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賢者巡礼  作者: ナハァト
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感謝しか言えない時もある

「さて、それでは、戦いが終わったあとにアルムがセカンにお願いした情報の結果を伝えるよ」


 アンル殿下が居住まいを正したので、俺も正す。

 この情報こそ、闇のアンクの復讐の他にある、もう一つの目的。

 まあ、闇のアンクさんがエラルとワンドのことよりも――それこそ一番知りたいことでもある。


「というか、これを調べてくれた時点で、俺にとっては充分な褒賞なんだが?」


「いやいや、さすがにこれを褒賞とするのは。それに、褒賞としても足りない。それだけ、アルムの功績は大きいということさ」


「そう言われても……まあ、この話はいいか。それよりも結果を教えてくれ」


「そうだね。それにしても、どうしてこんな情報を、と思わなくもないが……詮索はしない。アルム殿にとっては大切なことのようだから。結果から言えば――足取りは追えた」


「追えたのか! 無理だと思っていたが……どうなった?」


 思わず大きな声が出てしまうが、それくらい驚いた。

 さすがに自分ではどうしようもないのでお願いしてみたが、本当に無理だと思っていたのだ。


「それで、帝都のどこに居る?」


 そう尋ねると、アンル殿下は申し訳なさそうな表情を浮かべて首を横に振る。


「すまない。帝都には居ない。どうやら、あのあと一家は祖父(エラル)暗黒騎士団長(ワンド)に爵位を剥奪され、さらに何かされるのではないかと恐れたのか、帝都から離れたようだ。離れた先にある町で身を隠しながら過ごしていた、と」


「過ごして……いた?」


「身を隠していた町で数年前に亡くなっていた、と報告が上がっている。物腰が柔らかく穏やかで、町の人たちから慕われていた、とも。そこに墓石もあるそうだ。親だけではなく子も一緒に」


「……そうか。この数日で結果がわかっただけではなく、そこまで調べてくれるとは思わなかった。ありがとう」


「それだけ、セカンはアルムに感謝している、ということさ。何しろ、『暗黒騎士団(ダークネス・ナイツ)』団長としての権限を大きく活用して調べていたからね。まあ、それがなければ、ここまで早く調べることはできなかったけれど」


「まったく。いい迷惑でした。どうせ調べるのでしたら、もっと私のこととか、私の将来の相手を探すことに力を使えばいいモノを」


 どこかのクフォラから、そんな呟きが聞こえてきた。

 個人的な情報のために使ってくれた俺が言うのもなんだが、さすがにそれを「暗黒騎士団(ダークネス・ナイツ)」に頼むのは何か違う気がする。

 ただ、それを言うと面倒になりそうな気がするので、口にはしない。

 それに、クフォラが室内に居るのも、アンル殿下の護衛として。

 部屋の外に近衛騎士たちも控えているし、迂闊な発言で敵対されても困る。

 聞こえなかったことにしよう。


「ああ、それとセカンからの言伝で、受けた恩はこれくらいでは返せないから、困った時はいつでも頼って欲しい、とも。それは私も同じだ」


「そこまで気にしなくてもいいが……まあ、わかった。何かあれば頼ることにする。それで、その町はどこに?」


 尋ねると、アンル殿下は苦笑を浮かべる。


「なんと言えばいいのか……」


 そう前置きをして、教えてもらう。

 俺がお願いしたのは――闇のアンクさんの婚約者の遺体がどう扱われ、婚約者の家族がどうなったか、である。

 これが、闇のアンクさんが一番知りたく、気にかけていたモノ。

 一応、闇のアンクさんについては話していないが、俺が行ったエラルとワンドに対する復讐において、その要因の一つである、とは思われているだろう。

 まあ、間違ってはいないので、否定はしない。

 とりあえず、どことなく安堵した。

 既に亡くなっているのは残念だが、あとは闇のアンクさんの代わりにお墓参りをして……俺がリミタリー帝国でやるべきことは一旦終わりだろうか。

 それが済めば、一度ラビンさんのダンジョンに戻ろうと思う。

 そして、そのお墓がある場所だが……アンル殿下が苦笑を浮かべた理由がよくわかる。

 なんてことはない。既に訪れたことのある場所だったのだ。

 ――元周辺国の元王都・オジナル。

 そこにあるそうだ。


     ―――


 出会えたこともあって、アンル殿下……それと一応クフォラにも、もうリミタリー帝国から出ることを告げて、別れの挨拶を済ませておく。

 セカンたちとは、残念ながら会えなかった。

 まあ、アフロディモン聖教国に対する行動で相当忙しいようなので仕方ない。

 それに、また会えそうな気もするので、そこまで気にしていない。

 闇のアンクさんに早く伝えたいので、アブさんと共に帝都を直ぐに出る。

 向かう先は元周辺国の元王都・オジナル。

 ここでセカンたちならここぞとばかりに夜のお店に行くかもしれないが、俺とアブさんは行かない。

 どちらの騎士団? にも所属していないからである。

 ただ、元王都というだけあって広く、墓地も複数あるため、目的のお墓を探すのに少してこずった。

 それこそ夜のお店の人に協力してもらおうかな? と考えるくらいには。

 そうして、どうにか見つけた闇のアンクさんの婚約者とその両親のお墓は、数年前のこととはいえ、綺麗なモノだった。

 お墓に向けて、復讐は果たされたこと、それと闇のアンクさんのことを口にする。

 ……届いていると信じて。

 闇のアンクさんの代わりにお墓を綺麗に整えたあと、元周辺国の元王都・オジナルを出て――リミタリー帝国も出て――ラビンさんのダンジョンへと戻る。

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