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賢者巡礼  作者: ナハァト
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実際に体験すると駄目だった場合もある

 リミタリー帝国の内乱時にも行った、空中から本拠地に人を運んでの強襲を行う。

 向かう先は聖都の中心にある王城並に大きな教会――大教会とでも言うべき場所である。

 事前にセカンから許可は取った。

 セカンは――参加不可。さすがにリミタリー帝国軍の大将を敵の本拠地に連れていく訳にはいかないのである。たとえ、本人が乗り気であろうとも。セカンはリミタリー帝国軍全体を見て指示を出す立場なのだから。

 また、今回は前回と違って運ぶのは少人数だった。

 具体的に言えば、俺、ファイ、クフォラ、アスリーの四人だけである。

 これは、現在捕虜移送によって数を減らしたリミタリー帝国軍にそこまで余裕がない――というのもあるが、この四人でも充分だと判断されたからだ。

 というのも、リミタリー帝国の内乱時に多くの兵を運んだのは、リミタリー帝国が軍事国家ということもあって帝城内にも戦力と呼べるだけの人が残っていたからだが、アフロディモン聖教国は軍事国家ではない。

 数という意味で、戦力は今聖都の外でリミタリー帝国軍を相手にしているのでほぼ出尽くしているだろう。

 だから、この少人数でも問題はないというか、四人の誰もが数に負けない戦力持ちだからというのもなくはない。

 ただ、そういう存在は相手にも居る。

 ――「人類最強」。

 その名の通り、個人において最強の存在が居るのだ。

「人類最強」を前にして、数は邪魔でしかない。

 だから、この四人で出発したのだが……。


「ひゃっほー!」


 ファイのテンションがおかしい。


「やっぱいいもんだな! 空を飛ぶってのは!」


 まるで自分が空を飛んでいるような雰囲気だが、実際は違う。

 竜杖に結ばれた縄で吊り下げられている木箱に乗っているだけだ。

 つまり、そういう感想を抱くのは竜杖に乗っている俺であってファイではない。


「よし! アルム! この戦いが終わったら、これで俺と一緒に世界各地の強いヤツに会いに行こうぜ!」


 いいえ、行きません。

 勝手に行け、と言いたい。


「まだ見ぬ俺よりも強いヤツに会いに行く!」


 ラビンさんのダンジョンには最下層――その付近にはそれくらい強いのがゴロゴロ居そうだけどな。

 言えば行くと必ず言うので言わないが。


「ファイに同意する訳ではありませんが、移動が便利なのは間違いありませんね。大抵の地形は無視できますし、悪路も関係ありません。馬車と違って揺れもほぼないですし、何より一直線に進めるのですから、目的地まで格段に早く着けるでしょう。私も、そういう手段を用意するべきかしら?」


 クフォラよ。悩む前にファイを落ち着かせて欲しい。多分無理だけど。

 それに、確かクフォラの得意属性は火属性と土属性だったはず。それでどうやって……いや、俺の中の火のヒストさんの記憶によれば、手足から超高威力の炎を噴出させ続ければ飛べる……かもしれないようだ。

 不確かなのは、これは火のヒストさんが生前ではできなかったからである。

 さすがに、不確かな情報を伝える訳にはいかない。それに、クフォラが空を飛ぶって――いや、なんでもない。

 だから、何か心当たりがあるのなら教えなさい、と言いたげな目で俺を見ないように。


「ふむ。私は初めてだが………………」


 アスリーは黙してしまった。

 ジッと我慢しているように見えなくもないが……まさか、恐怖を抱いている訳ではないよな?

 ……いやいや、あり得ない。帝城の壁を登ってくるようなヤツだぞ。

 ……いやいや、そんなまさか。

 ………………とりあえず、早く着いた方がいいような気がしたので少し急ぐ。

 ちなみに、実際のところは四人だけではない。

 もう一人――アブさんも付いて来ている。

 ただ、今回に限っては少々不安だ。

 何しろ、ルーベリー枢機卿はアブさんを感知できる――かもしれないのだ。さすがに視覚までは無理だと思うが、それでもそういうことができる人が居る以上、他にも居るかもしれない。

 大丈夫だよな? と近くで飛んでいるアブさんに向けて確認するように視線を送る。


「………………」


 多分、伝わったと思う。

 グッ! と親指を立ててきた。

 ……大丈夫だと信じよう。

 そうこうしている間に大教会の真上に辿り着く。

 近付けば、その分よりしっかりと見えるが、大教会は本当に城のように見える。

 まあ、城よりもどこか荘厳に見えるのは、それでも教会と言われればそう見えるからだろうか。

 また、予想通りと言うべきか、アフロディモン聖教国軍の姿はあまり見かけない。ここには僅かな数しか居ないようだ。

 それに、その僅かなアフロディモン聖教国軍も、聖都の外の様子は気になるようだが、上空の俺たちに気付いた様子はなかった。できるだけ見つからないように、それなりの高さで来たかいがある。

 外から見た限り、いくつか入れそうなところはあるのだが――。


「……本当にいいんだな?」


「ああ! 真正面からだ! 向こうには『人類最強』が居る! こっちはこの人数だ! これで逃げるなんて真似はしないだろうよ!」


「ええ、それで問題ありません。すべて倒せばいいだけですから」


「………………」


 アスリーが早く下ろしてくれ、と言いたげだ。

 なので、上空から大教会の正門に向けて、強襲するように下りていく。

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