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賢者巡礼  作者: ナハァト
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人によっては悶えます

 裏口から大きな屋敷の中に入ってからも、俺の出番は特にない。

 キンはランプも用意していたようだが、月明かりで視界は充分に確保できたので使用しないことにした。下手に使うと俺たちの存在がバレるかもしれないし、できる限り使用は控えた方がいいだろう。

 なので、俺の光属性魔法による光源もなし。ますます出番が……。

 また、この大きな屋敷内に居る人たちについても、キンとナートで全部片づけてしまう。といっても、全員を片付けたというか倒した訳ではない。

 キンの見極めにかなった者は、転職を受け入れて喜び、進んで協力的になってくれる。

 ただ、これは稀。

 門番兵士二人や、数人の執事やメイドさんだけで、大半はキンとナートの二人に音もなく倒されていた。キンが、自分ともう一人――ナートは物理的な方が強いと言った意味がよくわかった。

 本当に強い。物理的に。特に、ナートの方は筋骨隆々という体格も合わさってか、よりそれが顕著だ。カーくんや火のヒストさんと(筋肉)が合いそうな感じである。

 しかし、思ったよりも大きな屋敷内に人が居る。

 まだ寝静まるような時間ではないからだろう。

 それに、大きな屋敷である分、人も多く居る。それだけのことだろう。

 もちろん、悪事の証拠となりそうな物も探しているが、今のところは見つかっていない。

 どこにそれがわからないために、片っ端からとなってしまうのは……仕方ないことだろう。

 いや、ありそうなというか、確実にあるところは思い浮かぶ。

 ――この大きな屋敷の主。悪徳貴族である伯爵の執務室。あるいは寝室か。

 そのどちらかにはあるだろうが……寝室を探るのはなんか嫌だな。気分の問題で。できれば、執務室を先に見つけて、そこで終わって欲しいと思う。

 というか、色々と準備してきているようだし、この大きな屋敷の見取り図もあるんじゃないのか?


「確かに見取り図は手に入ったんだが、本当に屋敷の形だけのモノで、詳細は手に入らなくてな。それに、思わぬところに思わぬモノがあるかもしれないし、できるだけ多く見ておきたい」


 キンがそう答える。

 まあ、俺は協力者というか雇われみたいなモノだし、雇い主であるキンがそうするのであれば従うまでだ。

 アブさんもこっそり付いてきているし、問題ない。

 何もしていないので、意見とか言ってみたかっただけだ。

 それに、そもそもやろうと思えば、これくらいの大きな屋敷なら一瞬で灰燼にできるので、危機的状況に陥っても切り抜けられるし……いや、それだと証拠も消えるな。伯爵も。


「そうだな。その時は頼むわ」


「期待しておるぞ」


 うん。雰囲気でわかる。

 一瞬で灰燼にできるというのを、信じていないな。

 いや、本当だから。嘘じゃなく。

 だから、優しい笑顔を向けるな。自分にもこういう時があったとか、懐かしむんじゃない。

 恥ずかしいことじゃない、とか言わなくていい。慰めているつもりか?


     ―――


 危ない部屋があった。

 そう。怪しいではなく、危ない、だ。

 一言で言うなら、拷問部屋……だろうか。

 いや、なんというか言葉にはできないというか、したくないというか……それっぽい器具がたくさん置かれている。

 ただ、その……ベッドは要らないのではないだろうか?

 必要かどうかではなく、不適切というか、この部屋の様相に合っていない。

 しかも、そのベッドには上にシーツをかけた男性が眠っている。それも、おそらくだが、何も着ていないと思われる男性が。音もなく入ったので、起きなかったのだろう。

 ……これはもしや、ここの主――伯爵の趣味の部屋ではないだろうか?

 となると、件の伯爵は女性で、ベッドで寝ている男性は夫、もしくは囲っている愛人とかで……え? 何? 件の伯爵は男性? 未婚?

 ………………。

 ………………。

 まあ、アレだ。とやかく言うつもりは一切ない。

 そこに愛があれば、いいと思う。

 ただ、俺たちは寝ている男性を起こさないように、そっと危ない部屋から退室した。


     ―――


 危険な部屋があった。

 何がどう危険かを一言で言えば、魔物部屋。

 外に犬のような魔物たちが居たし、やはり魔物使いが居るのだろう。

 部屋の中には、犬だけではなく猫や鳥といった様々な魔物が居る。

 ただ、どれも小型。大型は居ない。

 ここが部屋だからだろうか? 大型は別の場所? それとも、魔物使いの力量が関係しているのだろうか?

 ともかく、やるべきことは変わらない。


「なんだ。お前らも腹を空かしているのか」


 キンによる餌付けが行われる。

 かなりの量を放出しているが足りるのだろうか?


「まだまだ入っているから大丈夫だ」


 大丈夫のようだ。

 しかし、そうなると、その肩掛けカバンはかなり容量のあるマジックバッグということになる。

 もしかして、俺のより……いや、それはないか。これはラビンさんが用意してくれたのだから、そこらのマジックバッグに負ける訳がない。

 それにしても……そうしてキンが餌付けしていると、寧ろ、キンが魔物使いに見えてくるな。

 そんなことを考えている間に、キンの餌付けは終わり、危険ではなくなった部屋を出る。


     ―――


 中々見つからない。

 手分けした方が早いのでは? と思ったところで、キンの見極めにかなって転職を受け入れた執事さんから情報を得る。

 執務室の場所だ。ついでに、伯爵は客室でエチーゴ商店のギーサと歓談中らしいこともわかった。

 今しかない。絶好の機会だ。

 キンが肩掛けカバンの中から見取り図を出して、執事さんに執務室の場所を記してもらう。

 今居る場所からそう遠くない。

 これは行くしかないと、俺、キン、ナートは、執務室へと向かう。

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― 新着の感想 ―
[一言] うん、まぁほら中々信じてもらえないのはしょうがないよ。魔法が得意な相手ならまだしも。 ただ、まぁ…なんというかアルム君、「灰燼」って言葉のチョイスがさ…こう、いかにもそーゆーお年頃感が出ち…
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