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賢者巡礼  作者: ナハァト
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思わず出てしまったから不可抗力ということで、どうか

 銀色に輝く竜が眠っている。

 大きさとしては、デーさんやホーさんよりも大きく、カーくんと同じくらいだろうか。

 どうやら鱗の色が銀色で、それが輝いているようだ。

 目を閉じているが眩しくないのだろうか。

 眩しさを感じないくらい、瞼が厚いのかもしれない。

 そんな竜が……竜王なのだろうか。カーくんの親友だとデーさんは言っていたが。

 そんなことを考えていると、ホーさんが銀色に輝く竜に近付き――。


「起きなさい」


「――いでえっ!」


 平手打ちみたいに、銀色に輝く竜の顔面を叩いた。

 いや、竜王だと思う竜を相手にそれはいいのだろうか?

 普通は駄目だ。間違いない。

 ただ、ホーさんだからかな。それでいいのだと思った。


「え? 何? ……あっ、敵襲だ」


「私を見て敵が来たと言うのですか。わかりました。では、敵対するとしますか」


 ホーさんが拳を握り、構えのようなモノを取る。


「いやいやいやいや! 違う違う違う違う! 待って待って待って待って! 違う違う違う違う! 間違えた……そう、間違えただけ! ほら、その……ね、えっと……」


 顔が二つあるんじゃないかと思うくらい。銀色に輝く竜は左右に顔を振った。

 なんというか必死で……助けたくなる。


「いや、ホーさん。今のは、アレだと……寝起きで意識が……痛みで勘違いしただけでは?」


「そう! それ! それそれ! まったくもってその通り! そこの人間! 俺の意思を的確に読み取るとはやるな!」


 銀色に輝く竜が俺を指差し、褒めてくる。

 その顔は、マジで助かった、と思っていそうなモノだった。


「どうも」


 会釈だけ返しておく。いいってことよ。

 銀色に輝く竜が、恐る恐るホーさんに言う。


「だから、その……拳を下ろしていただけませんか?」


「………………そういうことなら仕方ありませんね。いえ、そういうことにしておきます。ただ、次はありませんから」


 ホーさんが構えを解く代わりに、銀色に輝く竜の喉からは、ヒュッ! という音が鳴ったような気がした。

 銀色に輝く竜が胸を撫で下ろすように一息吐き、こちらに視線を向ける。


「それで、本日はどのような用件で? え? もしかして、俺をしばくことが用件? そんな訳ありませんよね? ね?」


 銀色に輝く竜に、ホーさんに対する反抗の意思は少しもないようだ。

 なんというか、骨の髄まで染み込んでいるような、そんな感じである。


「違います。ここには客人を――いえ、ラビンから推薦された協力者をお連れしたのです。紹介状もあって既に確認しています。それと、共に居る不死系も問題ありません」


「へ? ラビンから? ということはカオスも関係している?」


「していますよ。……本当に寝ぼけているようですね。アルムくんの――彼のローブをよく見なさい」


「ローブ?」


 銀色に輝く竜がドラゴンローブに視線を向ける。

 なんというか、こういう時意味不明な動きとかしたくなるけど我慢だ。


「……確かに、アイツの鱗が使われている。それだけ信頼しているってことか。そういうことなら、俺もしっかりと挨拶をしておかないとな」


 銀色に輝く竜が俺を見て、胸を張る。


「うむ! 竜王をやっている『終極銀竜エンド・シルバー・ドラゴン』だ。カオスの親友でもある。気軽にシーさんと呼んでくれ。どうせ、カオスもそんな感じだろ? なんだったら、シーくんでもいいぞ」


「えっと……」


 なんというか、竜王なのは間違いないようだが……いいのだろうか? と思ってデーさんとホーさんに確認の視線を向けるが、特に気にした様子はない。

 ……とりあえず、銀色に輝く竜がまた叩かれることにはならなそうだ。


「アルムだ。こっちはアブさん。よろしく。シー……さん?」


 カーくんの親友らしいが、一応竜王だし、さん付けにしておく。


「うむ。よろしく。そっちのもな」


 シーさんはアブさんにも声をかけ、アブさんも俺と同じくいいのかな? という雰囲気を出しつつ、一礼した。


「それで、協力者というのは……神剣の封印の?」


「ああ。何か協力できることがあると思って」


「そうか。まあ、カオスとラビンが寄こしたのなら頼りにしても良さそうだな。この場所までくることができるように通達しておけばいいんだな?」


 シーさんが確認を取ったのは、ホーさん。

 ホーさんは頷く。


「ええ、それで構いません。アルムくんからは並々ならぬ魔力を感じますし、きっと何かの助けになりますよ。あとは――」


「見せておけってことだろ? わかっているって」


 そう言って、シーさんが少しずれる。

 すると、今まではシーさんが居て見えなかったモノが見えるようになった。

 それは浮くように空中で留まっている球体。大きさは、俺が抱えられる程度だろうか。ちょっと遠近感が……いや、それで間違っていないと思う。

 よく見ればただの球体ではなかった。

 表面に幾何学模様が描かれている。

 それこそ魔法陣のように――。


「球体魔法陣。これがある限り、誰も神剣を手にすることはできない。これを守ることも竜王としての務めの一つだ」


 シーさんがそう教えてくれる。

 神剣そのものではなく、まずはその球体魔法陣を守る必要がある、ということがわかった。

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