


 王都の巨大な門を守る兵士が敬礼しながらそう口にした。

 妙に張り切っている。

 その目はデーさんとホーさんに向けられていた。

 美人だし、いいところを見せたいのだろう……いや、待てよ。今気付いたけれど、俺は冒険者ギルドカードがあるけれど、デーさんとホーさんはどうしようか?

 ……賄賂でいけるだろうか?

 そう考えている間に、デーさんとホーさんは冒険者ギルドカードを兵士に提出していた。


「……持っていたのか?」


「まあ、常にあの町で居る訳ではないからな。外に出たことがあるのは大抵作っている」


 デーさんがそう教えてくれた。

 思っている以上に、竜たちは外に出ているのかもしれない。

 でもまあ、そのおかげで特にとめられることもなく、王都の中へと入ることができた。

 ジネス商店とその護衛の人たちとは、王都に入ると同時に別れる。

 ……さて、これからどうしよう。

 といっても、先に宿を取るか、先に城に向かうかの二つなんだが……城に行ったとして、キンさんと直ぐ会えるとは限らないし、先に宿の方でいいか。

 デーさんとホーさんに確認を取り、それで構わないというか俺に任せるそうだ。

 なので、前回も利用した――王都内で一番ではないだろうが、そこそこ大きく、賑わっている宿屋に向かう。

 その途中で運良くキンにでも出くわさないかな? そうすれば話が早いのに、と思っていたが……そう都合良くはいかないようだ。

 キンとは出会えず、目的の宿屋に着く。

 中に入って宿泊の予約を取ろうとしたが、女将が居なかった。

 食堂の方かな? と思うと――。


「また逃げてきたのかい?」


「いやいや、女将。これは別に逃げてきた訳じゃないから。書類の山が面倒になったとかではなくて、こう……アレだよ、アレ、アレ……そう! 今日ここに来ないといけない気がしたんだって! ……気分転換に、何かない?」


「そうそう何かはありませんよ、キンさん」


「そうだよな。そうそう何かは起こらないよな」


 そんな会話が聞こえてきた。

 どうやら運良く出会えるようだ。

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