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賢者巡礼  作者: ナハァト
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サイド リミタリー帝国軍 大将 セカン

 リミタリー帝国軍とアフロディモン聖教国軍の戦いが始まった。


「……間に合わなかったか」


 リミタリー帝国軍の本陣にて、セカンはそう口にする。

 それが何を意味しているのか。

 この場に居る者たちは知っていた。


「……正直なところ、戦力低下は否めないな。士気も同様だろう。そういうのを気にせず戦えるファイは、居るだけでも意味があるのだが」


 この場に居る者たちの一人――アスリーが続いてそう口にする。

 本来であれば、アスリーはそこまで言わないのだが、状況的にそれが真実であることと、何よりこの場においてリミタリー帝国軍を率いている立場にあるセカンと同格に話せるのは、アスリーしか居ない、というのもあった。

 アスリーがそのまま口を開く。


「それに、懸念事項は他にもある。いや、できた、と言うべきか」


「……先ほど始まった聖都上空での魔法合戦か?」


「そうだ」


 何が起こっているのか詳細はわからなくとも、そこに誰が居るのかをセカンは知っている。

 アスリーも、セカンから聞いているので知っていた。

 問題なのは、上空で魔法合戦が起こったこと。

 聖都の様子を窺っていたからこそ発見できたし、セカンとアスリーはそこにアルムが居ると知っているからこそ、魔法合戦が始まって直ぐに気付いた。

 ただ、魔法合戦が行われている、というのは既に多くの者が知っている。

 魔法合戦はそれなりに派手であり、それなりに長く続いているためだ。

 気付く者は、今も増えていっている。

 けれど、それは恐怖も共に、だろう。

 何が起こっているのか、不安なのだ。

 セカンはどちらかと言えば心配だろうか。

 アルムが居ると知っているし、アルムの魔法には何度も助けられたからこそ、その身を心配するのは当然であるが、そのアルムと魔法で対抗できるだけの存在が居る、という部分には不安を抱いていた。

 状況から、それが――アルムと魔法合戦を行っている者はアフロディモン聖教国側である、と推測はできる。

 どうやら、アフロディモン聖教国には「人類最強」の他にも、魔法に秀でた強力な存在が居るようだ、と。

 セカンはアルムならそれでも大丈夫だと思うと同時に、後々のことを考えて、アルムには是非ともその存在を今直ぐ倒して欲しいとも思っていた。

 それでなくとも、クフォラとファイが居ないということは、リミタリー帝国軍に少なからず影響を与えているのだから。


「アルムはそう簡単にはやられない。寧ろ、逆に相手を倒す。だから、空の方は気にするな。今は地上のアフロディモン聖教国軍に集中する! 『人類最強』は戦場に出ているか? 報告はまだか!」


 報告は直ぐに届けられる。


「聖都の二つの門のどちらからも『人類最強』が出てきたと、その姿は確認されておりません!」


「そうか。ご苦労。となると、『人類最強』は聖都の中――教皇の側に居ると考えるべきか……面倒な」


 セカンとしては「人類最強」が戦場に出て来てくれた方が良かった。

 そのための分散である。

「人類最強」と相対するところは大きな被害が出るだろう。しかし、その他はその間に聖都に攻め入ることができ、そのまま教皇を押さえることも視野に入れられるだろう。

 教皇を押さえれば、さすがの「人類最強」も大人しくなる……はず。

 個人として負けても、国としては勝てる――といったところか。


(……まあ、負けん気の強いファイやアスリー辺りは、個人でも負けていない、と言い出しそうだが。……いや、それはアルムも同じだろう)


 ついでに言えば、自分ももう少し若ければ、あるいはそっち側に立っていただろう、とセカンは思う。

 いや、未だ胸の奥に燻るモノはあるのだが――それを燃え上がらせるだけの何かは……セカンの中にはもうなかった。


「……出てこないのなら仕方ない」


 当然「人類最強」が聖都から出て来なかった場合も想定しているのだ。


「まずはこのまま聖都の包囲を縮める! 武力において、リミタリー帝国が世界一であることを示してやろうではないか!」


 セカンの指示通り、リミタリー帝国軍はアフロディモン聖教国軍を相手に、聖都の包囲を少しずつではあるが狭めていった。

 確かに、クフォラとファイが居ない今、全体的な戦力と共に士気も高まっているとは言えない。

 けれど、優勢なのはリミタリー帝国軍だった。

 戦いとなれば、リミタリー帝国軍はやはり強いのだ。

 それだけの戦力を有しているのである。

 押し込まれるアフロディモン聖教国軍。

 だが。しかし。


「きゅ、急報! き、緊急です!」


 セカンの下に緊急情報が届けられる。

 それは到底信じられないモノ。

 だからこそ、リミタリー帝国軍の大将でありながら、セカンは自らの目で確認するために最前線へと出る。

 アスリーもそれに同行。

 そして、目撃する。

 クフォラが――ファイが――アフロディモン聖教国軍側に立ち、リミタリー帝国軍を相手に戦っている姿を。


「何をやっている! クフォラ! ファイ!」


 セカンが声をかけると、クフォラとファイは戦う手をとめ、胡乱な目でセカンを見る。


「……おや? どなたですか? まあ、どなたであろうとも、私がやることは変わりません。……栄えあるアフロディモン聖教国のため……教皇さまのために、リミタリー帝国軍を葬り去っているだけですが」


「……その通りだ。教皇のため、リミタリー帝国軍の全員を刺し貫く」


 そう口にして、クフォラとファイはリミタリー帝国軍に襲いかかろうとする。

 確実に何かがあったのは間違いない。

 それに、このまま放っておくことはできない。


「クフォラは私が! ファイは任せるぞ! 可能なら生け捕りだ!」


「仕方ない。相変わらず手間をかけてくれるな、ファイは」


 だからこそ、セカンとアスリーは迷うことなく動く。

 セカンはクフォラと、アスリーはファイと戦いを始めた。

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