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賢者巡礼  作者: ナハァト
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失敗しても直ぐ動ける時だってある

 俺、ファイ、アスリーが動く前に、我先にと動く存在があった。

 大聖堂の天井付近に居るアブさんである。

 ……ここって、行ってしまえば聖域のようなモノだと思うが、不死系が居て平気なのだろうか?

 少し心配するが、アブさんに異変は見られない。

 無理をしているようにも見えないし、大丈夫そうだ。

 ……聖域って? それとも、ここはそういう場所ではないのかもしれない。もしくは、アブさんの方がものともしないのか。

 ……どっちの可能性もありそうなので考えるのをやめておく。

 そんなアブさんが、「人類最強」に向けて即死魔法を放った。

 前回の雪辱を晴らすためだろう。

 即死魔法の骸骨にもやる気が見られた。

 何故なら、二枚刃の大鎌が、三枚刃になっていたのである。

 切れ味良さそうだ。剃り残しがなさそう。

 前回と同じく「人類最強」が即死魔法の骸骨に気付いた様子はなく、その身に三枚刃の大鎌を受け――無傷。三枚刃は全部砕け散った。

「そんな馬鹿なあー!」と即死魔法の骸骨が両手を頭蓋骨に当てて叫んだ――ように見える。

 いや、それはアブさんも同じだった。

 即死魔法の骸骨は砕け散った三枚刃の大鎌を持ってアブさんのところに戻り――何やら話し合い出す。

 ……多分、雰囲気に反省会と思われる。

 失敗にめげず、直ぐ次に向けて動き出すとは……さすがとしか言えない。


「どうかしたか?」


「いや、なんでもない」


 ファイにそう答えて、意識を「人類最強」へと向ける。

「人類最強」はただ立っていた。

 何もせず……まるで命令待ちのように。

 だが、既に戦闘は始まっているのだ。

 ファイとアスリーが飛び出す。

「人類最強」に向けて、それぞれ左右から向かい、長椅子を飛び越えながら向かう。


「歯向かうのなら要らないわ。あいつらを殺しなさい」


 クフォラと魔法合戦を行っている教皇がそう口にすると、「人類最強」が口を開く。


「……すべては、教皇さまのために」


「ええ。その通りよ。あなたたちもこうして従順であれば、生き永らえることができたかもしれなかったわね。見たかったわ。あなたが無様に年老いていくのを」


 最後の一言は俺たちではなくクフォラに向けて言ったようだ。

 クフォラから感じられる殺気が一気に膨れ上がった。

 きっと、教皇は挑発するような表情だったのだろうが確認はできていない。

 こっちもそれどころではない――というのもあるが、単純に怖いからである。

 ともかく、いくら教皇が魔法を使えるからといっても、クフォラには勝てないと思うから、あっちは気にしないおこう。


「『赤熱 集約して貫き 焼き尽くす 一筋の閃光 火炎光線(フレア・レーザー)』」


 炎の光線を放つが、「人類最強」は手を前に突き出して弾き飛ばす。

 だが、それでも照射はやめず、「人類最強」に放ち続ける。

 僅かな足止めで充分。その間にファイとアスリーが距離を詰めて、そのまま攻撃を行う。

「人類最強」は炎の光線を大きく弾くと同時に双方から同時に迫る攻撃を防ぎ、かわす。

 もちろん、俺もそうだがファイとアスリーも防がれ、避けられたからといって、それで攻撃の手は緩めなかった。

 ファイとアスリーは近距離で戦い、俺は遠距離で魔法による援護を行い続ける。

 ……それでも、「人類最強」には一撃も当たらない。

 けれど、前回とは明確に違う部分がある。

 それは、「人類最強」からの反撃がない――防戦一方である、ということだ。

 単純に威力や連射速度など、俺の魔法が全体的に上昇しているというのもあるが、ファイとアスリーの攻撃も前回より鋭くなっている。


「以前までの俺だと思うなよ! 一度経験してお前の強さはわかった! その経験をさせたことを――あの時俺を殺しておかなかったことを後悔させてやるよ! 俺の勝利、お前の敗北という形でな!」


 ファイが意気揚々に口にする。

 ただ、その言葉が正しいと証明するように、ファイは「人類最強」がどう動くのかわかっているかのように見切っていた。

 多分、勘。いや、勘でも充分にすごいけれど。


「お前が『人類最強』と言われるのは今日で最後だ。私がその呼び名を引き継ごう」


 アスリーも敗北するのは「人類最強」の方であると口にする。

 しかし、「人類最強」は無反応であった。

 少しは反応を見せろよ、と言いたいが――クフォラとファイの時を考えると、もしかして――という考えが頭の中を過ぎる。

 けれど、それを確認しようにも難しい。

 何しろ、確かに「人類最強」は防戦一方だが、それでこちらが押しているという訳ではないのだ。

 今は、俺、ファイ、アスリーの三人合わせての攻撃を続けることによって、どうにか反撃を封じる状態を保っている――といったところである。それも言ってしまえば薄氷の上に立っているようなモノ。

 何かが少しでも足りなくなれば、たちまち状況は変わる。

 三人でどうにか、とか――改めて「人類最強」の強さを感じることができた。

 それでも、どうにかしなければならない。

 この状況で、そのどうにかできるのは俺だろう。

 魔法の威力は高められるし、数もまだまだ増やすことはできるのだ。

 ……ただ、やっていいのだろうか?

 正直、室内でなければ――と思わなくもない。

 いや、でもここは敵地。それもど真ん中のようなモノだ。

 それなら、多少破壊しても……問題ない。相手は「人類最強」なんだし、半壊しても許容範囲内だろう。なんの許容かはわからないが。

 それに、ここまでの流れであとにしていたが、無のグラノさんが気にかけている件もある。

 時間はかけていられない、と魔力を体に漲らせた瞬間――大聖堂の外から大きな地響き音が数度響いてきた。

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