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賢者巡礼  作者: ナハァト
531/614

サイド シーさん

 ぶるり――と背中に冷たいモノが流れるように震える。

 しかし、目の前――どころか周囲には誰も居ない。

 我だけ。

 ………………。

 ………………。

 暇だな。誰か来ないかな。敵だと面倒だけど……ではなく、震えたのはアレだ。うん。きっと、アレ。デビルさんではこう感じる前に直接的だから、ホーリーさんが何か良くないことでも考えているのかもしれない。

 ……いざという時は竜王権限で呼ぶ――いや、それだけだと来ないと思うから、友情を信じて助けてもらえるように、カオスを巻き込ませよう。そして、矢面に立ってもらう。相手が姉でも弟なら助けてくれるはず。うん。それがいい。そうしよう。それしかない。

 カオスとは幼馴染で、幼い時からそうしてきたのだ。

 怒られるなら、一緒である。

 もちろん、カオスだけが悪い時は、頑張ってこいよ、と応援しながら送り出すので問題ない。

 ……しかし、本当に暇だな。

 外はどうなっているのだろうか?

 町の方で魔物大発生(スタンピード)の迎撃が始まった、という報告を受けてから、誰も来てくれない。

 できれば戦闘中の報告は逐一届けて欲しいのだが……まさか、報告ができないくらいに状況が悪い? 先ほどでかい雄叫びがあったが、それと関係があるのか?

 誰か報告を……いや、待てよ。もしかして、俺だけハブられている――という可能性はないだろうか?

 実はもう終わっていて……いやいや、そんな訳ない。俺。竜王。そんなことにはならない。

 ただ、こうして俺しか居ない状況というのは、どうにも悪い方に考えて――誰かの気配? 報告に来たのか?

 姿勢を正し、威厳たっぷりで待ち構えると……現れたのは黒いローブで姿を隠した人間?

 何故ここに――いや、神靴を履いている。敵か。


「何用だ?」


 一応、聞いてみた。

 しかし、ここに敵が現れるということは、外はどうなっているのか気になるが――それを態度に出さないようにする。

 弱みを見せる訳にはいかない。


「用件? 決まっているでしょ? 神剣を封じている魔法陣を破壊しに来たの――よ!」


 神靴を履く者が駆け出し、俺を通り越して球体魔法陣を蹴り砕こうとする。

 確か、神器は物によって特性があったはずだ。

 神靴は、速度上昇だったはず。

 だからこその速度であったが、甘い。

 俺の目はしっかりとその姿を捉えているので、神靴を履く者の動きに合わせて尻尾を振るう。

 当たればそれなりのダメージは与えられると思うが、神靴を履く者は尻尾を飛び越えた――ところを叩き飛ばす。

 神靴を履く者は壁まで飛んでいくと、当たる直前でくるりと回って着地する。

 壁に大きくヒビが走った。

 ダメージは入ったと思うが、神靴を履く者の表面上にそれらしいのは見えない。


「さすがは竜王ってことね。まさか、私の速度に付いてこれるなんて」


「そこまでの速度だったか? 欠伸が出るかと思ったぞ」


「言ってくれるわね。いいわ。なら、どこまで私と踊れるか……見せてちょうだい!」


 神靴を履く者が襲いかかってくる。

 だが、やはりというか、狙いは変わっていない。

 挑発的なことを口にしようとも、俺を倒すことよりも球体魔法陣を砕くことを優先しているようだ。

 まあ、自分では俺を倒せないと判断しての行動かもしれないが……それでも、俺をどうこうせずに球体魔法陣を砕けると思っているのは……竜王が舐められている?

 もしそうなら――知ることになるだろう。

 竜王を敵に回すとどういうことになるのかを――と内心でカッコつけてみたり?

 ――と、即座に反応して、神靴を履く者を叩き飛ばす。


「――くっ!」


 神靴を履く者から苦悶の声が漏れるが、今のは危なかった。

 余裕がない訳ではないが、神靴の速度上昇は厄介だ。

 反応が少しでも遅れると大変である。

 それに、実際は叩くのではなく、掴もうとしたのだが駄目だった結果でしかない。

 神靴を履く者の反応も悪くないようだ。

 ……面倒だな。

 神靴を履く者を倒すには少しばかり時間がかかりそうだ。

 誰か、助けに来ないかな?

 神殿の外も大変だと思うが、そこはほら、竜王さまは竜族にとって大事なお方! 失ってはいけないかけがえのないお方だ! 賊め! 覚悟しろ! とか言って現れないだろうか?

 もし今来てくれたなら、感謝する。すっごいする。満面の笑みで握手もする。これで竜王と仲がいいアピールになるから、色々と融通が利くようになるかもしれないし、まず間違いなく「自分、竜王と仲いいんだ」と話のタネの一つにはなる。

 そんなこと考えながら神靴を履く者と攻防を繰り広げていると、地響きを感じた。

 先ほどの雄叫びといい、外の様子が気になる。

 今外はどうなっているのだろうか? 皆、無事なのだろうか?

 次々と疑問は浮かぶが、答えてくれる者は居ない。

 いっそのこと、神靴を履く者に聞いてみるか?

 ……いや、虚偽で惑わそうとしてくるのは間違いない。

 やはり、誰か報告に来て欲しい――ついでに、そのまま援護して欲しいと思っていると、こちらに向かってくる気配を感じる。

 現れたのは――黒いローブを羽織った人間が二人。

 明らかに神靴を履く者の仲間。

 何しろ、それぞれ神杖と神盾を持っているし。


「あれ? まだ片付いてなかったの?」


「うるさい! この竜が思っていた以上にやるんだよ!」


「まっ、球体魔法陣を守っているんだ。そいつは当然強い。当たり前のことだ。さっさと終わらせるぞ」


 神靴を履く者が構える。

 神杖を持つ者と神盾を持つ者も構える。

 なるほど。ここからは一対三か………………一対一を三回行うのでは駄目だろうか?

 味方が来るのを、切実に待っています。

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