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賢者巡礼  作者: ナハァト
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組み合わせてはいけないモノもある

 布を隔てた向こう側から、カチャカチャと金属音が聞こえてくる。

 脱がされていた黒い鎧を身に付けているのだろう。

 こちらでもファイが今身に付けている。

 ……うん。やはり、色気なんてない。何も感じない。ファイが目の前で着ているからかもしれないが特に何も感じない。寧ろ、見せられている俺とアスリーの気持ちを考えて欲しい。さっさと身に付けろ、という思いしか浮かばなかった。

 少し待って、ファイが黒い鎧を身に付けるのと同時に、クフォラが女性軍医たちと共にこちらに来る。


「……無事か? 私たちのことがわかるか?」


 アスリーがそう尋ねた。

 なんというか自然だ。自然体だ。布の向こう側でクフォラが黒い鎧を身に付けていたというのに、恥ずかしがるとか動揺した素振りが一切ない。

 ……いや、普通に鎧を身に付けただけだし、それで動揺することはないか。


「ええ、わかりますよ。記憶もあります。ご迷惑をおかけしたようですね」


「それはセカンに言え。私はファイの方だった。まあ、少し苦労させられた程度でしかないが」


「――たく。いくら妙な状態だったとはいえ、アスリーに負けるなんて、俺は俺を許せないな。良し。リベンジだ。今からやろうぜ!」


「ふざけるな。今は戦争中で外は戦闘中だ。それよりも、まずは記憶があるのなら何があったのかを教えてもらおうか。ファイからは軽く聞いたが、クフォラからも聞いておきたい」


「ええ。それはもちろん」


 そして、クフォラからも話を聞くが、ファイが軽く話していた内容とそう大差はなかった。

 聖都に入ってルーベリー枢機卿にも直ぐ会うことができた――までは予定通りであったが、ルーベリー枢機卿が戦争終結に向けて、こちらに協力する旨を伝えたところで、突然大勢の兵士に取り囲まれたそうだ。

 ただ、クフォラとファイからすれば問題ない。

 少し騒がしくなるくらいでしかなかったが、そこに教皇が現れた。

 教皇……女性だってよ。

 それも、美しい女性らしい。


「まあ、美しさでは私も負けていませんが」


 クフォラは胸を張って――。


「よくわからん。まあ、周囲がそう言っているし、そうなんじゃないか?」


 ファイは首を傾げる。

 二人の反応はそんな感じだった。

 まあ、俺もアスリーも見ていないから反応のしようがない。

 ともかく、教皇が現われたのだがそれは問題ではなく、問題なのは共に現れた黒ローブの方である。

 特にファイは本能的に危険だと判断して瞬時に襲いかかろうとしたそうだが、その前に気を失ってしまったそうだ。

 何があったかは――クフォラが予測をする。


「おそらくですが、気を失う前に魔力の流れを感じました。意識を奪ったとなると睡眠でしょうか。まさか、この私が……」


 クフォラは信じられない、信じたくない――という感じだが、それが俺と対峙した黒ローブの男性であったのなら納得である。

 巧みな魔法技術だったのは間違いない。

 そして、目を覚ませばリミタリー帝国軍を相手に戦い、セカンとアスリーに気絶させられた、という訳である。

 そのあとはこっちの話。

 気絶させたクフォラとファイをここまで運び、状態確認して――吸盤、腕輪、足輪を破壊したことを告げる。


「……そういうことでしたか。人の記憶や意識を変える魔道具、といったところでしょうか。おそらく、六つすべてを使用する必要があって……砕け散ってしまったのは残念ですね。調べようがありません」


 言葉通り、残念そうな表情を浮かべるクフォラ。

 ………………クフォラと、人の意識を変える魔道具か。組み合わせてはいけない組み合わせな気がする。いや、あっても使用するとは思わないが。

 あとは、一応黒ローブの男性に関しては俺が倒したことも伝えたが――実感はもっておらず、相手がそういう恰好の集団で、他にも居る可能性はある、とも話しておく。

 まあ、それは一応終わった形であるため、特に気にしていない。

 今、俺たちが気にするべきは今後のことだ。


「私の意識を操作するなど……許せませんね。でも、もう少し可愛げのある性格だったなら……いえ、万死に値します」


「俺は俺の意思で戦う相手を選ぶ。それを歪ませるなんて許せねえな」


 クフォラとファイはやる気満々である。

 ただ、状況は悪い。

 いや、俺やアスリーではなく、クフォラとファイだけだが、僅かな時間だけとはいえアフロディモン聖教国軍としてリミタリー帝国軍と戦ったのは事実なのだ。その姿は多くの人の目に触れている。今戦場に出ると、余計な混乱を招きかねない。

 では、どうするか――。


「「「………………」」」


 クフォラ、ファイ、アスリーの視線が俺に向けられる。

 後ろを見るが、軍医しか居らず、手を振られた。振り返す。

 三人からの視線を受けて、首を傾げる。


「俺に何か?」


「戦場に出ると混乱を招くというのであれば、まだ戦場になっていない場所に行けばいいだけのこと……そう、たとえば、敵地のど真ん中。本拠地とか、ね」


「聖都に入るにはまだ時間がかかりそうだからな。先に行って片を付けておくのも悪くない。借りを返すという意味も込めてな」


「アルムが帝城で行ったことを、ここでもやってもらえないか?」


 ん? えーと……アレか? リミタリー帝国の内乱の時に、俺が反乱軍を空から帝城に直接運んだヤツか? アレをここですると?

 ……悪くないかもしれない。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] クフォラが目覚めたときの状態と、その後の説明で「意識操作の為の魔道具をアルムが破壊した」という認識は有るはず。 なのに、『乙女(?)の柔肌に触れたのだから・・・』とか言い出さないのが不…
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