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賢者巡礼  作者: ナハァト
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直ぐそこで待機していたのかもしれない

 王城に着いて案内されたのは、昨日も来た執務室。

 さすがにメイドさん(美人)はここまでのようなので、俺と、密かにアブさんだけで中に入る。

 執務室内に居たのは、キン、ナート、ライムさんの他に、もう一人。

 青髪の優しげな顔立ちに、軽装と髪色に合わせたような落ち着いた色合いの青いローブを羽織っているが、細身であることは見ればわかる――そんな二十代後半くらいの男性。


「彼が?」


「そうだ」


 どうやら俺のことを話していたようだ。

 キンに確認を取った青髪の男性が俺の下に来る。


「初めまして。ジックと言います。魔法師団の団長をしています」


 手を差し出されたので握手を交わす。

 キン、ナートと同じように気軽に接して構わない、ということなのでそうする。

 本来ならこの人がキン、ナートと共に件の人の屋敷に乗り込んでいた訳か。

 そう考えると、口調や見た目と違って行動的なのかもしれない。

 だからこいつも頭痛の種なんだ、とライムさんが思っていそう。

 そんなこと考えていると、感謝の言葉をもらう。


「正直、助かりました」


「助かった? 何が?」


「『魔法狂い(クレイジーマジック)』のこともですが、何よりもアルムくんの情報ですよ。竜山を見に行きはしたけれど、近付くこともできませんでした。何故そうなっているのか理由がまったくわからずに困っていましたので……」


 そこに俺からラビンさんの報告書? が届いて理由が判明した、ということらしい。

 邪神復活の可能性という内容が内容だけに安心はまったくできないが、それはそれ。何もわからないよりはいい、と前向きに捉えたようだ。

 これから忙しくなるとも。

 なので、キンたちとしては今後の話をしたいのだが、その前に俺の用件を済ませるそうだ。

 という訳で、ジックさんから竜山について聞く。

 竜山は王都セントールからいくつか町と村を経由した先にあるかなり大きな山で、世界一と言ってもいいほどである。

 その大部分はミドナカル王国内なので、竜山がどこにあるかと問われれば、その答えは誰もがミドナカル王国と答えるが、実際にはミドナカル王国だけではなく、いくつかの国と繋がっている――が、そこに足を踏み入れようとはどの国も思わない。

 何しろ、その山全体が竜の領域となっているからだ。

 命が惜しければ竜山には入るな――は、繋がっている国すべての共通認識である。

 それは……まあ、そうだろう。

 迂闊に刺激を与えてしまえば竜が敵になり、国が滅んでもおかしくないのだから。

 といっても、竜山には竜だけが居る訳ではない。

 自然豊かであるのは間違いないため、動物も生息しているそうだ。

 ただ、魔物はほぼ居ない。稀に居るそうだ。

 基本的に竜の気配を恐れて、魔物は竜山には踏み入らないようにしているらしく、また、踏み入ったとしても大抵は竜にやられるので、竜山に魔物は居る方が珍しいらしい。

 そんな竜山だが、現在は見てわかるほどに異様な雰囲気――ピリついている。何かに警戒している――といったモノに包まれているそうだ。

 そのため、ジックさんは近付くことができなかった。

 遠くから様子を窺うことしかできなかった訳だが――実際はそれどころではなく、竜山の発する異様な雰囲気によって動物たちは逃げ出し、竜山には入らずともその近くに居た魔物たちも竜山から離れ出して、竜山の外周部はかなりの大騒動が起こっていたそうだ。

 今は落ち着いているというか、どうにか落ち着かせたようで、ジックさん寧ろそちらの対処の方が大変でしたと口にする。

 ご苦労様です。

 それで、ジックさんは竜山で何かが起こっている――あるいは起ころうとしていると確信して、警戒を促すために戻って来た、という訳である。

 こうして話しを聞いた限り――まだ敵は現れていないようだ。

 ………………大丈夫だろうか?

 カーくんの鱗を使用したドラゴンローブだけではなく、ラビンさんの紹介状もある。

 入れる……とは思うのだが……。

 でもまあ、まずは行ってみないことには、どうなるかはわからない。


「情報ありがとう。とりあえず、行くことは決定しているから、あとは自分の目で見て判断する」


「そうですね。アルムくんなら、私とは違う感覚を得るかもしれませんし、それこそ竜と友誼を結ぶかもしれませんね」


 既にカーくんという竜と友誼は結んでいるが、わざわざ言う必要はない。

 竜山の正確な位置に関しては、持っている地図に記されているので問題ない。

 アブさんが道順を確認するように考え込んでいるが、大丈夫だ。

 竜山は大きな山。つまり、ある程度近付けば山が見えてくるから、あとはそこに向かって進めばいいだけ。なので、問題ない。それだけでなく、俺が迷う訳ないとわかっているからこそ、キンたちも何も言ってこない訳だし。

 ……いや、それはそうだと知らないだけではないか? という感じでアブさんは俺を見ないように。あと、だからこそ、自分が連れて行かねば、と使命感のようなモノも抱かなくていいから。大丈夫。俺。大丈夫。


「人を寄越した方がいいか?」


「ん? いや、俺一人でいい。それに、そっちはそっちでこれから忙しいんだろう? 竜山の方は気にせず、そっちに集中してくれ」


 キンの問いにそう答える。

 わかった、と頷くキン。


「何かあればいつでも頼ってくれ」


 キンの言葉に頷きを返す。

 知りたいことは知れたと判断して、早速竜山へと向かうことにした。

 執務室を出て――。


「お供します」


「いや、大丈夫です」


 メイドさん(美人)からどうにか逃れて(メイド長による捕縛)、そのまま王城、王都セントールを飛び出して、竜山に向けて出発する。

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