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賢者巡礼  作者: ナハァト
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シフトに入れられやすくなるんだよね

 クフォラが、戦争中である敵国・アフロディモン聖教国の聖都に居た。

 そうなったきっかけは――ファイである。

 戦いとなれば喜ぶファイが、アフロディモン聖教国との戦争が始まってから、あまり乗り気になっていなかったそうだ。

 詳しく聞いても、なんか変で詰まらない、と返ってくるだけ。

 ファイもよくわかっていない。

 しかし、アスリーはそれで終わりとはしなかった。

 この戦争の裏に何かあるのでは? と疑問に思ったそうだ。

 ……そういえば、アフロディモン聖教国に攻められた時に、ファイのこういう感覚は信じられる、みたいなことを言っていたな。

 俺もそのあとファイの嗅覚というか、感覚みたいなモノの鋭敏さは体験しているので、確かに言われると違和感を抱くかもしれない。

 そうして現在起こっている戦争を見つめ直した時、確かに変だと多くの者が思ったそうだ。

 細々とした部分を挙げればキリはないが、一番は交渉について。

 アフロディモン聖教国が、この戦争の落としどころを決めるための交渉を行わないし、リミタリー帝国から使者を出しても一切受け付けなかった。

 これはさすがにおかしい、と思い始めたそうだ。

 アフロディモン聖教国が強きに出る理由はわかる。

「人類最強」だ。

 しかし、国と国の戦いなれば、わざわざ戦う必要はない。

 所詮は個人でしかなく、多方面を同時に守ることはできないのだから。

 また、援軍が来ようとも、国力、全体の戦力はリミタリー帝国の方が上。

 だからこそ、普通は交渉が行われる。

 このままでは「人類最強」が守れるところだけがアフロディモン聖教国――いや、最早国と呼べるかどうか――それすらわからない部分しか残ることになりかねないからだ。

 それを避けるための交渉が行われない。

 寧ろ、戦争を――戦いを誘発するような動きすら見えている、ということから、何か裏がありそうだ、と聖都に事情を確認しに来た、というのがクフォラの現状である。


     ―――


「丁度、手が空いているのが私だっただけよ。それに、私だけではなく、他にも共に来ているのがいるわ。決して、私が独り身だから、という訳ではないわよ」


「いや、別にそういうことは言っていないが?」


「でも、こういう時都合がつきやすくて、使われやすいわよね。独り身って……ふ、ふふ……」


「だから、別にそういうことは言っていないが?」


 どうしよう。クフォラがただならぬ気配を発し始めた。

 なんというか、邪悪な感じが……いや、なんか邪悪は邪悪なのだが、脆そうにも感じる。

 このままではいけない気がするので話題を変えよう。


「そ、それで、何かわかったのか?」


「いいえ、これからよ。明日、陛下からの紹介で、枢機卿と内密に会うことになっているわ。詳しいことはそこでわかるはずよ」


 枢機卿っていうと、確か地位的には上から二番目――教皇の次だったはず。

 かなりの大物であることには間違いない。

 そんな人物と……。


「……ん? え? アンルで……陛下の紹介?」


「そうよ。元周辺国を巡っていただけはあって、陛下は顔が広いのよ」


 なるほど。まあ、想像はできるし、何より反乱の際に元周辺国側の旗頭になったくらいなのだから、確かに顔は広そうだ。


「それに、私の護衛として付いてきてもらえるかしら?」


 納得していると、クフォラがそう提案してきた。


「え? 護衛?」


「当然でしょ? ここは本来敵地。それもど真ん中。陛下の紹介だから大丈夫だとは思うけれど、何が起こっても不思議ではないわ。たとえば、それがこの戦争の怪しい部分に関わっている者たちにバレていて、私たちを殺すだけではなく枢機卿も葬り、それをリミタリー帝国の企みとして、非難することだってあり得るのよ」


 なるほど。確かにその可能性はある。

 ただ、クフォラがそう簡単にやられるとは思わないし、共に来ているのもそう簡単にやられるような者を付けはしないだろう。

 そうなると、俺を共にさせたい理由として考えられるのは、人数が増えれば取れる手段の数が大きく変わる、ということだろうか。

 それに、俺は空での移動ができる。

 クフォラもそれを知っているからこそ、いざという時は――ということだろうか。


「わかった。付いていこう」


 了承を伝える。

 それで少なからず安堵したのか、クフォラから余裕が感じられる――と思っていたのだが、クフォラが俺をジッと見始めた。

 まるで、品定めでもするかのように。


「……それにしても」


「ん? なんだ?」


「………………」


「………………」


 クフォラが何も言わず、妙な緊張感が漂う。

 ごくり、と喉が鳴った。

 クフォラの目が細められる。


「何やら前よりも魔力が増えていないかしら? それも僅かとか少量ではなく大量に――異常なまでの増加を」


「え? いや、まあ、そうだな。その通りだが、『人類最強』とやり合うのなら、これでも足りるかどうかといったところだ……いや、そんなことあるような、ないような……」


「どうやって、この期間でそれだけの魔力量を……グギギ……」


 クフォラの俺を見る目があの頃になっている。

 き、危険! 危険! だからクフォラを取り押さえて――いや、ここには俺以外誰も居ないんだった!

 お、落ち着け……落ち着こうか……。

 妙な不安はあるが、クフォラに協力することにした。

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