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賢者巡礼  作者: ナハァト
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準備は必要です

 少しの間離れていただけなのに、状況がさっぱりわからないので聞くことにする。

 神官やシスターたちは一刻も早くこの場から逃げ出しているので無理。となると、残るは「人類最強」と戦っているファイ、アスリー、クフォラの三人からだが……教皇どこ行った?

 その辺りも聞く必要がある気がする。

 その時、ファイが呼吸を整えるためにか少し下がり、クフォラの魔法による援護を受けてアスリーが前に飛び出して「人類最強」と戦い始めた。

 絶好の機会。

 即座に下りて、声をかける。


「ファイ!」


「ん? アルムか。もうゴーレムの方は終わったのか?」


「ああ、もう片付いた。それより、これはどういう状況なんだ? 『人類最強』と戦っているのは見てわかるが、どうしてクフォラも一緒に? 教皇は倒したのか?」


「話してやるから、来い!」


 ファイが「人類最強」に向けて駆けていく。

 ええ。パパっと話してくれればいいのに……仕方ない。

 竜杖から下りて、身体強化魔法を発動し、俺も「人類最強」に向けて駆ける。

 そのまま、ファイ、アスリーと共に前衛で、クフォラが「人類最強」の視界を遮るようなモノや動きを阻害するような援護の魔法を放つといった状況の中、ファイが状況を口にしていく。

 意識は「人類最強」に向けているので、話は右から左に流れていくが……まあ、なんとなく重要な部分は勝手に拾うというか、把握はできているモノだ。

 聞いていないように見えて聞いていた――そんな感じだろうか。

 ただ、戦闘中なのは事実。

 あまり意識を割きたくはないが、驚くような内容であれば別である。

 ……まあ、その時はファイとアスリーに相手を任せればいいだけ。

 実際、そうそう驚くことは――あれ? ファイが言っているのって、黒ローブの男性だよな? え? 違う人……いや、口振りから同一人物っぽいな。俺のことを言っていたようだし。なら、同一人物か。

 ――つまり、生きていた、と。あの状態でどうやって、と思わなくもないが……手応えのなさは抱いていたので、よくよく考えるとあまり不思議に思わない。

 ただ、もし次の機会があるのなら、しっかりと倒しておいた方がいい気がする。

 他にそれらしい姿の者は見かけないので、黒ローブは集団ではなく、そいつだけなのかもしれない。

 けれど、その黒ローブの男性は教皇と共にどこかに行ったという。

 それに関しては……ファイたちにはわからない。

 まず間違いなく、神杖だろう。

 もし、無のグラノさんが予測した通り、神杖の封印が解かれているのなら――渡す訳にはいかない。

 けれど、この場を放ってもいけない。

 なら、こういう時に頼れるのは――アブさんをチラリと見ると頷きが返され、アブさんは大教会の中へと向かっていく。

 あっちは任せ……任せて大丈夫だろうか? いや、アブさんの強さ云々ではなく、神杖と呼ばれているような杖に、アブさんが触れられるかどうか……まあ、触れられなくても、それならそれでどうにかするだろう。教皇を即死させるとか。黒ローブの男性を即死させるとか。……なんか不安というか不穏な感じだが……大丈夫。任せよう。

 ともかく、これでファイからの話が終わったので、あとは――いや、まずは「人類最強」をどうにかする。


「よっし! まずは『人類最強』だ!」


 そう口にした瞬間、「人類最強」の大きな拳が目の前に――咄嗟に身体強化魔法をさらに強化して、さらに竜杖を間に差し込むことで最小限のダメージで防ぐ。

 が、そのまま殴り飛ばされて、その先で地面を転がっていく。


「「アルムッ!」」


「問題ない!」


 転がりながらファイとアスリーにそう答えていると、勢いが付いていたので転がった先で人にぶつかる。


「きゃっ!」


「うわっ!」


 思わず声が漏れ……きゃ?

 そんな声出していないぞ、と思いつつ……目の前にクフォラの顔がある。ついでに言えば、俺が上でクフォラが下。俺が覆い被さる直前のような形、だろうか。


「えっと……」


「こ、こんな公衆の面前で押し倒してくるなんて……それだけ私を求めているということですね」


 いや、違う。というか、何故そうなる?

 俺の戸惑いを他所に、クフォラはさらに口を開く。


「ならば仕方ありません。受け入れてあげます。ただ、ここだとその……アレなので、人目のない場所で……その、優しく……いえ、激しく……て、駄目ぇ!」


 クフォラに力強く押されて、尻餅をつく形で後方に倒れる。


「いてっ! 何を!」


「こ、こんな時に何を考えているのですか! い、いくら私が美しく魅力的でいつでも男を惑わす小悪魔系だからといって、時と場合があります! 体の準備だって必要ですし、心の準備だって必要なのです! いつでもいい訳ではありません! 今日の下着は、その……」


「は?」


 最後の方がごにょごにょして聞こえなかったのだが。


「と、ともかく! 今そういう場合ですか! 集中しなさい!」


 はっ! とさせられる。

 そうだ。相手は「人類最強」。何か別のことを考えて、どうにかできる相手ではない。

 この数か月の鍛錬で前より強くなったことで、どこか自惚れていたのかもしれない。


「……クフォラの言う通りだ。まずは『人類最強』。他のことは考えない!」


 起き上がり、「人類最強」に向かって駆ける。

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