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賢者巡礼  作者: ナハァト
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自信を取り戻しました

 上空から、竜の町に攻めようとしている魔物たちの様子を見て………………思うところがある。いや、できた。


「なあ、アブさん」


「どうした?」


「なんか、おかしくないか?」


「おかしい? 何が? 至って普通の魔物の群れだと、いや、多種多様ではあるな。あれでは普通共食いなどが起こっているはずだ。例外はあるが、そういうのを避けるために、自然と魔物大発生(スタンピード)は同一種、同系統になるのだが……不自然だ」


「いや、そういうことではな……うん。そうだな。確かにそれも不自然だ」


 アブさんが、あれ? 違うの? と悲しい雰囲気を醸し出してきたので、肯定しておく。

 いや、うん。それも間違っていない。うん。ただ、俺の思うところとは違っていたというだけであって……。


「どうやら、某とは違う見方があるようだが、何を思ったのだ?」


「ああ。俺が作った土壁が破壊できないから、土壁のないところに向かい、そこから攻める――という行動を取るのはわかるが、そもそもそういう行動を取れるのなら、相手が竜だとわかった時点で……いや、空を飛んでいた魔物が竜の息吹(ドラゴンブレス)でやられた時に逃げ出す、あるいは本能でここを避けると思わないか?」


 何しろ、この場に居る魔物たちの大半は強くない。ランクで言えば、決して高くないのだ。

 強いのも居るには居るがその数は非常に少ない。

 なのに、魔物たちは一体も逃げていないのだ。


「……確かに、おかしいな。そうなると……混乱、狂化、洗脳……手段は色々と考えられるが、まともな状態でないことだけは確かだな。竜に怯むことなく、しっかりと襲撃させるために。しかし、やることは変わらない。違うか?」


「まあ、その通りだけどな。さっさと終わらせて、神殿の方に行かないと」


 体に魔力を漲らせる。

 地上は魔物たちでびっしりだ。

 一部からしか攻められないという制限によって、詰まっている感じである。

 なので、魔物たちが居るところは足の踏み場がなく、下りられない……いや、そもそも下りる必要がないのだ。

 竜杖に乗ったまま、上空から魔法を放ち続けて魔物たちを倒していく。

 惜しむらくは、威力を制限しないといけないということだ。

 一気に倒したら爽快感がすごそうだが……間違いなく周辺に影響がある形で地形が変わる。

 さすがにそれは……な。

 この場に残って戦っている竜たちですら、竜の息吹(ドラゴンブレス)を放たずにいるのだ。

 そこで俺が……はさすがに空気が読めない認定されてしまう。

 一応、竜の町に影響がないように少し離れた位置に居る魔物たちから倒していっているのだが……思っている以上に魔物の数が多い。

 それなりの速度で倒して減っているはずなのに、次から次へと現れる。

 一体、どれだけの数を用意したのやら……。

 威力を抑えてとなると、少し時間がかかるかもしれない。

 ……ああ、思いっきり超広範囲殲滅魔法放って終わらせたい。

 まあ、大抵の魔物は威力を抑えた魔法でも充分に倒せるので、あとは時間との勝負みたいなところなのだが……。

 それに、威力を抑えた魔法では倒せない強い魔物も居る――居るのだが……そっちは完全に任せている。


(ヒャッハー!)


 いや、実際はそんな声は出していない。そんな雰囲気といったところだ。

 そんな感じのが、強い魔物を倒していっている。

 それも一撃で。


(イヤッフゥ~!)


 いや、実際は違うかもしれない。けれど、そんな雰囲気なのだ。

 意気揚々としている。漸く本領発揮……いや、違うな。こう……これこれ! こうじゃないと! という感じの方が正しいだろうか。

 それは、四枚刃――また一枚増えたようだ――の大鎌を持つ骸骨。アブさんの即死魔法だ。

 アブさんの即死魔法の骸骨は、ここ最近いいところがなかった。

 だから、自信を失っていたのかもしれない。

 しかし、今は違う。

 四枚刃の大鎌で強い魔物の命を刈り取り、自信を取り戻したのだ。

 生き生きとしている――いや、骸骨だから死んでいる――というか、魔法だよな、あれ。

 ……まあ、いいか。深くは考えない。

 そうして、ひたすら魔法を放って魔物たちの数を減らしていく内に、どれだけの時間が経っただろうか。

 集中している時ってどれだけの時間が経ったかわからないモノだが……まあ、他所で何かが起こっていてもおかしくないくらいは経ってはいると思う。

 そう思ったのがきっかけ――ではないと思うが――突然大きな衝撃音が響き、それで大地が少し揺れた――ように見えた。いや、まあ、俺は空中なので。

 衝撃音はここで起こったのではない。

 聞こえてきた方に視線を向けると、そこは竜山の上の方。

 おそらく、というか間違いなく神殿があるところだ。


「アルム! ここで抜けても、あとはここに居る者たちだけで充分対処できるだろう! 念のため、某が残って手助けしておく! あとのことは任せておけ!」


 アブさんがそう声をかけてくる。

 地上に視線を向ければ、確かに魔物たちの数は目に見えてわかるほどに減っていた。

 これなら、あとは任せても問題ないだろう。


「わかった! 頼んだ! アブさん!」


 竜山の神殿に向けて飛んでいく。

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