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賢者巡礼  作者: ナハァト
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 竜杖が真竜ノ杖となった。

 見た目は特に変わっていない。


「………………」


 そう思うと、真竜ノ杖の装飾の竜が何やら言いたげに俺を見ている……気がする。

 ジト目になっているように見えなくもない。

 ………………間違えた。

 見た目は美しくなった。これが大事。

 その通り、と真竜ノ杖は頷くような動きを見せる。

 ………………。

 ………………。

 ええ! 明らかに勝手に動いている!

 いや、え? 動くの? 勝手に動ける杖になったの?

 ……まあ、実際目の前で浮遊したまま動いている訳だし……そういうことなのだろう。

 ただ、これは……杖を持たなくてもいいということなのだろうか?

 どうなんだろう……試してみないとわからないな、と思っていると、カーくんが声をかけてくる。


「ほう。ラビンの作った杖が、相当強力な杖となったようだな」


 カーくんからすると、確認のために詳しく見ようとしたのだろう。

 真竜ノ杖を掴もうとして――真竜ノ杖は逃れるようにくるりと回り、掴もうとしてきた手? 前足? をバシンと叩き、俺の背後へと隠れるように移動する。

 これまでにも時々あった、そういう風に見えたという訳ではない。

 確実に動いたのだ。

 まるで、意思があるかのように……いや、あるんだろうな、きっと。

 そう思っていると、ホーさんがカーくんへと声をかける。


「カオス。人様の物を断りもなく勝手に手に取ろうとするのはいただけませんね」


 そう言う表情はニッコリとしているのだが怖い。

 そんなホーさんのうしろにはデーさんが居て、ホーさんの意見に同意するように頷き――。


「ましてや、その杖は女性のような雰囲気がある。それを何も考えずに無遠慮に掴もうとするとは……そんな無粋な竜に育てた覚えはないぞ!」


 そう口にすると、今度はホーさんが同意するように頷く。

 ホーさんとデーさんによる、カーくんへの説教――いや、説教というよりは女性への気遣い方みたいなモノが始まった。

 いやいや、さすがにそれは――と思うのだが、俺以外の反応は「あっ、いつものですね」という感じで受け入れているので大丈夫そうだ。

 カーくんが助けてくれ、と竜王であるシーさんを見るが、シーさんは竜たちに「いやあ、疲れたな。皆、よく頑張った。でもまあ、ほら、いざという時は頼れる竜王が居たから安心だっただろ? な? あっ、怪我竜の手当ても忘れないように。ほら、竜王が居て良かった」となんか自分が竜王であることを強調するように話し回っていた。

 竜王として、この場での戦闘は終わったと、竜たちを落ち着かせようとしているのかもしれない――のだが、俺から見ると、カーくんが助けを求めていることには気付いていませんよ、と周囲に示しているように見えるのだが……きっと気のせいだよな?


「……アルムゥ」


 だからといって、俺に助けを求められても困る。

 それに、真竜ノ杖からはカーくんの自業自得でその扱いは当然だ、という雰囲気が漂っていた。

 なので、俺は助けられない――というか、なんだろう……カーくんがデーさんとホーさんに頭が上がらないように、俺は真竜ノ杖に頭が上がらないような……そんな気がする。

 ――そんなことありません、と真竜ノ杖が言っているような気もした。

 あはは。そうだといいな。

 そんなことを思いながら、真竜ノ杖について少し調べてみる。

 外見は変わらな――美しくなったが、能力的なモノはどうなのだろうか?

 ………………。

 ………………。

 なんとなくだが、魔法が発動しやすくなっている気がする。

 無詠唱はどうかわからないが、少なくとも詠唱破棄で魔法名だけでも、これまでと同じように魔法を放てそうだ。

 それだけ制御力も向上している。

 飛行については――なんか真竜ノ杖に乗らなくてもよくなった。

 真竜ノ杖と離れ過ぎると駄目だが、少なくとも俺の周囲に真竜ノ杖が浮遊していれば、そのまま飛行ができる。

 思った方にも進めて動けるし、これで両手が使えるようになったのだから、便利になったのは間違いない。

 また、神杖と同じように障壁を張れるようになっていた。

 強度は……同じくらい? と思ったのだが、真竜ノ杖の装飾の竜が睨むように俺を見ていたので、真竜ノ杖の障壁の方が強度は上だと思われる。

 真竜ノ杖が上下に動く。頷いたのだろう。

 他にもあるかもしれないが、今のところわかったのはこれくらいだ。

 その頃にはカーくんも解放されて自由の身。

 だから、だろうか――。


「……ところで、アルムよ。ラビンのところからここに直行したのだが、戦場となったのはここだけなのか? 町の方は大丈夫か?」


 カーくんが不思議そうに尋ねてきた。


「「「………………あっ!」」」


 大急ぎで竜の町へと戻る。

 竜の町の方にはまだ魔物たちが残っていたのだが……まあ、言ってしまえばこっちは竜たちにとって主力なので、力と数によってあっという間に魔物たちは滅ぼされて――そこで漸くこの場での戦いは終わった。

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