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賢者巡礼  作者: ナハァト
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妙なことになっている?

メンテナンスが終わっていたようなので、今日の分の投稿です。

 竜の町で過ごす内に、見知っている者と出会うことがあった。

 そいつは、ここで店を構えていたのだ。

 当初、俺は疑った。

 そんな訳ない、と。いくらなんでも、と。

 なので、実際にその店に入って確認した。


「えっと……あの時の、だよな?」


「すみません。どの時……いえ、その服……見覚えがあります! 私を憶えていてくれたのですか!」


 嬉しそうにそう言うのはゴブリンである。うん。ゴブリン。あれだ。ゴブリンの腰布が汚いモノだと認識されていると理解していて、洗濯が得意になりたいと夢見ていたゴブリン。

 それが、ここで店を構えていた。

 夢見ていた通り――叶えたというべきか、店は洗濯屋である。

 それに、ゴブリンだからということはなさそうで、それなりに繁盛しているようだ。


「おめでとう、と言うべきだな」


「ありがとうございます。あの時私を見逃していただけたからこそ、今こうしている私が居るのです」


「いや、お前が頑張った結果だ」


 もしくはパネェ神官の力か。

 ともかく、会ったことはないがパネェ神官か……少しだけ興味が湧いた。

 それと、正統進化というか、あのスライムのように妙な力が備わっている訳ではないようで、良かったと思う。

 そうだよな。洗濯屋に妙な力とかないよな……ないよな?


「そんなモノありませんよ」


 当のゴブリンが否定している。

 ないと判断しておこう。

 ――後日。シーさんとの談笑の中で、このゴブリンのことを話したのだが……妙なことになっていたことがわかった。

 簡単に言うと、昼の顔と夜の顔がある。

 昼は見たままの洗濯屋なのだが、夜は殺し屋という意味での洗濯屋になるそうだ。


「世の汚れを落とし、世に輝きを取り戻す」


 ……決め台詞らしい。

 ………………そっかあ。


     ―――


 スライム、ゴブリンとくれば他にも居るかもしれない。

 そう思っていると会った。いや、向こうから声をかけられたのだ。


「……おや、もしや?」


 大通りを歩いていると、そんな感じで声をかけられる。

 声をかけてきた者を見ると、黒い帽子に黒いローブ、それに杖と、魔法使い三点セットといった如何にもといった風貌だった。

 ただ、その体型は魔法使いらしくないというか、なんかローブでは隠し切れないくらいにでかい。縦も横も。


「ん、なんだ? 俺に何か?」


「いや、私のことをお忘れですか? 私の苦悩を理解していただけたと思うのですが?」


「は? 苦悩?」


 意味がわからないと、その者をよく見る。

 ……オークだった。魔法使い三点セットを装備したオークだった。

 別にその姿で思い出した訳ではない。いや、強烈ではあるが違う。

 オークと苦悩という部分で思い出したのだ。


「あ、ああ! 居たな! オークとしての本能に負けてしまうと苦悩していたのが! え? つまり、お前があの時のオークってことなのか?」


「はい。その通りです」


「そ、そうか。随分と見た目が変わって……その……ん? ここに居るってことは?」


「はい。パネェ神官にお会いすることができました。あなたさまが教えてくれたからです。だから、感謝の言葉をお伝えしたかった。本当にありがとうございます」


 オークが一礼する。

 いや、別に感謝されるようなことではないと思うが、こういうのは素直に受け取っておいた方がいいと思うので受け取っておく。


「……それで、どうなったんだ? 本能的な行動を抑えたいと言っていたと思うが……」


「はい。おかげさまで、パネェ神官さまのおかけで抑え込むことができるようになりました」


「その結果がその恰好なのか?」


「パネェ神官さまが言うには、副産物的なモノのようです。なんでも、生まれてから長い間そういう行為を行っていなかったため、魔法使いになった、と。あっ、実際に魔力もあります。今の私はただのオークではなく、オークメイジといったところです」


「……そ、そうか」


「このままいけば賢者になれるかもしれないとも言われました。今はそれに向けて精進を重ねています」


 ……正直よくわからないが………………俺が言えることは決まっている。


「まあ、頑張れ」


「はい!」


 それはとても綺麗な返事だった。

 ちなみに、今は、ここで出会い友達となった竜から魔法を習いつつ、所謂冒険者のようなことをしているそうだ。


     ―――


 他にも居た。

 いや、別に話した訳ではないので、見かけて「ん? あれってもしかして」――と思ったのが正しいかもしれない。

 見間違え……とかでもないと思う。

 俺が見かけたのは、カオス・スケルトン。

 アブさんが色んな骨を使って助け、ついでにそう名付けたスケルトンだ。

 俺よりもアブさんの方が関わりは深いと思ったのと、見た感じ警備兵のようなことをしているようだったので、邪魔しては悪いと声をかけなかったのである。

 ただ、アブさんにはカオス・スケルトンのことは伝えておこうと思った。

 問題は、宿泊(デーさんと)場所(ホーさんの家)を利用するようになってから、一度もアブさんが戻ってきていないことだろうか。

 ………………。

 ………………。

 まあ、戻ってきたらでいいか。

 あるいは、既に気付いていて声をかけているかもしれない。

 そう判断して、宿泊(デーさんと)場所(ホーさんの家)へと戻った。

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