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賢者巡礼  作者: ナハァト
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楽しみ方はそれぞれです

 宿泊(デーさんと)場所(ホーさんの家)は竜サイズではなく人サイズである。

 なので、カーくんも人の姿――黒と白が混ざった短髪で、格闘着を着た、筋骨隆々の男性となった。

 その姿をジッと見る。


「……ん? どうした、アルム? はっ! 漸く筋肉の魅力に気付いたか!」


 むんっ! と筋肉を見せるようなポーズを取るカーくん。


「いや、竜だと大体似たり寄ったりに見えるけれど、こうして人の姿を見ると、より確かに似ているな、と。人の姿となったデーさんとホーさんの目元がそっくりというか、姉弟だって思う」


「……そ、そうか? ……そうなのか?」


 わからない、と首を傾げるカーくん。

 まあ、こういうのは当事者はわからないモノなのかもしれない。

 そうして宿泊(デーさんと)場所(ホーさんの家)着いた早々デーさんとホーさんが出迎えてくれたが、今日は色々あったというか、デーさんとホーさんは見た目以上に疲労している――とカーくんが気付いた。


「姉上たち、やはり相当消耗していないか? 姉上たちがダメージを負うような、かなり激しい戦闘だったのだろう? 今日はもう寝た方がいいと、我は思うのだが?」


「……そうだな。そうするか」


「カオスの言う通りですね。すみませんが、本日はもう休ませてもらいます」


 では、とデーさんとホーさんが自室へと向かう。

 さすがはカーくんというか、姉弟の絆みたいなモノを見せられた気分だ。


「良し。これで邪魔者は居なくなった。アルムよ。これから、この町の夜の遊び方を教えてやろう」


 なんというか悪い顔――いや、どちらかと言えば締まりのない顔だろうか、そんな顔になるカーくん。竜の時だとわからないかもしれないが、人の時だとよくわかる。

 先ほど感じられた姉弟の絆はどこにいったんだ?

 それと、なんか背後から圧力を感じる。

 真竜ノ杖が抗議しているというか、睨まれているような気がした。

 どうしたものか……あっ。


「どうせならシルバーも誘うか。我は滅多に帰らないからな。そういう意味ではシルバーの方が詳しいだろうし、きっといい店を知って」


「カ、カーくん」


「ん? どうした? ああ、心配要らんぞ。きちんと人でも楽しめるはずだ」


「いや、そうじゃなくて、うしろ」


「うしろ?」


 カーくんが振り返って確認する。

 拳を握るデーさんと、怖い笑みを浮かべるホーさんが居た。


「あ、姉上たち! いつからそこに!」


「邪魔者は居なくなったってところだな」


「最初から!」


「友達に妙な遊びを教えるのは感心しませんよ、カオス。少し、お話し合いが必要かしら?」


「い、いいい、いいえ! 滅相もありません! あ~、急に眠くなってきたな。では、寝ます。おやすみなさい」


 今日は、このまま大人しく休むことになった。


「竜王にあとで言っておかないといけませんね」


 シーさんにも飛び火した。


     ―――


 カーくんの部屋で寝る。

 カーくんも居るのだが、ベッドは俺で、カーくんは毛布に包まって床の上だ。

 それはさすがにと思ったが、竜だから平気と押し切られた。

 そうして、そろそろ意識が沈んで眠りそ――。


「思い出したっ!」


 カーくんのそんな声で、少しだけ意識が浮上する。


「ん~……何が?」


「思い出したのだ、アルムよ。ここに来たら姉上がやられそうだったから、今まですっかりと忘れていたのだ」


「だから……何を?」


 あっ、意識が沈んで……い……。


「ラビンからの伝言だ」


「詳しく」


 覚醒した。

 聞いてみると、どうやらラビンさんはこの状況――神剣が奪われて向こうに神器が揃った場合の今後についても既に考えていたようだ。

 まあ、可能な限りというか、想定できるありとあらゆる状況を考えておいた方がいいのは、当然といえば当然かもしれない。そうすれば、事後でも取れる手段を増やせるかもしれないのだから。

 ともかく、ラビンさんによると、この状況になったのなら仕方ない。気にする必要はない。失敗したと悔やむ必要はない、と。

 そして、黒ローブたちは何がなんでも邪神を封印から解放しようとしてくるだろうから、こちらはその先――邪神を倒すことを前提にして今後行動していく、という提案だった。


「……倒せるのか?」


「実際にやってみないことにはなんとも言えんが、ラビンが言うには絶好の機会ではあるそうだ。その要となっているのは、アルム。お前だ」


「俺が?」


「うむ。今のアルムの魔力なら、勝てる可能性があるとラビンは考えている」


 ラビンさんがそう考えているのなら間違ってはいないと思うけれど……勝てるだろうか?

 まあ、カーくんの言う通り、実際にやってみないとわからないのは間違いないが。

 しかし、懸念がない訳ではなかった。

 それは、邪神が復活すると、どこかではなく、どこでも襲撃が起こるということ。

 これは予測ではなく経験。

 以前がそうだったのだ。

 大陸各地――特に大きな国で、魔物大発生(スタンピード)が起こったのだ。

 これは当時の経験者である無のグラノさんの記憶にもあったので間違いない。

 なので、まずは今の内に各国の代表を集めて状況を説明し、協力してことを進めていくべき――というのがラビンさんのオススメである。

 俺もそうした方がいいと思う。

 集める場所は、ミドナカル王国がいいそうだ。

 中立国であるし、何より大陸の中心地的な位置にあって集まりやすいので、このことをミドナカル王国の王さま――つまりキンに伝えれば、上手くやってくれるだろう、と。

 なるほど。なら、キンに任せよう。

 キンに話を通しにいかないとな、と思っている間に眠っていた。


     ―――


 翌日。デーさんとホーさんにラビンさんの考えを話すと――。


「なるほど。確かに、そういうのは倒しちまった方が、後々面倒がなくていいな」


「私も賛成です。では、私も付いて行くことにします」


「どこに?」


「その伝えに行くという王さまのところに、共に行きます。世界規模であるのなら私たちにも関わってきますから、協力します」


 デーさんとホーさんから有無を言わせないという圧力を感じる。

 ホーさんだけではなくデーさんも付いてくるようだ。

 いいのだろうか? とカーくんを見る。

 我が何か言えるとでも? という感じの顔だった。

 うん。なんか、ごめん。

 という訳で連れて行くことになりそうだが、キンなら……まあ、大丈夫か。きっと。

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