同じように考える時だってある
アフロディモン聖教国に急いで戻る。
無のグラノさんの予想だと、俺が戻る頃には六芒星の残りの三つは既に解除されているそうだ。ただ、それは予想であって確定ではないため、先に調べておいた方がいいということになった。解除されているかどうかは、そこに属性持ちの強力な存在が居て、尚且つ生贄としてそれなりの数の何かが死亡して居れば――そういうことらしい。
なので、まずはそっちを確認しに行って、そのあとにリミタリー帝国軍と合流――という流れだろうか。
狙われている残り三つの場所については、無のグラノさんが既に解除されている三つの一致から推測してこの辺りだろう、とラビンさんの地図に印を付けてくれた。
もちろん、俺は自分というモノを知っているし、人には向き不向きがあることもわかっている。
既に解除されている三つの場所を地図で見たところで、それがどの辺りなのか、俺にはわからない。
けれど、わかる人が居る。アブさんである。
解除されている三つの場所がどこか、無のグラノさんが付けた印がどこか、アブさんなら問題なくわかるのだ。
なので、アブさんの案内で、迷うことなく三つの印の場所に辿り着くことができる。
ありがとうございます。
思うだけでなく、言葉にもして伝えた。
問題ない。任せろ。とアブさんは親指を立てて見せてくる。
妙に様になっていて、カッコ良かった。
こういう頼れる存在に成長したいモノだ……スケルトンには今のところなる予定はないが。
でも、アブさんといい、無のグラノさんたちといい、楽しそうな姿を見ると、スケルトンであるとかどうでもよくなってくるというか、スケルトンになってもいいかな? と思わなくもない。
―――
そんなことを考えつつ、戻ってきた時と同じように数日かかったが、再びアフロディモン聖教国に戻ってきた。
もう少し早く来ることもできたのだが、それだと強行となって体調が万全ではなくなり、着いてからの動きに支障が出ると判断して、同じように、である。
……まあ、影響がない範囲で急いだので、一日くらいは早まっているが。
そうしてまず辿り着いたのは、アフロディモン聖教国内の、地図上では左下付近。
場所は直ぐわかった。
大きな町の近くで、巨大なモグラの魔物が数体倒されていたのだ。
合成炎魔獣と同じく、継ぎ目のような部分があるのが見えたので、間違いないだろう。
少なくとも、大きな町の近くで良かったと言うべきか、対応できる戦力があったようだ。
パッと見ただけなので死んでいるかどうかはわからないが、それなりの人数が倒れていた。
少なくない被害が出ていると思われる。
間に合わなかったと、どこか悔しい思いをしつつ、他にも向かうべき場所があるので次へと向かう。
―――
次に向かったのは、地図上では左上付近。
……意味がわからなかった。
森の中に、巨大なタコの魔物が居る。
何故それがわかるかと言えば、森の木よりも高く、頭部分が出ているからだ。
助かったと思うのは、周囲に町とか村がないということ。
なので、普通に生存している……いや、水がないが……うん。まあ、生存している。そういう合成だろうか?
ただ、動物や魔物は巻き込まれているようで、それなりの数が死んでいるように見えた。
人でなくてもいい――ということだろう。
「とりあえず、倒した方がいいよな?」
「聞くまでもないと思うが?」
だよな。うん。わかっていた。
でも、どこか間抜けな図なので、放っておいてもその内干からびてしまうんじゃないかと思ってしまうのだ。
……いや、あの巨大な体であれば、その分耐えそうというか、干からびる前に水がある場所まで辿り着きそうな気がする。
まあ、ここで倒してしまえば関係ないか。
火属性魔法で焼けば美味そうな気がしないでもないが、周囲は森。
延焼広がる。駄目。絶対。
なので、上空から風属性魔法による一方的な斬撃を食らわせて細切れにしておいた。いや、細切れと言いつつも、元の大きさが大きさなのでぶつ切りのようにしか見えない。
とりあえず倒しはしたが、このまま森の中に放置するのも良くない気がするので、一応回収しておく。使い道は……なさそうだな。思い付かないとも言う。
とりあえず、ここも片は付いたと判断して、次へと向かった。
―――
次に向かったのは、地図上だと上。
運が悪いことに、そこそこ大きな町があった。
しかも、現在襲われていて、既に大きな被害が出ているように見える。。
何に襲われているかと見れば、ゾンビやスケルトンといった不死系の魔物の群れだった。その上、ただの群れではなく、上位種と思われる姿も確認できる。
ちょっとした魔物大発生だ。
それを率いているモノが居る。
空中に漂い、豪華な杖を持ち、ボロボロのローブを羽織っているスケルトン――リッチ。
「フハハハハハッ! 素晴ラシイ! ナント、素晴ラシイ力ダ! 力ヲ使エト、体ガ疼イテ仕方ナイ! フハハハハハッ!」
何やら嬉しそうだ。
ただ、そのリッチが不死系の群れを次々と召喚している。
まずはリッチを倒してから、不死系の群れを消した方が良さそうだ。
「コノヨウナコトガ、他ノリッチニデキルダロウカ? イイヤ、デキナイ! ツマリ、我ハリッチヲ超エタ存在! リッチヨリモ強イ死ノ存在……ソウダ! コレカラハ『絶対的』」
アブさんが即死魔法を放ち、リッチを消し去った。
「………………」
「………………」
「………………アブさん。今、あいつ」
「な、何をしている! アルムよ! 早くあの不死系の者共を消し去らないと、無用な被害が出てしまうぞ!」
「まあ、そうだけど、今、あいつ」
「さあ、早く! 早く! アルムの光属性魔法なら直ぐだろう!」
……まあ、いいか。証拠? 証人? は消されてしまったし。
光属性魔法で不死系の群れを一気に消し去っていく。
その中で、馬車の一団がこの町に向かっているのが見えた。
多分、近くの町からの援軍だろう。
あとのことはそっちに任せて、俺とアブさんは移動を開始した。
何しろ、これで六芒星の先端の六つの場所はすべて襲撃があったことになる。
あと残っているは、中心にある聖都だけ。
無のグラノさんが予想した通りだったと思いつつ、急ぐ。




