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賢者巡礼  作者: ナハァト
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わからないから、どうすればいいのかわからない

 残る神剣を奪われないために、俺は竜たちが守っているという場所へと向かうことにした。

 ………………。

 ………………。

 向かえるだろうか?

 未だ鍛錬中である。

 いや、以前よりも強くなったのはもちろんのこと、魔力制御もより向上したという実感はある。あるよ。でも、ここで一旦鍛錬は終わりと決めていいのだろうか?

 なんというか、鍛錬を受けている俺がここまでだと決めるのは違う気がする。

 ……まずは、こう考えていると話してみよう。一人では決めない。そこからだ。

 早速、鍛錬中――地面に突っ伏した状態での休憩時間中に聞いてみた。


「ふむ……いいだろう。元々、今回は魔力制御の方に重きを置いていたし、以前と比べて格段に上昇している。あとは実戦経験を積み重ねて向上させていくのも悪くない」


 カーくんは問題ないと頷く。


「……そうじゃな。神剣を守ることは大切であるし、今のアルムであれば、たとえ相手が神杖を持っていようとも負けぬであろうし、神盾の防御力を上回る可能性もあり、神靴にも引けを取らないだろう。カーくんの言う通り、実戦も大切だ。その中でしか芽生えない力もあろう」


 無のグラノさんも了承を示す。

 最近はカーくんと無のグラノさんに鍛えてもらっていたので早速話したが、問題ないようだ。

 他の皆は別にやることがあると、別の場所である。

 ただ、カーくんと無のグラノさんは他の皆も同意見だろうと言っているので、向かっても大丈夫なようだ。

 なので、もう少し詳しい話を聞く。

 向かう場所は――竜山と呼ばれる場所。

 その名の通り、竜たちが住む場所のようで、無のグラノさんの記憶によれば、自然豊かな相当大きい山のようだ。

 しかも、ここ――ラビンさんのダンジョンからそう遠くない。

 向かう先に竜が居るので、カーくんが付いてくるかな? と思ったのだが――。


「ん、んん……それは、まあ……やぶさかでない、が……」


 何故か歯切れが悪い。

 行けない……いや、行きたくないか? ……まあ、なんにしても理由はわからないが、カーくんは竜の里に行きたくないようだ。

 別に構わない。というか、気にしていない。いや、これだと語弊があるかもしれない。竜の里に行くから、竜であるカーくんも一緒にどうか? と誘ってみただけの話なのだ。

 ……まあ、こういうのって断ってもいいよ、と言っても断りづらい時もあるというか、不思議と誘われた方は断ることに罪悪感を抱いたりする場合がある。でも、案外、誘った方は気にしていない場合があって、今の俺は正にそれ。

 なので、気にしな――。


「ああ、それね、カーくんが竜の里に行きたがらないのは、頭が上がらない竜が居るからだよ」


 突然現れたラビンさんが楽しそうにそう言う。

 他の皆と何かやっていると思うのだが、そっちはいいのだろうか?


「一休憩だよ」


 なら問題ない。

 そのままラビンさんも会話の輪の中に入る。

 俺も起き上がった。

 気になるから、もっと詳しく聞こうと思ったが――。


「そ、そんなことはないぞ! わ、我より強い竜は居ないのだ!」


 カーくんが胸を張ってそう言う。ただ、どことなく虚勢のように見えなくもない。いや、曖昧で誤魔化そうとしたが、間違いなく虚勢だ。

 珍しい――というか初めて見る様子である。

 俺の中でカーくんは最強なのだが、そんなに強い竜が居るのか?


「そうだね。確かに、強さならカーくんの方が上だけど、この場合の強さとはそういうことではなくて」


「ラ、ラビン! それはいいではないか!」


「でも、竜の里に行けばわかることだし、あとで知るか、今知るかだと思うけど?」


「そ、そうかもしれないが、ほ、ほら、我にも心の準備というモノが、な。それもできずに、行くのは……その……」


「心の準備って……まあ、こういうのは当事者同士の話だし、余り突っつき過ぎても余計意固地になってしまうか」


 ラビンさんが納得するように頷く。

 どうやら、この話題について、これ以上のことは話さないようだ。

 けれど、行けばわかると言っていたし、行けばわかる……のだろうか? 本当に? 行ってもわからなかったらどうしよう。こういうのにも察する力は必要だと思う。それが足りなければ……大丈夫だろうか? 不安になってきた。とりあえず、察せられると願っておこう。


「……アルムくんは何を祈っているの?」


「いや、別に、何も」


 ラビンさんが不思議そうに尋ねてきたが、そう返すことしかできなかった。

 さすがに口にはできない。

 いや、別に口にしてもいいのだが……もしもが起きて察せられなかった時に、それで気を遣われるのがちょっと……。

 なので、なんでもないで片付く話なのだ。

 ラビンさんも特に気にした様子はない。


「まあ、いざとなればカーくんも向かうと思うから、その時になれば確実にわかるよ」


 ……気にする様子になるまでもなく察せられるということか。

 その察する力……欲しい。色々と有効活用できそうだし。

 今は、言質を取られずに済んだと思っておこう。

 ちなみに、無のグラノさんは俺と同じくわかっていなさそうである。

 竜山に行った記憶はあるのだから、その竜にも会っていると思うのだが……ピンときていない。仲間を見つけた気がした。


「……ともかく、神剣のことは任せたぞ、アルムよ。我もその、行けたら行く」


 カーくんがそう纏めて、任せたとラビンさんと無のグラノさんが俺を見る。

 力強く頷く。

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