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賢者巡礼  作者: ナハァト
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気付いたら自分だけだったとかない?

 ……「人類最強」が倒れている。

 起き上がる気配は………………ない。

 これは倒した――ということでいいのだろうか?

 確認が必要かもしれない。

 ファイたちを見る。ファイたちもこっちを見ていた。

 ……今、俺、一気に魔力使い過ぎてしんどい(現在自然回復中)、確認、よろ、と身振り手振りで伝えてみる。

 ……こっち、どっちも、疲労、怪我、キツイ、と返ってきた。確かに。

 俺、ファイ、アスリーの視線がクフォラに向けられる。


「……は? か弱い私にやれと?」


 目を逸らした。

 多分、ファイとアスリーも。

 なんかこう、ね。雰囲気的に、さ。

 とりあえず、全員で確認することにした。

 ゆっくりと近付き……ある程度近付いても「人類最強」に反応はない。

 ただ、既に「人類最強」の攻撃範囲には入っているので、いきなり起き上がって襲われる可能性は充分にある。

 自然と喉が鳴った。

 もう少し近付き……竜杖で突いてみる。


「……」


 反応がない。ただの「人類最強」のようだ。

 まあ、それ以外だったら怖いんだが。

 しかし、起きる気配はない。とりあえず、もう少し近付いてみる。

 触れられるところまで近付いても「人類最強」は反応しなかった。

 死んでいる……という訳ではない。息はしている。気を失っているようだ。

 ともかく、「人類最強」を倒した、ということに変わりはない。

 ファイたちを見れば………………いや、待て。なんで少し離れた位置に居るんだ? ……あっ、もしかして、俺が近付いていたから、それで様子見していたのか?

 ジト目を向けると、苦笑いが返された。

 とりあえず、問題ないから近付いて来い、と手招きする。

 ファイたちが近付いてくるまでに、ふと思う。

 これは……アレか? 俺たちが「人類最強」を倒した訳だし、これからは俺たちが「人類最強」ってこと?

 ……なんか違う気がするというか、違和感。

 複数人でもいいのだろうか? なんというか個人に与えられる呼び名のような気がする。その場合、個人で勝てたか? と問われれば、無理としか答えられない。そう思うのは俺だけではなく、ファイ、アスリー、クフォラもきっと同じだと思う。

 とりあえず、今のところ「人類最強」は「人類最強」のままということで。


「……どうにか倒せたといったところか。くそっ。一人で勝てないとは……まだまだ強くなってやる」


 ファイは悔しそうな表情だ。


「今は生きて勝ったことを喜ぼう。……リミタリー帝国における、『人類最強』に対抗できるという私の評価は撤回しなければならないが」


 アスリーも似たようなモノだ。

 けれど、クフォラは違っていて、「人類最強」をジッと見ている。


「………………」


 ………………。

 ………………。

 衣服の一部が燃え尽きて露出部分が増えた「人類最強」を見ているクフォラを見る俺。そんな俺の視線に気付いたファイとアスリーもクフォラを見る。

 妙な状況のような気が……。


「……えっと、そんなまじまじと見て、どうした? まさか、『人類最強』の筋骨隆々な体に興ふ」


「ち、違います!」


 食い気味に否定された。

 いや、俺もさすがにそんなことはと思って言ったんだが、その反応だと図星のように見えてしまう。

 俺だけではなくファイとアスリーからも疑惑の眼差しが向けられる。


「……な、なんですか、その目は! 本当に違いますから! それよりも、あなたたちもしっかりと見なさい! これを!」


 クフォラが指し示したのは、「人類最強」の衣服の一部が燃え尽きたことで露わになった二の腕部分。そこに嵌められている腕輪。

 ……あれ? これどこかで……。


「いや、これはファイとクフォラにも嵌められていたヤツ……か?」


 首を傾げる。

 一応他の箇所も確認して、やはりうなじ部分に吸盤のようなモノ、両腕に腕輪、両足に足輪があった。

 ただ、パッと見は同じモノに見えるのだが、よく見れば細部が違うというか、どこか古い感じである。なんというか、かなり前から付けられていた印象だ。

 ……いや、実際そうなのかもしれない。


「『人類最強』も、俺やクフォラと同じように……確かに言っていることは一緒だったし、そう言われるとそんな感じだった気もするが……信じられないな」


 ファイがそう口にするので尋ねる。


「何が信じられないんだ?」


「いや、こういうのは俺やクフォラみたいに一度意識を失ってからでないと抵抗されるのは当然だろ? 『人類最強』がそう簡単にこれらを嵌められるとは信じられないってことだ」


「ああ、そういうことか」


「もしかすると、これより厄介なのが」


「いや、それはないと思う」


「どういうことだ? 妙に確信があるような言い方だが」


「確信というか、まあ間違っていないと思う、という程度だが、よく見れば意匠が古い感じだろ? だから、今ではなく、前に――それこそ、『人類最強』と呼ばれる以前よりも前にこれらを付けられたんじゃないか? と思ったんだ」


 そう。土のアンススさんの記憶の中で、「人類最強」が――ジブルが、突然人が変わったようになったのは、きっとそういうことなのだろう。

 土のアンススさんの記憶のことは言えないので、こういう風にしか口にできないが、俺の中ではそうだという確信があった。

 思惑はわからない。元々使い捨てるつもりだったのか、それともここまで強くなるとわかっていたからなのか……。

 まあ、なんにしても、考えるべきはこれからのこと。

 つまり――。


「……どうするのですか? 解除するのですか?」


 クフォラがそう口にした。

 ファイ、アスリー、クフォラの視線が俺に集まる。

 解除できるのが俺だけだからだろう。

 判断も俺に任せるようだ。


「……解除しよう。どのみち、このままだと敵であることに変わりはない。解除して自意識を取り戻せば、敵対しない可能性がある」


「そうだな。確かにその可能性はある」


 ファイが納得し、アスリーとクフォラも同様。

 ただ、俺のこの言葉は建前。

 もちろん、敵対しない可能性についてもそう思っているが、本音は別にある。

 ファイとクフォラは解除したあとその間の記憶はあった。

「人類最強」もそうかもしれない。

 もしそうなら……認識するだろう。

「人類最強」が――自分(ジブル)が、土のアンススさんを殺したようなモノだということを。他にも教皇の命令のまま、色々と手を出しているかもしれない。

 まず、それを自覚させる。

 これまで何をやったのか、やってきたのかを。

 そして、「人類最強」に付けられている吸盤のようなモノ、腕輪、足輪を破壊する。

 ……他にはないよな? と確認しようとした時、大教会からアブさんが飛び出してきた。

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