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賢者巡礼  作者: ナハァト
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休める時にしっかりと休んだ方があとに響かない

 用意された隠れ家で数日待機。

 初日は体を動かすのが本当に億劫であったため、色々とお世話になった。

 でも、母さん。

 さすがにもう成人している訳だし、食べさせようとするのはちょっと……。

 食べるくらいなら、体に走る痛みを我慢してできるから……いや、うん……はい。大人しく従うから、小さい頃の話を「新緑の大樹」に話さないで。

 ……先ほどは従ったけど、さすがにトイレは一人でいいから。

 親子だから以前に、人としての尊厳というか……本当に大丈夫だから!

 ……死守した。

 今日は外から聞こえてくる歓声が鳴りやまなかった。


     ―――


 翌日。

 まだ体はギシギシしている。

 思いのほか辛いが、完調まではもう少しかかりそうだ。

 体が動かせないので考えることしかできないが、そこで推測を一つするのなら、今の状態は体が貧弱なだけではなく、流して纏う魔力も多かったのではないか? と考える。

 つまり、流して纏う魔力を少なくすれば、身体強化魔法でここまでの影響というか反動を受けなくても済むかもしれない。

 ………………。

 ………………。

 失敗すればこれ以上の状態になるし、未だ魔力操作には失敗が多い。

 今はちょっと試すのすら躊躇われる。


「新緑の大樹」のリューンさんが外の状況を確認してきた。

 反乱は無事成功。

 王さまと第一王子は、最後まで「国民は道具」とか「王威に逆らうのか」とか「有用スキル持ちは、自分がただしく導かねばならない」とか、そういうことを口にし続けていたそうだが、それにキレたゼブライエン辺境伯とシュライク男爵が、往復ゲンコツを食らわして黙らせたそうだ。

 ……往復ビンタではなく、ゲンコツ?

 まだ生きてはいるようだが、ここまで国を荒らしたのだ。

 その結末は一つだろう。

 とりあえず、数日後にテレイルが即位する予定で、今はその調整に入っているそうだ。


     ―――


 その翌日。

 初日よりはだいぶマシになったが、まだ節々が痛い。

 普通に歩けるくらいはできると思うが――。


「ここで無理をすると長引くから、今は休みなさい」


 母さんによって、強制的に休まされる。

 特にやることもないので、ラビンさんからもらった本の続きを読む。

 すると、王城……というよりは、テレイルやゼブライエン辺境伯からの使いの人が、ある確認を取りにきた。

 その確認は、既に捕らえているスリーレル公爵と跡継ぎに会うかどうか。

 捕らえられているのは、王さまと第一王子が、こうなったら他のも道連れだと色々と暴露したから。

 どうやら多いとまでは言わないが、少なくはない貴族が王さまと第一王子と共に、「スキル至上主義」の名の下でかなりあくどいことをやっていたらしい。

 中には人としてどうかと思うようなモノも。

 そこにスリーレル公爵と跡継ぎも含まれていて、捕らえられたそうだ。

 で、会うかどうかだが、まあ、一発ぶん殴ってやりたいくらいは思うのだが、今は体が完調していないので無理なので後程ならと伝えると、母さんが会いたいと言い出す。

 母さんにも色々と思うところがあると知っているので、「新緑の大樹」に護衛をお願いして付き添ってもらった。

 それならと、俺の状況をテレイルに伝えて欲しいとお願いしておく。


 帰ってきた母さんは妙にツヤツヤしていて、「新緑の大樹」の男性陣はなんとも言えない表情を浮かべていて、なんか内股になっているように見えるのだが……気のせいだろうか?


「……容赦がなかった」


「あれはもう……再起不能だ」


「新緑の大樹」のリューンさんとロロンさんに、何が? と問うのを躊躇ってしまう。

 あと、女性陣――リディさんとベルデさんが、母さんを師匠と呼んだり、何かを蹴り上げるような仕草をしているのは……心が思うままに触れないことにした。

 とりあえず、母さんが無事に帰ってきて何より。


     ―――


 さらに翌日。

 かなり回復した。

 少しばかり痛みが走る程度なので、今日一日休めば、明日には完調だと思われる。

 なので、大人しく本の続きを読もうと思うが、母さんと「新緑の大樹」は本日もスリーレル公爵と跡継ぎに会いに行く予定だ。


「……いや、俺はここで大人しく待つわ」


「お、俺も。リディとベルデだけでも大丈夫だよな?」


「新緑の大樹」のリューンさんとロロンさんが日和っている。

 昨日の様子が何か関係しているのだろうか?

 もちろん、却下。

 女性だけで行かせるのは論外である。


 今日も本を読んで過ごしたが、帰ってきた母さんとリディさんとベルデさんは、妙にホクホクとした笑みを浮かべ、リューンさんとロロンさんはこの世の終わりのような表情で、もう何も聞きたくないと両耳を押さえていた。


「……嫌だ。現実を知りたくない。怖い」


「……メイド怖い。メイド怖い。メイド怖い」


 ……もしかして、あのスリーレル公爵家のメイドさんたちの裏話を語ったのだろうか?

 精神的に死ぬヤツを……いや、まさかね。


     ―――


 新たな翌日。

 完調したので、もう自由に動き回れる。

 なので、向こうの予定もあるだろうが、テレイルに会いに行こうと思う。

 ついでに、スリーレル公爵と跡継ぎにも。


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