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賢者巡礼  作者: ナハァト
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ふと、思った

 球体魔法陣が破壊された。

 それを行った巨大な黒い手は、そのままシーさんに襲いかかろうとするが、その前に消え去る。

 シュッ――と。

 どこかに移動したとかではない。

 どうやら元からそこまで長く続くようなモノではなかったようだ。

 巨大な魔法陣は消え、残るは大きく疲労している神杖を持つ黒ローブと、多少は疲労している神盾を持つ黒ローブと神靴を履く黒ローブ。

 ――確かに、球体魔法陣は破壊された。

 つまり、神剣が火口内にその姿を見せていて、神杖、神盾、神靴をそれぞれ別の者が持っている以上、神剣もこの場に居る三人の黒ローブとは別の黒ローブが持つ可能性が高い。

 ということは、神剣が姿を現わすのを待ち構えていて、現れた瞬間に手に取ろうとするだろうから、その場に(味方)が居る可能性は――デーさん、ホーさん、シーさんからの口振りから考えると低い。そこに神剣が現れると、位置を知らせるようなモノだし。

 だから、神剣は奪われたと考えるべきだ。

 邪神の一部を出現させていたが、完全に封印から解き放つために必要な神杖、神盾、神靴、神剣の四つ――神器とでもいうべきモノがすべて相手側の手に渡ったというになる。

 けれど、諦めるのはまだ早い。

 封印解放時期ではないというのもあるが、四つの内の三つが目の前にあるのだ。

 そのうちのどれか一つだけでも奪い取ればいいだけの話。

 邪神の手だという巨大な黒い手が消えた以上、邪魔になるモノはない。

 再度、魔法を展開。

 火球、水球、風球、土球と――属性魔法球を合計で三桁分は作り出す。

 黒ローブたちに動揺が走ったように見えた。

 出し惜しみはなしだ。

 それに、思ってみれば空中なら――地形の変化を気にしなくてもいい。

 威力を上げるために、属性魔法球すべてにさらに魔力を注いで一回り大きくした。

 黒ローブたちは、いやいや、それはないだろ、と首を左右に振って逃げ出そうとする。


「――逃がすかよ!」


 一斉に放つ。

 属性魔法球が黒ローブたちのあとを追い、俺も続く。

 神杖を持つ黒ローブは消耗し切っているため、神盾を持つ黒ローブと神靴を履く黒ローブが守りつつ、こちらから距離を取ろうとする。

 ならば、と属性魔法球を当てるよりも先に黒ローブたちを囲むように配置してから――集中砲火。

 神杖を持つ黒ローブは消耗し切っているためにまともに動けないので、神盾を持つ黒ローブと神靴を履く黒ローブが防いでいくが、属性魔法球に囲まれているため移動もできず、防ぎ続けることしかできなくなった。

 三桁出しても一斉に放てば直ぐになくなるので……同数。同形状。追加。

 黒ローブたちから、それはない――と悲壮感が漂う。

 さすがに防ぎきれなくなっていき、黒ローブたちは少しずつダメージを負っていく。

 そこに俺が迫る。

 狙うは、神杖か神盾。

 手に取りやすいから。

 神靴は履いているのを脱がせるのは面倒だし、不確定要素――一足として揃っていないといけないのか、それとも片方だけでもいいのかわからない――があるため対象外。

 できれば竜たちに手伝って欲しいが、あっちはあっちで邪竜と腐肉の竜(シーちゃん)はまだ健在なので、そっちの相手をしないといけない。

 なので、俺一人でどうにかしないと……どうせ奪い取るのなら、一つだけと言わずに奪い取れるだけ取ればいいよな?

 まずは防戦に集中にしている神盾、次いで神杖、神靴は………………奪い取れたらでいいか。

 そういえば、世の中には色んな性癖の方が居るが、異性の履いた靴とかもそういう対象の一つとしてあるのだろうか? ふと、思った。

 そう考えている内に近付き、まずは神盾、と手を伸ばし――掴む前に直ぐ引っ込める。

 それが正解だった、と何かが通り過ぎていく。

 それは――剣。

 装飾は……三つの神器に似ていて、どことなく統一感のようなモノがある。また、感じる雰囲気もそっくりだ。

 うん。神剣だろう。

 ついでに、それを持っているのは黒いローブで覆って隠し、どのような容姿かはわからない。


「誰かは知らないが、こんなのでも仲間だからな。邪魔させてもらった」


 神剣を持つ黒ローブが、そんなことを俺に言ってくる。


「ああ、邪魔だな! だから、纏めて倒す! というか、来るのが早いんだよ!」


 そう言いつつ、一旦距離を取る。

 近距離は俺よりも神剣を持つ黒ローブの方が有利だろうから。


「纏めて倒されても困るし、お前を排除する。何より、お前は生かしておくと危険な気がするからな」


 神剣を持つ黒ローブが追ってくる。

 残っている属性魔法球で妨害させるが、神剣でなんでもないようにスッパスパと斬られていく。いや、斬られるだけならいいのだが、それでなんの足止めにもなっていない。

 離れようとしたが距離は直ぐに詰められ、振るわれる神剣を避けていく。


「くっ!」


「随分と上手くかわす、が」


 神剣を持つ黒ローブの視線が少し下がった。

 俺ではなく竜杖を見ている。


「いや……いやいや、ちょっと待てよ。さすがにそれはアレじゃないか? こっちは一人。そっちは複数人だというのに」


「戦いにおいて相手の弱点を突くのは当然のことでは?」


「だろうな!」


 神剣の振るわれる先が、俺から竜杖へと変わる。

 どうにかこうにか回避していくが、今は本当に状況が悪い。

 装飾の竜にはヒビが入っている。

 これ以上のダメージはマズい――と思考したのがマズかったのだろうか。

 反応が若干遅れ――装飾の竜に神剣がかすり、裂傷のような痕が付く。


「お前っ!」


 我を忘れて飛び出そうとするが、竜杖の挙動がおかしく――上手く飛べなくなって、ふらふらしながら落ちていく。

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