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賢者巡礼  作者: ナハァト
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されたらしたくなるモノもある

 持っている地図で中央に描かれている国。実際、地図上でわかる大陸の形によると、中央にあるな、と思う国。それが、ミドナカル王国。

 その王都に入る。


「セントールにようこそ!」


 巨大な門を守る兵士が、俺の冒険者ギルドカードを確認して、にこやかな笑みを浮かべてそう口にする。

 なるほど。王都はセントールと言うのか。

 いや、これは仕方ないというか、俺がその辺り――主に出身であるフォーマンス王国以外の国に対しては少々情報が疎い……いや、ハッキリ言ってわからないことが多い。国の名前くらいは……まあ、なんとか。

 何しろ、執事見習い時代は、外の情報がまったくと言っていいほど手に入らないというか耳に届かなかったので、知らなくても仕方ない部分があるのだ。

 門を守る兵士が冒険者ギルドカードを返したあとに敬礼をしてきたので、俺も同じように敬礼しておいた。

 いつも、ご苦労さまです。

 敬礼されるとこっちもやりたくなるから仕方ない。

 ちなみに、アブさんはいつものように上空から入る。

 そうして王都セントールの中に入り、まずは宿屋を探す。

 宿泊場所を確保しなければならない。

 何しろ、会おうとしているのは、この国の王さま。うん。会おうとして会える存在ではない。いや、これまでのことを思い返すと、わりかし行った先で会えている。

 ………………。

 ………………。

 そういう偶然もある……か? そういう星の下に……か?

 答えは出ないので、深く考えないことにした。

 ともかく、会おうとして会えるとは限らないし、日を跨いでの面会になる場合もあるので、まずは宿泊場所の確保をしなければならない。

 王都セントールの中心地にありそうな王城が目に入るが、それはあと。

 宿屋を探しつつ、王都セントールの大通りらしき通りを進んでいくが、人や馬車の往来が多く、屋台からも客を招く声や商品説明の声が飛び交い、活気があってかなり賑わっている。

 見かける人の多くは冒険者のようだ。

 ラビンさんのダンジョンが近場にあるからだろう。

 そうして大通りを進んでいく中、見つけた。

 王都内で一番ではないだろうが、そこそこ大きく、賑わっている宿屋。

 人の出入りが多いので、ここの女将さんなら、きっと情報通だろう。

 俺の直感が、ここだと言っている。

 中に入って数日分の宿泊を予約……うん。取れた。

 アブさんもその様子を見ていて、この宿屋で決まったという合図を送ると、わかったと頷いてどこかに飛んでいく。王都セントールの様子を見に行ったと思われる……多分。部屋番号も見ていたし、間違えることはないだろうから、自ずと戻ってくるだろう。

 宿泊は食事付きで、丁度昼頃ということもあって、先に食事を取る。

 本日のメニュー。

 柔らかパン(バター付き)。野菜たっぷりスープ。分厚いこんがり肉(多分、豚。濃厚ソース付き)どれも普通に美味い。

 そして、食後はいつものように、女将さんから情報収集である。

 女将さんは、口元のほくろから妙な色気を感じさせ、こうむっちりというか……男好きするような体型とでも言うような、そんな二十代くらいの女性。


「女将さん? 看板娘ではなく?」


 思わずそう口にしたが、娘と呼ばれるような歳じゃないと言いながら、軽く叩かれた。

 女将さんは上機嫌に話してくれる。

 まずこの国――ミドナカル王国についてだが、大国と言われるだけの力を有していながら、周辺国には攻め入らずに中立の立場を貫いている国というのは、割と有名な話のようだ。

 確かに、これまで受け継いだ無のグラノさんたちの記憶を探れば、ほぼ全員の中で中立国として認識されている。

 そんな中立国だが、これまでの歴史の中で周辺国から攻められることもあったそうだ。

 中立国と明示しているのを弱気と捉えたり、戦力が低いからと判断したりと、様々な理由から攻められることもあったが、ミドナカル王国はそれらすべてを退けてきた。

 ミドナカル王国の戦力は低いどころか高い。大国で強国である。

 その理由は明確。

 ――世界最大(ラビンさんの)ダンジョンがあるから、だ。

 ダンジョン得られるモノを最大限活用しているそうで、それがそのまま強さに直結しているのである。

 また、軍事的だけではなく、経済的にも強い。

 ラビンさんのダンジョンでないと手に入らない物が多くあるからだ。

 そこまで聞いて、妙に納得した。

 ラビンさんが、いざという時はこの国の王さまに頼めばいいとか言えるのも、しっかりとした力関係ができているからである。

 この国はラビンさんのダンジョンがあるからこそ、中立国という地位と他国の侵略を受け付けない強さを持っていられ、大きく賑わっているのだ。

 ついでに、今の王さまについても聞いてみた。


「王さま? キングッドさまのことかい?」


 それが名前かな?

 こっちも有名のようだ。

 というのも、時折王都内にふらっと現れるらしい。

 生活環境を見るためとか、書類仕事が嫌で逃げ出してきたとかで……前半はともかく、後半は大丈夫なのだろうか?

 不安になるが、住民からの人気は高い。

 まあ、ラビンさんも気さくだと言っていたし、あとは実際に見てから判断すればいいか。

 腹ごしらえも済んだし、そうと決まればと、早速王都セントール内になる王城に行ってみる。

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