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賢者巡礼  作者: ナハァト
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無意識だからとめようがない

 クフォラ、エル、ナナンさんを連れて、リミタリー帝国軍が攻め上がっているであろう場所に向けて飛んでいく。

 その手段は、反乱軍を帝城最上階に運んだのと同じ方法。

 人数が三人と少ないというのもあるが、魔力量も増えているので問題ない。

 どこまでも飛んでいける。

 ……そう。俺は自由の翼を手にし――。


「いや~、以前にも体験しましたが、やはり空を飛んでいけるというのは非常に便利ですね」


「……空、気持ちいい。……風、心地いい」


「本当に……この速度はなんと言いますか、風を抱き締めているような感じを抱くと言いますか……」


「……むう。それは駄目。その感覚は駄目。エルが抱き締めていいのは私だけ」


「ナナン」


「……エル」


「ここには私も居るんですが! なんですか! 二人の世界なんか作り出して! 私に見せつけているんですか! 言っておきますが、その手の私の耐性はゼロですから! 私の生命力はもうありません! 撃ちますよ! ここで魔法をぶっ放しますよ!」


 クフォラの限界が近い。


「あっ、そうですよね。失礼しました。いつ、何が起こるのかわかりませんし、警戒を怠ってはいけません。しっかりしないと……(キリッ)」


「……エル。カッコいい(ポッ)」


「そ、そう?(デレ)」


 俺も無意識で竜杖と繋げているロープを切ってしまうかもしれない。

 でも、無意識だし、どちらかと言えば手が滑ったとか、そういう類のモノだから、やっても許してくれるよな?

 まあ、クフォラは巻き込まれなので許してくれなさそうだが……いや、こいつらと共になんか死んでなるものかと生き抜きそうだ。

 ちなみに、アブさんは少し離れた場所を飛んでいるのだが、近くに居なくて良かった、と胸を撫で下ろしているのが見えた。


     ―――


 クフォラに急かされ、俺も早く解放されたい、という思いもあってか、竜杖の速度が自然と上がる。

 それでも、運悪く町や村がなく、野宿することもあった。

 ……いや、本当にツライ。

 宿屋なら部屋を分ければいいだけだが、野宿となると、交代で見張りに立つことになり、寝る前か起きてから――つまり、ほぼほぼエルとナナンさんの甘い世界を見聞きする羽目になるのだ。

 いや、わかるよ。漸くだからな。両片思い状態が長く、それで恋人関係になったものだから、その反動でそうなってしまうのもわかる。しかし、それ、数か月前の話だよな? え? いつまでそんな感じなの? いつまでもなの? 仲睦まじいな……ではない!

 そうであったとしても、時と場所を考えろ、と言いたい。それは別に悪いことではないし、寧ろいいことだと思うが、だからと言って、こう……いつ何時でも、というのはだな………………愛はとめられない? 抑えられないから愛だ? ……よし、わかった。俺には無理だ。どうしようもない。

 だから、クフォラよ。諦めないで、と言うな。ローブを掴むな。俺には無理だ。リミタリー帝国軍のところに最速で向かうから、そこで軍医に診てもらえ。

 ……もう診てもらった? 異常なし? 軍医は諦めた? ……もうどうしようもない。

 ツライ移動となったが、クフォラが指示する方向は正しかった。

 少し遠くに見える大草原に、万は超える武装した軍を見つける。

 その姿の大半には見覚えがあった。

 アフロディモン聖教国軍だ。

 ただ、それだけではなく見覚えのないのも居る。

 おそらく、他国からの援軍を来ていると聞いているので、それで間違いないと思う。

 となると、そこと対峙している先に居るはずなので、そっちに向かった。

 普通に行けば見つかって騒がしくなるのは間違いないので、少しだけ遠回り。

 アフロディモン聖教国軍が居たところから対峙した先――空からだとそうでもないが、地上からすればそれなりの距離をあけて、アフロディモン聖教国軍と同じく万は超える軍が居た。

 こっちも見覚えあり。リミタリー帝国軍である。

 う~ん。こっちの方が多い、と思う。

 念のためクフォラたちに確認を取ったが、間違いない。

 リミタリー帝国軍の方に向かい――。


「あれはなんだ!」


「鳥の魔物か! それとも、隕石か!」


「いや、あれは箱だ! 空飛ぶ箱だ! きっと頑張っている俺たちへのご褒美を運んでいるんだ!」


 何やら妙な誤解をされているような気がする。

 というか、どうしていきなりご褒美? そんなに大変なの、今? まあ、警戒されるよりはマシだけど……いや、一応警戒はされているようだ。一部だけど。

 大部分は特に――なのは、内乱の時の俺の行動を見ていた、あるいは体験した、とかだろうか。

 そして、クフォラの指示の下、リミタリー帝国軍の中に下りる。


「どうも。あなたたちへのご褒美ですよ」


 クフォラが箱から出ると同時にそう言う。

 リミタリー帝国軍はサッと目を逸らした。


「あらあら。どうしたのかしら? ご褒美が来たというのに……そんな恥ずかしがらなくてもいいのですよ。……ねえ? そうよね?」


「「「はいっ! その通りです!」」」


 リミタリー帝国軍が直立不動でそう答える。

 言わされた感が強い。

 何しろ、クフォラから発せられる圧力が強過ぎ……いや、なんでもない。

 思わず俺も言うところだった。

 そう思っていると、リミタリー帝国軍の中から、見知った顔が現れる。


「戻って来たか……まあ、ここで会うとは思わなかった者も居るがな」


 そう言って、セカンが苦笑を浮かべる。

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