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賢者巡礼  作者: ナハァト
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重ね合わせれば違いが浮き彫りになるはず

 竜山に向かう――のだが、普通に行って大丈夫なのだろうか?

 何しろ、そこに居るのは竜ばかり。ただの人である俺が行っても門前払い……いや、門あるのだろうか? なさそうだよな。山だし。となると、追放――だと元々居た場所からだから意味合いが違うので、追い出される……なんか違うような気が……あっ、追い返されるか。

 ともかく、普通に行ってそのまますんなりと入れるのだろうか?

 力を示せ――とか言われて戦闘になったらどうしよう。いや、カーくんを竜の思考の基準と考えれば、筋力を示せばいいのか?

 ……さすがに、身体強化魔法は使用できないよな? 不正扱いされそうな気がする。

 素の筋力となると……腕を曲げてみるが、少し盛り上がる程度。

 いや、俺としては充分な気はするのだが、竜たちからすると駄目だと思う。

 貧弱。貧弱。筋肉が足りない者は通せない、と言われそう……あれ? 言われるかな? そもそも、カーくんを基準にしていいのだろうか?

 もしかすると、竜たちは筋肉に興味がないかもしれないじゃないか。

 その可能性はある。

 希望は見えた。

 ……いや、そもそも無のグラノさんの記憶を探れば――。


「さっきから何を考えているの?」


 ラビンさんが問いかけてきた。

 なので、正直に聞いてみると――。


「ああ、それは問題ないよ。竜たちから見れば、そのドラゴンローブに使われているのがカーくんの鱗だってわかるだろうから、それでどういうことだと尋ねてくると思う。その時に、正直にここのことを言えば問題ないよ」


「そう、なのか?」


 いきなり襲われたりしない? 筋肉足りないとか言われない?


「そうだよ。まあ、一種の通行証みたいなモノだと思って大丈夫だから。……それでも不安なら、ボクからの紹介状みたいなのを書いておこうか? ボクも竜山には知り合いが居るし」


「手間じゃないのなら、お願いしたい」


「あはは。別に手間じゃないよ。あっ、それならついでに、この国の王都に寄って……あれ? そういえば、彼には会った?」


 ラビンさんが尋ねてくるが……彼? 誰のことだろう?

 首を傾げる。


「その様子だと会っていないかな? ここ――ボクのダンジョンがある国の王さまに」


 それで思い出した。

 当初、マジックバッグと共に置かれていた一枚の紙に――国の力が必要になれば、この国に頼ればいい、と書かれていたな。ついでに、ラビンさんが代々の王さまと懇意にしているみたいなことも。

 結局、頼るどころか寄ることもなかったけれど。

 すっかり忘れていた。


「ああ、会っていないな」


「そうか。なら、彼にも現状を伝えて念のために動いて欲しいから、そのことを伝えて――ああ、これも書いて渡してもらえばいいのか。お願いできる?」


「それは、国王に直接?」


「うん。直接。内容が内容だしね。ああ、国王って言っても彼は結構気さくだからね。大丈夫だよ。そう畏まる必要もないし、緊張もしないと思うから。まあ、これまでの中には面倒なのも居たけど、今代は比較的気安いよ」


「いや、その辺りを聞きたかった訳では……まあ、ラビンさんにはこれまでお世話になっているし、その頼みを断るようなことはしない。直接渡せばいいんだよな?」


「うん。そうだよ。ありがとう。よろしくね。そうだ。ついでに、竜山もこの国の中にあるから、色々と話を聞いてみるといいよ。生の声はまた違っているかもしれないしね」


 生の声か……そういうのも重要だよな。

 そうして、出発のための準備を始める――といっても、元々マジックバッグの中に入っているし、ラビンさんの書いたモノが追加されるくらいだ。

 準備は直ぐに終わって、出発となる。

 もちろん、アブさんも一緒だ。


「………………」


「………………」


 厳しい鍛錬に集中していたので、アブさんが何をやっていたのかは知らない。

 けれど、今アブさんは、どうだ? と何やら力を示すようなポーズを取って見せている。

 これは……間違えると拗ねるな。

 間違える訳にはいかないが……正直何か変わっただろうか? と思う。

 しかし、これを口に出すのは駄目だ。

 こういう時は……一旦視線を外して、脳裏にこれまでのアブさんを思い浮かべる。目を閉じればより鮮明だろう。同じポーズを取らせて……目を開き、今のアブさんと重ね合わせる。そうすれば、ほら! 違う部分が浮き彫りに………………何か変わった?

 駄目だ。わからない。だが、いつまでも黙っている訳にはいかない。

 ――直感を信じろ。


「……なんかこう、太くなった?」


「そう! そうなのだ! アルムよ! 某の骨密度が上がり、合わせて骨が太くなったのだ!」


 アブさんが喜びを露わにするが……本当に太くなった? と言いたくなるくらいわからない。

 でも、当たったのは間違いない。

 当たって良かった。

 他の皆は念のための準備で忙しいが、それでも見送りに出てくれた。嬉しい。

 見送られながら、魔法陣を使用してラビンさんの隠れ家へと移動し、そのまま外に出て竜杖に乗り、空へと舞い上がって出発する。


     ―――


 竜山に向かう前に、まずはこの国の王都を目指す。

 空の移動ということで一直線に進むことができるということも関係しているだろうが、元々ラビンさんのダンジョンから徒歩で数日といった距離に王都がある。

 なので、それほど時間はかからずに、その姿――堅牢そうな高い壁に囲まれた大きな都が見えた。


「まっ、さすがにこの距離なら――というか方角がしっかりとわかれば問題ないから」


「つまり?」


「これまでにそれっぽい時があったのは、進行方向が最初の方からずれていたってことだ。何しろ、最初の方でずれていると、進めば進むほどその幅は大きくなっていく訳だし」


 俺はそう結論付ける。

 アブさんはどことなく疑っていそうな雰囲気だが。

 ともかく、今回は着いたのだ。

 王都に入るため、ゆっくりと降下していく。

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