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賢者巡礼  作者: ナハァト
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そういう風に見える時がある

 皆が喜びから落ち着いてから、リミタリー王国でのことを話す。

 ……これこれ、こういうことがあって――こうなっていった――と。

 着いた早々に捕まったことは、俺の油断と判断された。

 まったくもってその通りなので何も言えない。

 逆に、アブさんの行動は褒められたので、アブさんは嬉しそうに胸を張る。

 今回アブさんには本当に助けられたので、俺も異論はない。

 もっと褒めてあげて。

 ただ、俺に関してはその程度で捕まるとは情けない、とカーくんから「このあと厳しく鍛えてやる」という言葉をもらった。

 お手柔らかに――と一瞬思ったが、俺の方から厳しくして欲しいと、改めてお願いする。

 着いて早々に捕まったのは確かに俺の油断だったが、「人類最強」との戦いについては完全に負けだったからだ。

 だからこそ、悔しい。だから、もっと強くなりたい。

 そう思うからこそ、厳しく鍛えてもらいたいのだ。

 次、ああいうのと戦う時があるかもしれないので、その時のためにできるだけ備えておきたい。


「いい心掛けだ! 我と張り合える筋肉を、アルムに与えよう!」


 いや、それは結構です。

 そうして、帝都から出て元王都・オジナルに着き……夜のお店のことはいいか。

 魔道具研究所の町に、帝都での戦闘から、帝城に空から入り、そのまま反乱軍の勝ちが決まりそうなところでアフロディモン聖教国の横やりが入って、それまで敵だったのと協力して帝都の被害を抑えて――と一気に話した。

 ただ、その中で大きな反応を示したのは――。


「……『人類最強』……それって、まさか……」


 土のアンススさんだった。

 骸骨なので表情は見えないが、何か思い当たることがあるという様子と、声や動きからどこか狼狽えているように見える。


「アンススさんは『人類最強』を知って」


「――アルム。その『人類最強』の容姿について聞いてもいいかしら?」


「はい。えっと――黒髪で厳つく、でかくて……」


 思い出しながら伝えると、土のアンススさんの狼狽はさらに大きくなっていき――。


「そう、やっぱり……ごめん。少し休ませてもらうわ……」


 そう言って、土のアンススさんがこの場から出ていった。

 どういうこと? と思うが、皆もわからないと不思議がっている。


「……あっ! それって――『人類最強』はもしかして……」


 水のリタさんが何かを思い出したようにそう口にすると、無のグラノさんたち、ラビンさん、カーくんは何かに思い当たったようだ。

 俺、母さん、リノファは首を傾げたまま。


「一体何が?」


「……ふむ。もし思っている通りであれば、それはアンススの問題であるし、ワシらが何かを言うのは違う。それに、アルムにもいずれわかるだろう」


 ……土のアンススさんの記憶と魔力を受け継げばわかるということだろうか。

 そうなると、「人類最強」とまた戦うことになるかもしれない、と。

 ………………。

 ………………。

 厳しく、だけではなく、徹底的に、も加えて、カーくんに鍛えてもらおうかな。

 それでも「人類最強」とまともにやり合えるかどうか……正直「人類最強」の底が知れない。


     ―――


 リミタリー帝国での出来事を一通り、簡潔に話し終えたあと、皆は思い思いに過ごし始める。

 そこで俺は思い出し、まずはラビンさんに――。


「これ、お土産(バトルドール)です」


 マジックバッグの中に入れておいたバトルドールをラビンさんに渡す。


「ありがとう。……ふむふむ……ん? お? ……ああ……なるほど……これで、そうきて……」


 ラビンさんはバトルドールをじっくりと見始めて――。


「中々面白いね。でも、ボクならもっと面白くできるかなあ……」


 そう言って、「ありがとう」ともう一度言って、ラビンさんはバトルドールを受け取った。

 喜んでもらえているようなので何より。

 ピン! と来た甲斐がある。

 俺の直感は中々良い働きをするようだ。

 あとは――と、闇のアンクさんと、無のグラノさんたちの居住区にあるリビングのような部屋で、二人きりで話す。

 話す内容はもちろん、エラルとワンドについて、それと婚約者とその家族について、である。

 エラルとワンドについてはどういう会話をしたかまで詳しく、その最期まで――闇のアンクさんがその時のために作り出したオリジナルの魔法でトドメを刺したことまでを、しっかりと話す。


「………………」


 闇のアンクさんは何も言わない。

 ただ、俺の話をしっかりと――一言一句漏らさないように聞いているのは見てわかったので、そのまま続きを……婚約者とその家族のお墓がどこにあって、闇のアンクさんの代わりに思いを伝えてきた、と漏れがないようにしっかりと話す。

 聞き終えた闇のアンクさんは、隠すように片手を目元に当てて何も言わない。

 骸骨なので肉体がなく、表情を読み取るといったことはできなかった。

 けれど、俺には――泣いているように見える。


「……ありがとう。アルム」


 どうにか絞り出したような感じで、闇のアンクさんがそう口にした。

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