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賢者巡礼  作者: ナハァト
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もしかして、と当初から気付く時もある

「なんだあ! てめえ、こら! 関係ねえヤツは引っ込んでろ!」


 細身の男性を蹴り飛ばしたガラの悪い取り巻きの一人が、新たに現れた金髪の男性に蹴りかかる。

 しかし、金髪の男性はその蹴りをかわし、足を払ってガラの悪い取り巻きの一人を転ばせた。


「おっと、悪いな。見ての通り、足が長くてよ」


 金髪の男性は笑みを浮かべ、そのまま細身の男性の下へと行って助け起こす。


「大丈夫かい? ジネスの旦那」


「あ、ああ、すまない。キンさん」


 どうやら知り合いのようだ。

 ただ、金髪の男性の行動に、ガラの悪い取り巻きたちが怒りを露わにする。


「てめえ!」


 転ばされたヤツが起き上がり、金髪の男性へ殴りかかる。


「おいおい、落ち着けよ」


 そう言いながら、金髪の男性は反撃。倒す。

 他のガラの悪い取り巻きたちはさらに怒りを露わにして、白い布に包まれた物を持っているヤツ以外が一斉に襲いかかる。

 舐めてんじゃねえぞ! とか、ぶっ殺す! とか口にしながら、ガラの悪い取り巻きたちはなんとなく感じられる殺気を出していた。


「――たく、仕方ねえな」


 だからだろうか、金髪の男性はガラの悪い取り巻きたちをしっかりと叩きのめしていく。

 ――強い。

 金髪の男性は一発も食らうことなく、次々と倒していった。

 その大立ち回りに、周囲の人たちが金髪の男性に向けて歓声を上げる。

 まだやられていないガラの悪い取り巻きたちはそれが許せなかったのだろう。


「うるせえぞ! 黙れ!」


 そう口にして、こちらに向けて襲いかかってきた。

 正確には、俺。

 いや、俺は一言も発していないのに何故? と思いつつ、殴りかかってきた拳を払い除け、流れるような動きで竜杖を振り抜く(フルスイング)

 少しだけ身体強化魔法を使ったので、襲いかかってきたヤツは数m飛んでいった。


「ヒュ~! やるねえ!」


 どこか感心したような言葉が送られたかと思えば、金髪の男性からだった。

 そんな金髪の男性は襲いかかってきたヤツを投げ飛ばし――それが最後だったようだ。

 襲いかかったガラの悪い取り巻きたちが全員倒れている。

 残っているのは、白い布に包まれた物を持っているヤツと、恰幅のいい男性だけ。

 恰幅のいい男性はやれやれと息を吐く。


「……なるほど。あなたが強いのは充分に理解しました。お名前を伺っても?」


 これくらいなんてことはない、と動揺した様子は見られない。

 それは金髪の男性も同様である。


「相手に名を尋ねるなら、まずは自分からだと思うが……まあ、いい。俺はキン。ここら辺じゃあ、少しは名の知れた、遊び人のキンって者だ。ジネスの旦那とは縁があって何度かお世話になっている者だ」


「そうですか。遊び人のキン、ね。覚えておきましょう。それで、私のことでしたね。私はエチーゴ商会の商会長をしております、ギーサと申します」


「そうか。ギーサさんね。なら、ギーサさんよ。そいつはジネスの旦那が大事にしている物だ。そいつを持っていくのは、やめてやってくれねえか?」


 金髪の男性が白い布に包まれた物を指し示す。


「何か勘違いしていませんか? 私がこれを無理矢理持っていこうとしていると。それは間違いです。私はね、そちらのジネス殿が出した損害を補償したのですよ。その補償した分を返してもらえず、その代わりとなる物を手にしたまで。正当な手段なのです。もちろん、これの代わりになるような物を今直ぐ用意できるのでれば、そちらの方でも構いませんが……ないでしょう? ねえ?」


 恰幅のいい男性が細身の男性に確認を取る。

 細身の男性は何も言えないようだ。

 つまり、肯定、と。


「わかっていただけましたか? では、私たちはこれで。そうそう、先ほどのいざこざについては、確かにこちらの者が先に手を出しましたが、それはあなたが横槍を入れてきたからですので、両成敗ということで。ほら、行きますよ」


 恰幅のいい男性がこの場を去っていく。

 ガラの悪い取り巻きたちもよろめきつつも、そのあとを追っていった。

 金髪の男性は、それを黙って見送る。


「……ちっ。今はこれ以上手を出せないか」


 そんな呟きが聞こえたかと思えば――。


「よっし! ジネスの旦那! 詳しい話を聞こうじゃねえか! ほれほれ!」


 金髪の男性は細身の男性を連れて、ジネス商店の方へと向かっていく。

 その様子を見ていると、不意に金髪の男性が振り返り、俺を見る。


「そういえば、さっきは助かったぜ! 魔法使いの兄ちゃん!」


 いや、俺が一人倒したからといって、それが助けになったとは思っていなかったのだが……何か言う前にジネス商店の中に入っていった。

 ……まあ、いいか。

 もう関わることはないだろうし。


     ―――


 なんてことを思っていたのだが――。


「てめえ、さっきはよくもやってくれたな! ああん! ぶっ殺してやる!」


 宿屋に着く前に、俺が竜杖で払い飛ばした、ガラの悪い取り巻きの一人に絡まれた。

 もちろん、サクッと返り討ちにしておいたのだが……これで終わったのだろうか? よくもやったな、と追加されない? 王都に居る限り、絡まれる感じ? ……ん? あれ? この流れ……もしかして、俺も巻き込まれる感じ?

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