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賢者巡礼  作者: ナハァト
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寝起きは頭が働かない

 内乱の隙を突かれ、リミタリー帝国の帝都がアフロディモン聖教国に攻め入れられて、一時的に占領されてしまった。

 アフロディモン聖教国は、俺が持つ地図によると北にある国で、リミタリー帝国の隣国に当たる国。国交もあるし、国としての仲は正直そこまで悪い訳ではない。表向きは。

 というのも、上の方――リミタリー帝国で言えば皇帝、アフロディモン聖教国で言えば教皇が、互いに気に入らないらしく、仲が悪いそうだ。しかも、歴代で。今代はどちらも特にそれが強いらしい。

 どちらも相手が隙を見せたら食らいつくつもりでいたようで、その隙(内乱)を見せたため、リミタリー帝国が突如攻められた、というのが現状だろう。

 まあ、要するに、ここまで迅速な行動だったのは、いつでも攻められるように準備していた、ということであって、その結果として戦争が始まるのである。

 だからといって、普通は一気に帝都――相手側の首都を占領するなんて普通はできないと思うが、それを可能にしたのが「人類最強」の存在だ。

 なんというか、強固な砦だろうが、堅牢な都市だろうが、なんでもないようにただ実直に破壊して進むことができる、でたらめな存在だ。

 だからこそ、侵攻が発覚する前に、アフロディモン聖教国軍がここまでくることができた、といったところか。

 その辺りのことを、ファイ、それとアスリーから聞いた。

 とりあえず、なんにしてもリミタリー帝国とアフロディモン聖教国の戦争の始まりである。

 正直なところ、エラルとワンドをやった今、もう一つやるべきことをやれば、リミタリー帝国から出るつもりでいた。

 それが、まさか戦争が始まるなんて……なんというか巻き込まれた気分が強い。

 ただ、少なくとも、現状においては、これでさよなら、とは言わない。

 まずは帝都の状況を変えてからだ。

 でないと、もう一つの方もできないし。

 戦争に参加するかどうかは、またその時考えよう。

 そうして、現在帝都に居るアフロディモン聖教国軍についてどうしていくかと話し合おうとした時、クフォラが目を覚ます。

 周囲の様子を確認して……。


「………………この状況……まさか、逆ハーレム! ここで、これから一人一人と間違い――いえ、私にとっての大正解、大勝利が起こりまくるのですね! 慌てないで、私! 自分を信じて、私! 下手をすれば私を巡って取り合いが起こって……起こ………………それはそれで悪くない展開! でも、彼らが私だけを選んでも、私はこの状況で誰か一人だけを選ぶなんてできない! どうすれば……そうだ! 七日の内、六日間はそれぞれ二日を個人でお会いして、残る一日はみんなでお会いして……とすればいいのでは! でも、そうするとここから人が増えたら……」


 クフォラには、もう少し休憩が必要かもしれない。

 いや、もう少しと言わず、長く休憩してくれても一向に構わない。

 ファイに視線を向ける。

 俺にどうにかできると思うのか? と返された。

 なので、アスリーを見る。

 ファイも同じくアスリーを見た。

 何しろ、クフォラをここまで運んだのはアスリーなのだ。

 ついでに、お願いしますと頭を下げる。


「………………はあ」


 根負けしたような息を吐いたあと、アスリーがクフォラの下へ。


「あら? アスリー。まずはあなたから、ということですか?」


「何を言っているのかわからないが、現状の説明をしよう」


「ええ、お願いできますか。やはり、まずはきちんと愛の言葉を聞いておきたいので」


「……気を強く持つことを願う」


 そう断りを入れてから、アスリーはクフォラに説明を始める。

 席、外した方がいい気が……というか外していいだろうか?


     ―――


「………………」


 クフォラが両手で顔を覆い、少しも動かなくなった。

 いや、正確にはぷるぷると小刻みに震えている。

 耳が真っ赤なのは……いや、触れないでおこう。


「寝起き……そう。気が付いたばかりで頭が回っていなかった……それだけなのです……」


 クフォラの呟きに、俺たちはうんうんと頷いておく。

 まあ、クフォラからは見えていないが。

 ただ、俺たちから声をかけるのは憚れるというか、余計に追い込む可能性が高いので、落ち着くまで待つことにする。

 クフォラが先ほどまでの自分を封印、なかったことにして落ち着きを取り戻してから、今後のことを軽く話し合い、このままアフロディモン聖教国軍に対する行動を取ることになった。

 その際に各個に分かれてもいいが、そうなるともしもの時に困るというか、危機的状況になった時の対処が限られてしまうため、二人一組で動く。


「じゃ。そういうことで」


「共に健闘を祈ろう」


 ファイとアスリーが二人で行こうとする。


「いやいや、待て待て。これだと、二人一組なのに前衛と後衛一人ずつではなく、前衛二人、後衛二人で分かれることになるだろうが」


「「ははは」」


 苦笑いで誤魔化そうとするな。


「アルムは前衛も充分できるだろ」


 ファイがそう言ってくるが、誤魔化されません。

 できなくはないが、俺は魔法使いである。

 こうするのが普通、当然だと前衛と後衛で組むことになったが、ファイとアスリーはどちらも俺を指名してきた。


「そこは私を取り合ってでは……はっ! まさか、そういうことなのですか! そういう関係! だから、私になびかないということで……」


 クフォラが驚きを露わにするが、どういうことなのか明らかに……しなくていい。

 そのままクフォラの中で眠っていてくれ。

 組分けは、当然と言えば当然か、俺とファイ、クフォラとアスリーとなる。

 これはこれで不安だが……まあ、無難か。

 そして、充分に休息を取ってから行動に移る。

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