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賢者巡礼  作者: ナハァト
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体だけではなく、心も大切です

 無のグラノさんの記憶と魔力を受け継ぐために鍛えることになった。

 といっても、また数か月かかるとかではなく、あと少しといったところらしいので、そう時間はかからないそうだ。

 少なくとも、一月以内には終わるだろう、と。

 ……それは、アレかな? 少し無理をしないといけない感じでの予定かな?

 ……違うっぽい。いい方で、ではない。悪い方で。いや、悪いという言い方は不適切かもしれれないが……ともかく、結論から言えば少し無理をするのではなく、かなり無理をする、ということだった。

 ……体、壊れない?

 そこは大丈夫らしい。万全の回復を約束すると。毎日。

 そうだよな。途中で壊れては意味がない。

 最大限の効果を得るためには、最後までやり切ることが大事だからだ。

 それがわかっているのはいいが、あと一つ確認をお願いしたいのだが……大丈夫のようだ。なので、聞くが……体の回復は万全だとわかったが、心の回復はどうなっているだろうか?

 体も大事だが、心も同じように大事である。

 最後までやり切るには、体だけではなく心も必要だと思うので、その心を回復する準備は………………どうして誰も俺と目を合わせない。

 大丈夫だと信じている? きっと乗り越えられる? 俺なら境界線の向こう側へ行ける?

 いや、最後のは言っている意味がわからないが、間違いなく大丈夫だという確証を得られないような発言ばかりだよな?


「……というか、母さんもそっち側なのか?」


「立派な息子に成長して、私は嬉しさと誇らしさを同時に感じています」


 既に、やる方向で話は纏まっているようだ。

 一体いつの間に手回しを……。

 ただ、俺だってわかっている。

 それが最善であり、今後のために必要であるということは。

 でも、いきなりで心構えができていなかった。それだけ。

 深呼吸して、わかったと頷いた。


     ―――


 鍛錬に入る前に、個人的なことなので、土のアンススさんと二人きりで「人類最強(ジブル)」について話す。

 その中で、土のアンススさんの記憶の中に出てきた女性大司教が、あの時戦った教皇であることに思い当たる。

 おそらく、その時から「人類最強」はもう意識がなかったのだろう。

 確証が得られた訳ではない。

 さすがに、あの場で聞く訳にはいかないというか、土のアンススさんとの関係を聞かれても困る。

 ……いや、親戚とかで押し通せば……いや、土のアンススさんは自分の出身もわからない上に孤児院で育ち、「人類最強」も同じ境遇だったから……何故知っていると詰め寄られる可能性が高い。そして、下手をすればそのまま暴れることもあり得るだろう。

「人類最強」とまた戦うとか……疲れるので勘弁して欲しい。

 迂闊に土のアンススさんの名を出さなくて正解だった――としておこう。

 そうして話し終えると……土のアンススさんは息を吐くような行動を取った。


「……はあ。そういうことだったのね。でも、許せるかどうかは別……かな。そこはやっぱり愛の力とかで、自力で思い出すとかするべきじゃないかしら? ねえ?」


 いや、俺に聞かれても困る。

 でも、土のアンススさんの様子は普通というか、何かしらの深刻なモノは感じない。色々考えていたのだろう。

 それについては安堵するのだが、このあとのことも聞いておかないといけないので尋ねる。


「それで、どうする?」


「どうする、とは? ……ああ、ジブルに――『人類最強』に私のことを教えるかどうかってこと? 別に言わなくていいわよ」


「いいのか?」


「私の人生は、こうなった時に一度終わっているのよ。『人類最強』については今更どうこうは元々考えていないし、思ってもいないわ。ただ、私はどうして裏切られたのか確認したかっただけ。それに、アルムが一発入れたっていうのなら……うん。それで充分スッキリしているわ」


「そうか。スッキリしてくれたのなら良かった」


「まあ、それでももし関わりを持つとしたら……向こうも骸骨になったら、かしら?」


 それは……いつになるんだ?

 かなり時間がかかるだろうし、そもそも「人類最強」が骸骨になるだろうか? たとえ骸骨になったとしても、無のグラノさんたちのようにしっかりとした意識があるのかどうか……まあ、なんだかんだとありそうだけど……そもそも本当にそうなるかは……ああ、だから、なったら、なのか。

 ……なったらなったで、すんごい骨太で屈強な骸骨になりそうだな。

 しかも、普通に強い。

 容易に想像ができてしまう。

「人類最強」から「骸骨最強」か……いや、アブさんや無のグラノさんたちが居るし、そう簡単には最強にならないか。

 ……いや、骨太だからという力押し? でどうにかしそうだな。

 なんてことを考えていると、ぽん――と肩に手が置かれる。

 その手は骨で、そのまま体、顔の方と順に視線を向ければ、火のヒストさんだった。


「い、いつの間に!」


「アンススが話は終わったと合図を出してくれたからだ!」


 合図? いつの間に! と土のアンススさんを見れば、ニッコリと笑っているように見えた。


「アルムはこれから鍛錬で大変でしょ。その時間も無限じゃないし、早く始めないとね」


「……お気遣いどうも」


 できれば、もう少しだけ厳しくても乗り越えられるような心構えの時間を――そうか。土のアンススさんは既にそういう心構えができていたから深刻にならな――。


「さあ、鍛錬(筋肉育成)の時間だ!」


 火のヒストさんがもう一方の手で、くいっ――と自分の後方を指し示す。

 カーくんが待ち構えていた。

 抵抗はしない。

 俺は大人しく連行された。

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