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賢者巡礼  作者: ナハァト
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奇抜な方が受け入れられる可能性もなくはない

「『黒失 闇に閉ざし 雨ように降り注ぎ 光を遮る 闇覆雨(ダークレイン)』」


 黒ローブが魔法を発動。

 周囲に黒い球体が数個出現し、そこから黒い光線が俺に向けて照射される。

 黒ローブが俺に向けて殺意を飛ばしていたので、何かしてくるとは思っていた。

 なので、焦ることもなく竜杖を操作して黒ローブから距離を取りつつ、次々と迫る黒い光線を避けていく。

 もちろん、反撃も忘れない。


「『白輝 闇を裂き 流星のように降り注ぐ 拡散する一筋の煌めき 光輝雨(ホーリーレイン)』」


 闇属性ならこっちは光属性だと幾重にも照射される輝く光線を放って、黒い光線を相殺していく。

 同時に、飛び回るのをやめて、本腰を入れて魔法に魔力をさらに注ぐ。

 幾重にも照射される輝く光線は黒い光線を相殺しつつ、黒ローブを包み込むように迫っていく。


「『黒失 覆い隠し 内なるモノを守り 闇が遮断する 闇盾(ダークシールド)』」


 黒ローブの前に、その身を隠すような巨大な黒い盾が出現し、幾重にも照射される輝く光線をすべて防いだ。手応えはない。貫通していない。つまり、黒ローブには届いていない。

 巨大な黒い盾が消え、無傷の黒ローブが姿を現わす。


「なるほど。では、これはどうかな? 『赤燃 天より降り注がれ 空を焼き 大地を焦がす 火雨(ファイア・レイン)』」


 今度は俺に向けて火の雨が降ってくる。

 問題ない。


「『青流 流体が集いて 天まで噴き上がり すべてを飲み込み弾く 水壁(アクア・ウォール)』」


 水の壁を作り出し、火の雨をすべて防ぐ。

 すると、黒ローブは、今度は土属性魔法で作り出した槍を十数飛ばしてくるので、風属性魔法で暴風のような壁を作り出してすべて砕く。

 魔法の応酬が続いた。

 黒ローブの放つ魔法の属性に対して、対抗できる属性の魔法を放つ。

 逆も同じで、俺が攻めに転じて放った魔法の属性に対抗する属性で、黒ローブも防いだ。

 属性を変えても結果はどちらも変わらない。

 俺は今「火」「水」「土」「風」「光」「闇」の六属性の魔法を使えるのですべて試したが、黒ローブはすべて対抗する属性で防いだ。

 つまり、黒ローブも六属性の魔法が使える……いや、俺は受け継いでいないが、ここまでくると黒ローブは無属性も使えると判断するべきだろう。

 この状況で、楽観視は良くない。


「……なるほど。なるほど。なるほど」


 魔法を放つのをやめ、黒ローブが何度も頷く。

 無のグラノさんたちと過ごした経験からか、相手の姿形が見えなくとも、どことなく様子がわかる。

 黒ローブは笑みを浮かべているような気がした。ただし、それは喜びとかそういうのではなく、獲物を見つけた肉食獣のような、そんな酷薄としたモノな感じがする。

 その証拠に、黒ローブが俺に向ける殺意はより強くなっていた。


「やっぱり、アレだね。情報というのは自分で確認しないといけないモノもあるってことだよね。大した魔法使いは居ないって聞いていたんだけど……キミのような魔法使いが居たなんて知らなかったよ。まさか、リミタリー帝国にここまでの魔法使いが居たなんてね。『人類最強』が目的も果たせず戻ってきたのは、キミも関係あるのかな?」


 黒ローブが話しかけてくる。

 その内容の中に思い当たる節はあるが、関係あるかは怪しい。

 何もできずに巻けたのだから。

 しかし、黒ローブの魔法がとまったのなら、こっちとしては絶好の機会かもしれない。

 魔力を練りつつ、口を開く。


「いや、なんの話だ? リミタリー帝国の魔法使い? ここには観光に来ただけだ」


「いやいや、この状況でそれは無理があるでしょ」


 うん。そう返されるのはわかっていた。

 さすがに観光は厳しいと俺も思う。せめて、商人ギルドにも登録しているし、行商のためにと言っておくべきだったか? それとも、冒険者として依頼を受けて……待てよ。どちらにしても、それっぽいのは事実だ。だが、それっぽいのだと、逆にこれまで使われてきた可能性が高く、逆に疑いを持たれる場合がある。それならいっそのこと、奇抜なモノの方がいいかもしれない。それこそ、聖都にある壺や樽をすべて破壊しに来たとかなら……。


「なんか妙なことを考えていない?」


「いいや、まったく。今は急に襲われたことに対して、どうしたものか考えているだけだ」


 本当に、どうしたものか。

 というか、どうして俺が襲われているのかわからない。

 確か、邪魔になりそうな魔法使いを殺すみたいなことを言っていたが、それと関係あるのだろうか? なんの邪魔になるのかさっぱりだ。

 それに――。


「あと、先ほどお前が言っていた二人について、どうすれば教えてくれるだろうか、とかか」


「ああ、それがあったね。もう終わったことだし、どうでもいいことだから、すっかり忘れていたよ。知りたい?」


「知りたいと言えば、教えてくれるのか?」


「別にいいよ。自分の目的とは関係ないし。それに、もう始まっているから。あの二人はね、リミタリー帝国を見限って、こちら側に付いたんだよ。だから、今頃戦っているんじゃないかな? リミタリー帝国を相手に」


「は?」


 何を言っている? と思っていると、黒ローブは俺の後方の先を指し示す。

 チラリと見れば、地上ではリミタリー帝国軍とアフロディモン聖教国軍の戦いが既に始まっていた。

 ……けれど、疑問はある。

 見限って、相手にしているのがリミタリー帝国? クフォラとファイが?

 そんなことはあり得ないと思うが、それでも、もし本当にそうなっているのなら……。


「でも、キミにそんなことを気にする必要はないんじゃないかな? だって、ここで自分に殺されるからさ」


 黒ローブから禍々しい魔力が溢れ出て、俺を殺そうと魔法を放ってくる。

 それを相殺して、反撃を行う。

 再び、黒ローブとの魔法合戦が始まった。

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