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賢者巡礼  作者: ナハァト
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応援したくなる人も居る

 ――数日が経った。

 長いこと戦ってきたような気もするが、終わったというか、一区切りがついたと思う。

 まあ、そう思うのは俺だけだろうが。

 何しろ、リミタリー帝国の内乱だけではなく、その途中で起こったアフロディモン聖教国からの侵攻もあったのだ。

 結果、一時的とはいえ奇襲を受けて帝都は占領された。

 といっても、それで多少は荒れたと思われるが、少なくとも目に見えてそこまで、という訳ではないのは、占領された帝都に残った俺、ファイ、アスリー、クフォラが頑張ったから、だと思う。

 本当に頑張った。

 それに、リミタリー帝国の受けた被害も大きいが、アフロディモン聖教国も無傷という訳ではない。

「人類最強」をどうにかするというのは難しい、というか実質どうにかできる手段はないが、それ以外――アフロディモン聖教国軍の方には、少なくとも痛手を与えた。

 隊長、団長クラスを倒せたし、逃走しているアフロディモン聖教国軍を、リミタリー帝国軍が今も追っている。

 リミタリー帝国軍は国境までアフロディモン聖教国軍を追い、そのまま国境警備に当たるそうだ。

 という訳で、これから始まるのはリミタリー帝国とアフロディモン聖教国の戦争である。

 そのために、まずはアフロディモン聖教国と接している国境の守りを強くするようだ。

 あとは、時間稼ぎでもある。

 リミタリー帝国の内乱は終わった。終わったが、それで何もかもが終わり、という訳ではない。

 旧体制と元周辺国との摩擦もあるし、あの時捕らえた現皇帝(ラトール)や皇太子、白衣の男性とか諸々の対応など、これから細々としたごたつきとか色々と大変なことは間違いないが……その辺りはもう俺には関係ないというか、手を放れたといったところか。

 リミタリー帝国のことは、リミタリー帝国で片を付けないといけない。

 俺は所詮内乱時における協力者でしかないのだから。

 その辺りについてこれから頑張ることになるのは、この度新皇帝として即位するアンル殿下である。

 ……いや、もうアンル陛下、とした方がいいだろうか。


「まだ早いです」


 早いらしい。


「それに、この度の一連において、私たち側の立役者と言える活躍をしたアルムに、そう言われるのはこそばゆいと言いますか……もちろん、公の場において必要な態度というのはありますが、それ以外はできればこれまで通り、いつも通りでお願いします。私だけではなくネラルにもお願いします。その方がネラルも喜ぶと思いますので」


 そういうことになった。

 ただ、立役者と言われてもピンと来ないというか、俺は俺の目的のために協力しただけである。

 まあ、言われて悪い気はしないが。

 ちなみに、直ぐ返事があったのは、ここが帝城の一室で、対面に座ったアンル陛……ではなく、アンル殿下から先ほどまでの話を今直接聞いているからである。

 それで、ここに来たのは協力した褒賞についてだが……それはリミタリー帝国が落ち着いてから、としておいた。

 未だ帝城内もバタバタとしていると来てわかったし、忙しいアンル殿下に余計な負担をかけたくない――という思いがない訳ではないが、闇のアンクさんの復讐を果たすという最大の目的が達成した今、特に欲しい物がある訳ではないからである。

 金銭は困っていないし、装備類も充実しているから、本当にないので……こういう時困るのは事実。

 それに、お土産(バトルドール)も貰っているし。


「自分の口から言いづらいのであれば、私から言いましょう――ずばり! あなたの欲しいモノは、わた」


「大丈夫。本当に何も必要ない」


 いつの間にかクフォラが紛れていた。

 いや、「暗黒騎士団(ダークネス・ナイツ)」であるし、リミタリー帝国屈指の魔法使いである。

 アンル殿下の護衛として居てもおかしくないのだが、別の人は……いや、今は誰もが忙しいので仕方ない。

 何しろ、セカンたちは今も暇ではないのだ。

 ファイ、エル、ナナンさんは「暗黒騎士団(ダークネス・ナイツ)」のままとなった。それはアスリーとクフォラも。

 幸いと言うか、ワンドはエラルに直接仕えているようなモノであったが、「暗黒騎士団(ダークネス・ナイツ)」自体は国仕えの騎士団であるため、皇帝が変わろうとも関係ない――というのもあるが、要はこれからアフロディモン聖教国との戦争が始まるので、向こうに「人類最強」が居るように、リミタリー帝国も強い戦力が必要なのである。

 なので、ファイ、エル、ナナンさんは、その準備で忙しい。

 そして、今やセカンは「暗黒騎士団(ダークネス・ナイツ)」に復帰し、そのまま団長となった。

 トゥルマも似たようなモノで、近衛騎士に復帰――そのまま近衛騎士長である。

 まあ、内乱はこっちが勝った側だし、アンル殿下に信頼されているかどうかで言えば、間違いないのだから。

 そのため、今は誰もが忙しい。

 だから、アンル殿下から色々と聞くことになるとか――変なことになったのである。


「まあ、今のところ、私の一番時間が空きやすいというか、私の採決が必要なモノの精査段階だから届いていないだけで……これから忙しくなると思うよ」


 アンル殿下が窓から外を見て、どこか遠くを見始める。

 なんというか……頑張れ、とだけ伝えておいた。

 さすがに、それの協力はできない。

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