表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
賢者巡礼  作者: ナハァト
437/614

とりあえずハッキリと言うことが大事だと思う

 土のアンススさんの記憶と魔力を受け継いだ翌日。

 俺は土のアンススさんと個人的に話す。


「一応確認するけれど、彼が――ジブルが『人類最強』でいいんだよな?」


「それは、私がアルムに確認したいことなんだけど?」


「ああ、それはそうか。そうだな。見間違いとかそういうのではない。今、『人類最強』と呼ばれているのはジブルだ」


「そう。やっぱりそうなのね。……すごいわね。今はそんな風に呼ばれるまで強くなっているなんて」


「……どうしたい?」


「どう、とは?」


「俺は皆の記憶と魔力を受け継ぎ、その代わりもそうだが、俺は俺の意志で皆の心残りとか、そういうことを払っている。だから、アンススさんが望むなら……たとえ『人類最強』と呼ばれるような存在が相手でも退く気はない」


「私は……戸惑いの方が強い、わね。復讐とかそういうことよりも、そっちが……どうして私のことがわからないの? とか、なんであの女と一緒に居るの? とか。甘いかしら? 甘いわよね。これも、惚れてる弱み、とかかしら?」


 骸骨で表情はわからない。

 けれど、どこか自嘲しているような、そんな笑みを浮かべている雰囲気がある。


「何かの事故で記憶を失った、とかか?」


「そんな素振りはなかったけれど、絶対ではないわね。でも、そうだとしても、やっぱり私のことがわからないなんて――そこだけは許せないわ。だから、一発殴ってきてくれる? あいつの目がバッチリと覚めるようなヤツでお願いね」


「わかった。任せろ。キツイのを食らわせてやる」


 土のアンススさんと、そう約束した。

 そうと決まれば、そのために動く。

 これで再び「人類最強」とやり合うことが決まった訳だし、そのためには何より強さが必要だ。


「もっと厳しくして欲しい。今よりもっと強くなるために」


 充分はない。

「人類最強」がどれだけ強いかわからない以上、どれだけやっても足りないかもしれないが、やっておいて損はない。

 時間はあるし……いや、あるか? これ?

 万全を期すなら、あと一人――残っているのは無のグラノさんの記憶と魔力。それを受け継げるまで強くなって、受け継げばより万全というか、俺の感覚だとそれでも勝てるかどうか、といったところだが、その時間はないかもしれない。

 というのも、「人類最強」が居るアフロディモン聖教国は、リミタリー帝国と戦争中のはずだ。

 リミタリー帝国も内戦の後処理を終えてからと色々準備があるだろうし、あれから直ぐに戦争が始まったとは思わないが、もう数か月は経っている。

 戦争は既に始まっているだろう。

 どちらも大国レベルなので直ぐに終わるとも思えないが、だからといって、こっちの準備が整うまで「人類最強」が生きているとも限らない。

 絶対は存在しないのだ。

 ………………。

 ………………。

 いや、「人類最強」なら、なんか理不尽を発揮しても……いや、絶対はない。

 リミタリー帝国にはファイやアスリーが居る。

 可能性はゼロではない。

 ……俺も、今できることをやって、アフロディモン聖教国に行った方がいい気がする。

 それに、土のアンススさんの記憶を見た俺からしても、怪しいのは女性大司教の方だ。

 土のアンススさんの記憶の中だと、女性大司教が「人類最強」をかなり欲したように見えた。

「人類最強」に対して何かやった可能性は充分にある……あるのだが……「人類最強」に通じる何かってあるのだろうか?

 ……想像ができない。

 いや、もしかすると人によってはとかで……抜け毛とか腰が痛いとか足が臭いとか……いや、それは違うか。

 ともかく、そう遠くない内にアフロディモン聖教国に行くべきだと思った。


     ―――


 さらに一か月近く経った。

 できることは充分にやったと思う。

 カーくんの厳しい訓練も乗り越えて、魔法も上達した……はずだ。

 やはり、あまり使用していない闇属性と土属性はまだ不安が残る。

 いや、弱気は駄目だ。

 できる。できる。良し。できる。

 失敗しても、次に繋がればいいのだ。

 今できる準備を終えると、アブさんも準備を終えた。


「どうだ? アルムよ?」


 そう言って、アブさんが両腕を上げて筋肉を見せつけるようなポーズを取る。いや、筋肉ないけどな。

 ……特に変わった様子はない。

 けれど、アブさんは骨密度を上げると言っていた。

 聞いたところによると、骨の内部の話。

 ……うん。見た目の話ではない。よって、どうだ? と見せられても困るのだが、こういう時に「何が? 何か変わった?」と言うのは悪手。

 しかし、どう言ったものか。

 下手なことを言えば悪手よりも悪くなる。

 曖昧ではなく、ハッキリと……。


「……頑丈になっているよな」


「そうなのだ! 骨密度が上がって、より多くの魔力を保有できるようになったのだ! これなら、より強力な即死を放つことができる!」


 意気揚々とアブさんが言う。

 あの訓練方法に意味はあったのか、と思わなくもないが、効果は出た? ということでいいのだろうか?

 とりあえず、回答を間違えなかったようで、ホッと安堵。

 そうして、「気を付けて」とか「無事で」とか身を案じるような言葉をもらいつつ、皆に見送られながら、アブさんと共に出発する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] アフロディモン聖教国? 邪教国の間違いじゃん?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ